株式会社アマテラス
藤岡清高
POSTED | 2017.06.16 Fri |
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TAGS | 従業員数:11〜30人 業種:研修・コンサル 創立:11〜14年 決裁者の年齢:50代 商材:BtoB |
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人材の流動化でベンチャー企業が育つ土壌へ!
ダイレクトリクルーティングを当たり前にするTopics
株式会社アマテラス 社長 藤岡 清高氏のONLY STORY
子供の頃からの起業家への憧れがベンチャー企業支援のきっかけ
私は学生時代、サッカーに明け暮れ授業に真面目に出席するような学生ではありませんでしたが、ベンチャー起業家をリスペクトしており、経営者という仕事に憧れていました。
当時は図書館に通うことが好きで、たくさんの経営者やリーダーの本を読み漁りましたね。
特に私が好きなのがキューバの英雄として現在でもリスペクトされているチェ・ゲバラです。
彼は革命家だったわけですが、現在の日本に置き換えると「起業家」というか、
現状を打破して社会を変えていくという点が僕には魅力的に映ったんです。
漠然と起業家やベンチャー企業に関わる仕事がしたいと思っている中で、就職活動をしました。都市銀行(現在のメガバンク)では若手でも社長と仕事ができる機会があるということだったので住友銀行を選び入社しました。しかし、経験も知識もない私が社長に対して価値ある話ができるわけがなく、経営知識を付けたいと思い銀行を辞め慶應ビジネススクールでMBAを取得しました。MBAでの授業はとても刺激的で、ユニクロの社長を始め最前線で活躍していて、オーラが出ているような経営者が講師として話してくれました。そうしてベンチャー・スタートアップへの想いが一層強くなり、MBA修了後はベンチャーインキュベーションを行うドリームインキュベータに入社しました。ドリームインキュベータでは日々ベンチャー経営者と喧々諤々の議論をしてジェットコースターのような日々でしたが、自分の提案が形になり、良くも悪くも結果として目に見えて手応え満点の世界でした。「リアル」という言葉がぴったりで、まさにしたい仕事に出会えたと思いました。
そんな良い経験が出来たのですが、リーマンショックがきっかけでベンチャー企業支援をすることが出来なくなり…約7年働いてきた職場で行き場を失ったのです。
ならば自分が起業家やベンチャー企業を応援する会社を作ろう、
そう思ったのが起業のきっかけでした。
日本でベンチャーを育てるにはまず人材紹介エージェントという職業を無くすこと。
経営には人・モノ(情報)・カネという要素がありますが、日本のベンチャー経営において、最も課題になっているのは「人(の採用)」だと感じています。VCが増えてカネの問題は解決しつつありますし、グーグルなどITサービスの発展でベンチャーでも大企業と変わらない情報を得る事ができつつあります。ですのでベンチャーを成長させていくには、「人」という経営資源をしっかり供給する仕組みを創ることです。
ですがベンチャー経営の現場では採用が進まず思うような成長ができないことを私はたくさん見てきました。
ベンチャーが人を採用できない一番の理由は日本特有の人材紹介エージェントの仕組みにあると私は感じています。人材紹介エージェントという企業と転職希望者とを繋ぐ斡旋業者がいて、本来はこのエージェントがいることで双方の情報非対称性を解消し、スムーズな採用に繋げるはずなのですが、実際にはこの存在がベンチャー採用のボトルネックになっています。
その理由は大きく3つあります。
1つ目は『人材紹介エージェントの報酬システム』です。
私はこれが最大の理由になると考えています。企業に人材を紹介し、入社したら年収の35%程度の報酬をいただくのが日本の人材紹介エージェントの一般的な報酬体系です。大企業や外資系に比べて高めの年収を提示するのが難しいベンチャー企業はこのビジネスゲームでは不利になります。
エージェントからすると高い報酬を取りたいので、”高く”売れそうな優秀な人材には高い年収を提示できる資金力のある会社を紹介したくなります。
私がMBA取得後に大手人材会社に登録し、ベンチャー案件を紹介してほしいと言っても、”藤岡さんには大企業や外資が向いている”と言ってベンチャーを紹介したがらないエージェントばかりだったのはこのためでした。
2つ目はベンチャーの事業内容の複雑さ。
ベンチャーですので未知の事業や複雑なビジネスであることが多いのですが、人材紹介エージェントはなぜその企業が良いのかを転職希望者に説明しなければなりません。起業経験があったりビジネスリテラシーの高い人材エージェントであれば良いのですがそのような人は少ないのが現実です。むしろ転職希望者のほうがビジネスリテラシーや経験がある人が多く、ベンチャー案件を紹介することは大企業や外資企業を紹介するよりも難易度が高いといえるでしょう。
3つ目はベンチャーを紹介するためには社長をグリップしなければならない。
ベンチャーの事業内容やビジネスモデルはコロコロと変わるものです。計画通りに成長を続けるベンチャーを私は見たことがなく、競合や環境要因に応じてビジネスモデルを柔軟に変化させながらサバイバルをしていくのはベンチャーの宿命です。ですので、ベンチャーを理解するには目先の事業を見ても不十分で、経営者である社長の考えやビジョン、リーダーシップ、経営力を見る事が必須だと思っています。
つまり転職希望者にベンチャーを紹介することとは、エージェント自身が社長を見極め、成長ポテンシャルがあると信じた社長をグリップしたうえで紹介することが必須だと考えています。そして、転職希望者と社長との共感度、相性などが擦りあえば良い化学反応が起きますが、そうでなければ、ミスマッチが起こります。
しかし、一筋縄ではいかないベンチャー社長と付き合うのはなかなか大変なものです。
まとめると、人材紹介エージェントからすると、、
ベンチャーと付き合うと、、
・事業内容を理解するのが難しく、社長とやりとりするので大変な割りに報酬が低い。
これに対して大企業やメガベンチャーと付き合うと、、
・事業内容はわかりやすく、相手が人事部なのでコミュニケーションがスムーズで、採用人数も多く、報酬が高いので割りが良い。
となります。したがって人材紹介エージェントという職業の方々は、大企業や中堅企業、メガベンチャーに人材を紹介したくなるわけです。
日本からエクセレントベンチャーを生むにはどうすればよいか? という問いに対するヒントがここにあります。その解決策がダイレクトリクルーティングです。
つまり、ベンチャー転職希望者とベンチャー企業をダイレクトにつなぐ仕組みを構築することで、人材紹介エージェントという職業をなくすことです。
そして、企業からいただく採用フィーを一定額にすることで、資金力の多寡よりも会社(社長)の魅力が採用力に影響するようにすることが重要と考えます(アマテラスでは1人採用につき100万円という定額制)。
実際にシリコンバレーに足を運んで、なぜここではスタートアップに優秀な人材が流れ込んでいるのかを調べたのですが、Linkedin などのダイレクトリルク―ティングの仕組みが発達していて人材紹介エージェントがほとんど存在していないことでした。
シリコンバレーで働く人達は自己責任でダイレクトリクルーティングサイトを通じて有望なベンチャーを探し、CEOに連絡を取り参画していく。これはとてもフェアな仕組みだと思います。
私はこのような世界を作っていきたいのです。
また、日本では誰でも知っているような企業に応募するのに人材紹介エージェントを使っている人が多くいる。これはとても無駄なコストだと思います。ファーストリテイリングやDeNA、楽天に応募するなら、会社の採用ページがしっかりあるので直接応募すればいい。このような会社を紹介すると称してマージンを取っているエージェントには価値がないですよね。
このような問題意識を持ち私はベンチャー企業向けのダイレクトリクルーティングサイト、アマテラス(https://amater.as/)を運営しています。
おかげ様で、ベンチャー企業で働きたいという登録者が毎月増えており、現在は
毎月100人~150人に対してベンチャー企業を紹介しています。
当社の特徴は、成長性、社会的意義という観点からベンチャー企業(ベンチャー社長)を厳選している点にあります。毎日たくさんの企業から人材を紹介して欲しいという依頼を受けますが、申し訳ないのですがそのうちの80%程度はお断りしている状態なんです。
ベンチャー、スタートアップがちょっとしたブームになっているようですが、弊社ではベンチャー企業の定義を決めています。
アマテラスが考えるベンチャー企業の定義は以下です。
1. 未解決の社会的課題解決や革新的開発にチャレンジしている
– 持続可能性社会を実現させる ⇒ 再生エネルギーベンチャー
– 増加する高齢者対策 ⇒ シニア見守りサービス
– 自動運転社会の実現 ⇒ ロボティクスベンチャー など
2. ルールブレイカーであること
– 既存のルールを壊し、新しいルールを創出して新産業を創出している
例:Uber、Airbnbなど
3. 上記1,2をビジネスで実行している(≒ビジネスモデルを成立させている)
– 継続して利益を出す仕組みがある
この3つを満たしていると判断した会社とのみ御付き合いしています。
志の低い会社を紹介したくないからです。
ゲームアプリを作って数年後に大企業に売却して・・・という程度の起業が増えていますが、そのような経営者に私は志は感じません。
ベンチャー企業は経営自体もコンセプトも難しいビジネスですから、それに見合った人材を責任もって紹介したいですし、ベンチャービジネスによって社会が変わっていくことを希望しているからです。
そして、アマテラスの新しい取り組みですが、
キャリアを積んだママにベンチャー企業で働く機会を提供するサービスです。
せっかくキャリアを積んできた女性が結婚・出産を機に第一線から離れ、また現場に戻って能力を最大限に生かしたいと思った時、ベンチャー企業という機会はとても有益と考えました。ベンチャーでは常に人材不足のため、優秀な人材には機会や裁量を与えます。これはまさにハイキャリアママの要望を満たすものでしょう。彼女達は雇用機会が欲しいのではなく、子育て、時短という制限の中でも能力を最大限に活かしたいのです。大企業では企業内託児所や休暇が取りやすい仕組みなど労働環境の提供が進んでいますが、仕事の権限や裁量、責任あるポジションという本質的な機会を提供できているでしょうか? しがらみが多い大企業では難しいですがベンチャーなら出来ます。
女性の社会進出、女性のキャリアアップという日本の大きな課題を解決できるためにアマテラスはママ人材のスタートアップ参画も進めていきます。
企業の雇用形態と人材の働き方を変えることで社会を変えたい。
日本で広く成長するにはまだまだ時間がかかりそうなベンチャー企業ですが、
当社がベンチャー企業へ人材を紹介する際は、企業の社長と私自身が直接話をさせていただいて、人材を紹介するかどうかを判断しています。
同時に、紹介する人材に対しても、その企業が何をしようとしているのかを理解した上で入社するかどうかを決めてくださいとお願いしています。
そのスタンスは今後も変えるつもりはありませんね。
当社のような企業が現在の採用市場を変え、志ある人に(ベンチャーで働くという)機会を提供し、日本からグーグル・フェイスブックのような会社を100社創出することを貢献出来たらいいなと思っています。
☆取材・記事作成・構成=佐藤志保、北本優葉