マヴィ株式会社
田村安
POSTED | 2016.06.16 Thu |
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TAGS | 従業員数:11〜30人 業種:その他 創立:15年以上 決裁者の年齢:その他 商材:BtoB |
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感性にしか作れない、唯一のワインを
ライフスタイルとしてのオーガニックをTopics
マヴィ株式会社 社長 田村 安氏のONLY STORY
根からの開拓者気質。
マヴィ株式会社は、日本初のオーガニックワイン専門店です。
マヴィのオーガニックワインは、全て無農薬、無化学肥料、無除草剤で3年以上栽培し、遺伝子組み換えを使っていないぶどうから造られ、すべて公的に認められた第3者機関の認証を取得しています。EUにはその詳細を定めた認証制度があります。
弊社はEUのオーガニックワイン農家と直接やり取りをし、日本へ輸入しています。
初めてオーガニックワインを飲んだのはドイツ。ただ正直なところ、その時の味は決して良くありませんでした。驚いたのは、フランスでワインを飲んだ時のこと。
酔い心地や飲み心地といい、まるでロマネ・コンテのような味わいだったのです。私はそれに驚き、ワインのラベルを確認したところ、ここにも「オーガニックワイン」との表示がありました。
どちらも同じオーガニックワインですが、中でもレベルの高いものは、想像をはるかに超えて美味しいということを知りました。これが、オーガニックワインを扱うことになったきっかけです。
それ以前は、大手食品企業に勤め、フランスに醤油を浸透させるマーケティング戦略を行っていました。
学生のころから、ヨーロッパでのビジネスを志してスペインに1年留学したほどだったので、フランス駐在の仕事に喜びを覚えました。まずミシュランで名の知れたシェフに醤油の味を認めてもらい、実際に料理に使ってもらうという戦略を用い、結果は大成功でした。
私はゼロのところから道を切り開くのがとても得意なのです。
逆に、既に人が作った道を継ぐことができない性格。フランスから日本に帰ると、当時国内最大規模だった、父の創設した料理教室を継ぐように言われました。そこでは父と衝突し喧嘩別れをしてしまいます。
こうした背景のため起業以外の選択肢が無く、マヴィ株式会社を創設しました。会社の名前を付けるときは、かなり悩みました。名前を付けるのは得意じゃないんですね。
ただ、どうしても貫き通したい思いはひとつ。
「自分の人生を生きたい」。
身の回りでも、政治や会社の中でも、極少数の考えが「我々の考え」として表現されることがありますよね。私はそれが好きでないのです。
「僕は自分自身に責任を持とう。」
そこで、フランス語で「私の人生」という意味の「マヴィ」と名付けました。
オーガニックワインを扱うことにした決め手は、前職である食品企業でのマーケット調査でした。ヨーロッパでは、オーガニックワインの市場が伸びていたのです。確かにオーガニックワインはニッチな分野ですが、マーケット戦略として、最初からメジャーな分野へ走ってはいけません。競合企業が非常に多くなる上、成長も難しくなるからです。
ニッチなものに手を出す人は少ないですが、反面ニッチなものは必ず主流になりますし、いつでも誰かが必要としてくれます。
例えば、過去にワインを1、2本売るのも大変だった時、一気に5000本を買ってくださる方が現れたことがありましたし、取引の9割方をしていた飲食店がつぶれたときも、ワインを買い上げてくださる方がいました。
なぜ、こんなにも助け船が現れ、マヴィは続いていくのか。
それは、世の人々がオーガニックワインという存在を求めているからではないかと思うのです。
ぶどうの栽培に化学肥料を使わない、オーガニックワイン。
普通のワインと何が違うのでしょうか。
ひとつは、オーガニックワインはすっと身体になじみ、悪酔いしづらい点です。弊社のワインを買われる方は、1晩でボトルを1本開けてしまうことも多いです。そのくらい身体に負担が少ないのです。
もう一つは、「持続可能」というライフスタイルを体現していること。弊社のオーガニックワインは、一言でいうと“エシカル”です。味が良く、持続可能な生産方法をとっているからです。私たちの周りを取り囲む食料は化学肥料を用いて作られたものがほとんどですが、そうした生産方法は終わりを告げようとしています。
1950年の人口は20億、対して今の人口は70億です。
爆発的に人間が増えたため、市場と消費者も増えました。そして私たちは豊かになっていったのです。大勢の人間に食料を大量生産して売るために使われたのが、化学肥料です。
化学肥料は、同じ畑で使い続けると、土を疲弊させ発がん性物質を生み出してしまいます。また、化学肥料による生産では、一流のものは生まれません。すべてそこそこの味です。
ほとんどの人は、真においしいものを食べることはできないのです。
そんな世界の中でも、自分の感性で素晴らしいものを作っている人たちが、ほんの一握りいます。
それが、自然に即した方法でぶどうを栽培し、最上のワインを作ろうと努力し続けるワイン農家の方々です。
率直な言い方をするならば、オーガニックワインやマヴィの考え方を分かってくれる人は一定数いて、応援もしてくれます。逆に、分からない人は興味もない。それが“マヴィ”の在り方です。
私たちは土を始め自然を消費し尽くし、まるで砂のような基礎の上に生きています。
そんな中でも、人の感性によってのみ作れるものが残る世の中の方が素敵ではないでしょうか。
マヴィはオーガニックワインを通して、その思いを伝えています。
「美味しい」も「幸せ」も、味わうのは“I”である。
日本にオーガニックを広めることは、マヴィのライフワークとして取り組んできました。
これからは、マヴィのオーガニックワインをもっと強いブランドにしたいと思っています。
取引先はかなり厳選し、日本酒の取り揃えに強く、幻の日本酒を蔵元から直接買い入れるほどのお店に置いてもらっています。
マヴィでワインを購入すると、安くても1本2000~3000円、高いものは1万ほどします。
しかし、本当に味を気に入った人は、1本何百万だとしても購入します。その傾向を踏まえ、こうしたマーケティングを行っています。
また、マヴィならではの「“我々(We)”ではなく“私(I)”」という観念を、これからも貫いていきたいです。
マヴィではワインと食育の講座もやっています。その講座では、ワインがどんな土地で育ったのか、その土地にどんな歴史があるのかを伝えます。ワインの味についてレクチャーすることはありませんし、ホームページでもワインの味を解説することはありません。
なぜなら、味は自分自身が感じることしかできませんし、それを他人に押し付けることはできないからです。
ワインの味は、食事と一緒に合わせ、十分に楽しむことができるかどうか。
食事の際には、自分の感じたことを押し付けるのではなく、食卓を共にしているパートナーと語り合ってみてください。
ワインの作り手が、人間らしい感性――すなわち“I”で醸造するなら、味わう人も自分の感性“I”で判断をします。
“We”である過程は一つもありません。
オーガニックワインや食育を通じて、この“I”という概念を磨き上げていきたいですね。