フェアリーデバイセズ株式会社
藤野真人
POSTED | 2016.04.28 Thu |
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TAGS | 従業員数:11〜30人 業種:IT・情報通信業 創立:15年以上 決裁者の年齢:40代 商材:その他 |
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「生きる悦び」を、デバイスに落とし込め。
キカイを超えた機械の生命Topics
フェアリーデバイセズ株式会社 社長 藤野 真人氏のONLY STORY
フェアリーデバイセズ株式会社
~代表取締役 藤野 真人(ふじの まさと)様~
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東京大学大学院医学系研究科医科学専攻中退。
複数のベンチャー企業での研究開発職を経て,2008年より現職。
2009年未踏事業採択。
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幼い頃からのテクノロジーへの愛着
「父が転勤族だったことがあり、2年に1回転校を経験していました。
そのため友達関係が続かず、2年に1回人間関係がリセットされるような印象を持っていました。」
そんな小学生の頃から『消えずに継続できるモノを持ちたい』と考えるようになり、幼き日の藤野社長は、モノを作る技術を学びはじめた。
「朝起きることが苦手でしたので、セットした時間になると鞭で叩き起こしてくれる目覚まし時計を作りました。
当時コンピュータはあまり発達していなかったので、タイマーIC555(発振回路)を使って設計したんですよ。
ただ、その時計は“便利”というより、ただ“痛いなあ…”って感じるだけの代物だったんですけどね。(笑)
そして中学生の頃から、プログラムを勉強し始めました。
高校生の頃は飛行機が作りたくて、羽の空力シュミレーションをプログラミングしたりなど、3年間飛行機を作っていました。」
その経緯から、航空宇宙工学科のある大学へ進学したいと思い東京大学へ進学した。
「専門学科に進めるのは3年生からでした。
それまでの期間、プログラミングのアルバイトをして仕事としての楽しさを見いだしました。
机の前に座っているだけで何でもできちゃうコンピュータって、楽だなー!
という思いだけで、やっぱり情報科学科へ行こうと考えていました。」
そんな時、彼女が癌で亡くなられた。
『どんな病気だったのか知りたい』という思いがあったが、それまで生物学に関してなにも勉強していなかった為、とりあえず中学生物の教科書を読み始めたという。
「あるとき喫茶店で読んでた新聞に彼女の治療に関する記事がありました。
その瞬間、『知りたいと思ってたことが理解できた。』
それがすごく嬉しくてその場で号泣してしまいました。
知りたいことを理解できることが、こんなに嬉しいことだと初めて知りましたね。
それまでは、何となく勉強して何となく成績がよかったから東大へ進学したところがありました。
そうじゃなくて、知りたいことが知れる喜びを痛感し深い感動を覚えました。」
そうして、生物学科へ進むことを決意。
周囲の学生が以前から生物学に特化している中、自分だけ知識が浅いところからのスタートだったが、それでも楽しかったという。
そしてそのまま大学院医学系研究科へ進んだ。
『情報学と生物学の両方の深い知識を持っている』という特殊な人材として、学内でも知名度があり、東大にて特効薬を作る特許立ち上げの研究に誘われ参加した経験もある。
その後、病院研修で出会った女の子の手術中、たくさんの医療器具が並んでいる中、
大切にしていたくまのぬいぐるみが近くに置いてあるその光景に衝撃を受けたという。
「無理矢理生かす薬ではなくて、人生をどうやって生きて行くのか。
人を励ます存在を機械で作ることはできないか?
機械が人に寄り添う方向性もあり得るのではないか?漠然とした問題意識が生まれました。」
その衝動からタブレット型プラネタリウムを開発したことが企業のきっかけになったという。
その後も人間の弾いたバイオリンを記憶し自動演奏するデバイスを開発するなど、機械でありながらも機械的ではなく、限りなく人に近いモノを作っていた。
現在もピアノを演奏するとそのグレードに合わせてバイオリンが自動演奏してくれるデバイスを試作するなど、探求は継続している。
“人間と共に生きるデバイス”を。
現在、フェアリーデバイセズ株式会社で一番力を入れていることを伺った。
「音声に焦点をあてたmimiというデバイスの開発です。
もともと音声開発のプログラミングはしていたので、人に寄り添うユーザーインターフェースとして一番取り組みやすいかなと思いました。
今でもsiriなどはありますが、文字で打つほうが楽だったりと、まだ日常として浸透していないところがあります。その部分をもっと人間に近づけて、毎日使うようなキラーコンテンツにしたいです。」
mimi=人間の耳という意味を持たせて名付けたという。
「世の中にある音声認識は、人間が耳で聞いて文字にする、という仕組みをコンピュータにさています。しかし、拍手は雑音としてしか認識されません。笑い声、泣き声もコンピュータは理解できません。ですが人間の耳は声を文字にするだけではありません。いまの機械は、人間の感情を無視しています。」
こう話すように、mimiは人間の耳が分かることをコンピュータも分かるようになれば、性別や年齢などを入力せずとも認識することができ、もっと人間に寄り添ったデバイスができるのではないかと考えている。
例えばロボットに感情認識をさせるとする。咳をすると「大丈夫?」と心配してくれる。
「ガチャーン」と物音がしたら危険を察知し知らせてくれる。
ショーロボットが拍手を認識したら、ロボット自体も感情が認識できる。
「小さな進歩ですが、自分たちの耳が文字しか認識できなかったらどうでしょう。コミュニケーションはとれるけど、相手が誰か分からない。感情が分からない。どれだけ不便か考えてみてください。」
生涯、満足できないからこそ探求する。
これに気づいたのは、キャラクター対話シュミレーションプログラミングをしていた際、笑い声を認識できないことにフラストレーションを感じたことがきっかけだという。
mimiは、人間と同等の音声情報を理解することができるロボット用聴覚システムサービスとして提供・展開していきたいとのこと。
「mimiという技術は難しく見えるかもしれませんが、僕たちがやりたいことは非常にシンプルです。
人間と機械が音声でコミュニケーションをとる、という部分をもっと自然かつ優しいものにしていきたいという思いがあります。それを実現する為に、様々な技術を使っています。
まだ固めなければならないところはありますが、どこに出しても恥ずかしくないものを作っていきたいですね。
技術というものはいつまでも進化し続けるものであり、一生満足はできないだろうと感じています。
それでも『まずここまでやった、よしここまできた』というマイルストーンを感じられるよう、モノとして、カタチとして生み出し続けていきたいです。」