福永紙工株式会社
山田 明良
POSTED | 2016.06.29 Wed |
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TAGS | 従業員数:31〜50人 業種:製造業 創立:15年以上 決裁者の年齢:その他 商材:BtoB |
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製造工場だから作れる驚きがある。
「かみの工作所」と連携。紙を印刷・加工する可能性を追求。Topics
福永紙工株式会社 社長 山田 明良氏のONLY STORY
福永紙工株式会社 代表取締役 山田 明良 様
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1962年愛知県生まれ
アパレル商社を経て、1993年福永紙工入社。
2008年 同社代表取締役に就任
2006年 かみの工作所プロジェクトを立ち上げ
多くのデザイナーと協働で紙の可能性を追求、開発、製造、販売を手がける。
受賞歴
2011年 第九回 勇気ある経営大賞 特別賞受賞(東京商工会議所 主催)
2012年 かみの工作所「空気の器」
「reddot design award best of the best 2012」(Germany)受賞
「Design for Asia award 銀賞」(香港)受賞
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デザイナーの発想力。工場の技術力。
ファッションやデザインが好きで、アパレルの会社で営業をしていました。当時はバブルでしたから、ファッション・アパレル業界も景気が良かったですね。従業員5人の会社が、すぐに100人規模の企業へと急成長してしまうほどでしたから。
ところが、バブル崩壊で会社が経営不振。結婚を機に妻の実家である福永紙工に転職しました。
福永紙工は、1963年に立川市に創業した印刷工場で、分業化することの多い印刷業界においては珍しく、印刷から加工まで一貫して製造できるという強みを持っていました。福永紙工で働き始めてからは、2代目という使命もあって、現場業務から営業まであらゆることを経験し、猛勉強しました。そのうちに、既存の印刷とは違う挑戦をしたいという思いが強くなっていったんです。
特殊印刷や厚紙印刷、抜き加工や折り加工という工場の技術と、デザインやファッション業界で得た知識や経験を組み合わせて新事業ができないかなと。今ある技術と設備の中でできることは何かと考えて始めたのが、紙を加工・印刷してできる道具の可能性を追求するプロジェクト「かみの工作所」でした。
デザイナーさんたちと恊働して、オリジナル紙製品を企画販売することにしたのです。まずはうちの得意分野を見て頂こうと、工場見学を開催しました。グラフィックデザイナーやパッケージデザイナーだけでなく、プロダクトデザイナーやインテリアデザイナー、建築家までさまざまなジャンルのデザイナーが集まってくれ皆さん、紙を立体化することの魅力を感じてくれました。
そして、5名のデザイナーと共に小さな展示会「かみの道具展」を開催したんです。テスト的に作った紙の道具は予想以上に好評で、非常に手応えを感じましたね。それからは毎年新商品を開発しては展示会を開催。その都度新たな依頼が増え、お客様の幅も広がって行きました。
今年で展示会も6回目。最初は会社のPRと業績向上を目指して始めた取り組みでしたが、デザイナーさんの自由な発想と福永紙工の技術力と販売力で、紙の可能性がどんどん広がっているのを感じます。シュリンクする紙、印刷業界では、異色なアプローチです。
オンリーワンの価値を愛してもらうこと。
私たちが企画・販売している紙製品は、デザイン性に特化した物が多いです。デザイナー発信のものがほとんどなので、発想もデザイン性も他社とは一線を画します。
たとえば代表作の「空気の器」は、空気を包み込むようにかたちを自由に変えられます。広げ方によって様々な形ができますから、小物を入れるトレイ、花瓶の装飾、ワインのギフト包装など使い方も自由です。オブジェとして飾られる方もいます。こうした発想は、普通はなかなかできないですし、他社の技術では実現も難しいでしょう。
また、建築家の寺田尚樹氏との恊働プロジェクト「テラダモケイ」では、主に「1/100建築模型用添景セット」シリーズを販売しています。建築家の方が仕事で使われるのはもちろん、一般の方がお部屋で並べるだけでも、ミニジオラマのような空間が広がり楽しいですよ。
デザイン性に特化していますので、お客様も非常にニッチです。でも、それでいいんです。わかる人だけにわかってもらえればいい。この事業を10年やっていますが、「絶対にほしい!」という方が一人でもいれば、共感してくれる方は必ず増えていきますから。
印刷屋さんは、安い・早いで選ばれることが多いですが、それでは未来がありません。福永紙工のことを「大好き」になってくれ、共感してくださる方と仕事をすることで、競争から抜け出し、オンリーワンの価値観を生み出せたと思っています。
自由な発想を大切に。
うちの武器は、柔軟な発想です。だからビジョンはあえて決めないことにしています。数字目標に囚われて、柔軟な発想を失いたくないんです。
また、かつて勤務先が、事業拡大の果てに倒れたのも目の当たりにしましたから、規模拡大を追い求めるつもりもありません。ただ、市場の役に立つことを大切にしたい。大量生産、大量販売、大量消費ではない、生活の潤いに特化したいのです。
例えば、デザインの良いパッケージでも、使われた後に捨てられず、何かに使ってもらえるような商品を作る。
やりたい事業をきちんと実現できる組織の規模を維持しながら、今の世の中にない物をひとつでも多く送り出せたら面白いですよね。
社員が面白い仕事に挑戦できて、生活も少しずつ向上していく。そんな印刷会社でありたいです。