堤香苗

近年、『女性の社会進出』という言葉が叫ばれるようになって久しい。結婚や出産をしても女性が働き続けることができる環境は着々と整いつつある。そのような時代背景の中で、常に最前線で女性の新しい働き方を提案してきたのが、株式会社キャリア・マムだ。そのサービスは全国で、実に10万人以上のお母さん達が利用している。それでは、そもそもなぜそのような事業を始めようと思ったのか、そのきっかけについて堤香苗社長に直接お伺いした。

「元々私自身が結婚、出産をして他のお母さん方と付き合っていく中で、彼女たちが仕事を辞めてから社会との接点をなくし、自分が何のために生きているのかわからなくなっているという現状を目の当たりにしました。自分自身の存在意義を見失ったことから目を背けるために、自分と同じ価値基準を持つ人だけの小さなコミュニティーに閉じこもっているように感じられたのです。そこで、そんなお母さんたちがもう一度活躍できる仕事の場を創りたいと思ったことがきっかけとなり、キャリア・マムを始めたんです」

とはいえ、今から20年ほど前の大企業では、『結婚した女性は退職して家庭に入る』というのが慣例だった。そのような状況の中で、もう一度お母さんたちに活躍してもらうためには、どうしても既存の働き方そのものを変える必要があったのである。

「働き方を変えるからといって、『男性が働いて、女性は家事をする』という価値観を真逆にして、『女性が働いて、男性が家事をする』という考えではうまくいきません。

なぜなら、働きたいと思う一方で家事や育児も両立してやっていきたいと思うお母さんもたくさんいるからです。そこで、『空いている時間だけ働きたい！特定の分野で能力を使いたい！』そういう方でも働ける仕組みをつくろうと思ったんです」

そこで、空いている時間を使って能力を使いたい人が働ける仕組みとして堤社長が考え出したのが、『チーム受託型のアウトソーシング事業』である。

これは、データ入力やアンケート集計といった企業の事務的な作業を、会員間で分担して行うというものだ。この事業が同社の収益の実に7割を占めている。

アウトソーシングというだけあって、勤務形態としてもやはり在宅の人が圧倒的に多く、在宅者の数は、出勤する人の実に3倍以上にものぼるという。

ここで、在宅というと実際の仕事ぶりが目に見えない点を懸念される方もいるかもしれない。ただそこに関しては、堤社長も会員のお母さんも育児や介護などの様々な困難を経験したもの同士なので、互いに信頼感が生まれて、自然とみんないい仕事をしてくれるそうだ。

そんなキャリア・マムでは、今後の展開として仕事に就くスキルを持っていない方向けの事業を展開していくという。

「仕事に就くスキルを持っていないがために使われてこなかった人材をもっと活用できる仕組みを創っていきたいです。具体的には、仕事に必要なスキルの研修や教育事業に力を入れたり、またそもそもスキルがなくても働ける場所を提供したりしていきたいですね。

ビジネススキルを持たない人でも、地域の貧困層の乳幼児やひとり暮らしの高齢者など、誰かの手助けが必要な人たちを支援していくことならできるはずです。行政や他の企業とも連携して、自分の大切なものを大事にしながら社会貢献できる働き方を目指していきます」

最後に、これから社会に出る若者へ向けてメッセージを頂いた。

「女性は男性に比べて現金な人が多く、近視的になりがちのように思います。よいか悪いか、損か得かという2択だけで物事を判断するのはやはり勿体ないですよ。たとえ自分の思い通りにならなくても、他人と比べることなく与えられた状況の中で自分ができることを120％の力を出してやりきってください。そうしていくうちに、自分の人生の意味を実感できる瞬間が必ず訪れます」

編集後記今回は、キャリア・マム様が運営するおしごとカフェでインタビューをさせて頂きました。
カフェ全体がとても穏やかな雰囲気に包まれていて、心地よくお話を聞かせて頂きました。
インタビュー中に、赤ちゃんを連れたお母さん達が楽しそうにお話しされていたのが印象的でした。
堤社長は、私たちの質問の意図を考えて受け答えをしてくださり、とても優しく聡明な方だなと感じました。本当に素敵な会社でした。

http://corp.c-mam.co.jp/