沢木恵太

私は、どちらかと言うと物事を逆算して考えるタイプなんです。

例えば、学生時代のテストなら、乗り切るためにどこを押さえて勉強すべきか、そのためにどれだけの時間がかかるかをまず考え、勉強を始めるべきタイミングを逆算して、どのくらいの力をかけるか考える。

もちろん、全てにおいて全力ではあるのですが、ムダな労力は極力省きたい。

こうした考え方は今も変わりません。

起業に向けても、自分が実現すべきビジョンやミッションに対して選択すべきこと、目的などを常に考えてきたように思います。

社会に貢献するためには、いくつかパターンがあると思うのですが、私の場合は、ビジネスを通じて新たな仕組みを作り、多くの方に広く影響を与えていくことに魅力を感じていました。

大学時代から、ゆくゆく自分が起業することを視野に入れて、学校生活と並行して簿記の専門学校にも通い、会計や経理の勉強をしましたし、新たな仕組みづくりに役立つ経験を積める会社、自分にプラスになる会社という視点で、就職先を選んできました。

30歳での起業を目標に、コンサルティング企業、ソーシャルゲーム企業、教育ベンチャーと、一見多様な会社選びをしてきましたが、それぞれで積んできたキャリアがあってこそ、「生活インフラ」という目指すべき領域を見極めることにつながりました。

仕事に夢中になるあまり食生活がおろそかになり、健康を害したこともありましたが、その経験も、株式会社おかんを設立する一つのきっかけになったんです。

目標に向けて一貫して取り組み、結果的に27歳で起業ができましたから、最短ルートでやってこられたと言う思いがありますね。

働いていると、見識、知識、金銭など、多くのことを得られる反面、何かを諦め犠牲にせざるを得ないことも出てきます。

一生懸命働くほど健康を害してしまったり、家事や育児との両立ができなかったり。

こういった「望ましくない当たり前」は、どんな会社に入っても起こることで、国や企業、女性など、誰もが「なんとかすべき」と考えている社会課題です。

そこに私たちが、新たなサービスや選択肢を提供することで、「働く人のライフスタイルを豊かにする」ことができると考えています。

現在展開している「オフィスおかん」では、都内の法人オフィスに配置した冷蔵庫に、１食100円の惣菜やご飯などを常備して、好きなタイミングで取り出して召し上がっていただく、簡易的な設置型社食サービスを展開しています。

同様のビジネスモデルに富山の置き薬やグリコさんの「オフィスグリコ」がありますが、大きく違うのは、１食を個人に買っていただくのではなく、企業の福利厚生、従業員の満足度向上を支援するためのソリューションとして、企業様からお金を頂戴する点です。

これまで、健康維持に欠かせない「食」を、オフィスできちんと提供することは、一部の大企業にしか実現できなかったことでした。

それを私たちが担うことで、企業の健康増進や満足度の向上のサポートができます。

また、オフィスおかんの惣菜を退社間際に買って、自宅の夕食に使われる方もおり、働くお母さんたちの負担軽減にも一役買っているんです。

全国8000万人のオフィスワーカー一人一人を変えていくことは至難の技でも、全国400万社の企業の行動や考え方を変えていき、社員に対するアプローチが変われば、結果的に皆さんが「良い」と思ってくれることにつながっていくと思います。

おかげさまで、「オフィスおかん」は、マスコミにも取り上げていただき、累積400社に導入していただいております。

今後も、オフィスおかんのみならず、様々な展開に取り組むことで、多くの企業様の福利厚生メニューを増やすお手伝いができたらと思っています。

「オフィスおかん」というサービスは、弊社の軸となるサービスではありますが、ミッションを達成するための一つの入り口にすぎません。

今後、健康・家事育児に加えて、介護という社会課題も出てきますから、オフィスおかんで培ったノウハウやアセットを、ヘルスケアや介護サービスといった他の領域にスライドしていきたいと考えています。

具体的にヘルスケア系については、既に実証実験を行ったり、新サービスを開発したりと活動をスタートしています。

今後必ず伸びると言われているこれらの領域を通じて、働いている方やご家族がメリットを享受できるようなサービスを付加していく予定です。

家族に対して優しいおせっかいを焼いてくれる“おかん”のように、オフィスでの生活に対するおせっかいをあれこれ焼かせて頂くことで、全てのオフィスワーカーに笑顔になっていただければ嬉しいですね。