最も重要なステークホルダーに経営者ができることとは

【対談企画】大手企業経営者が語る企業の「教育」

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株式会社富士通ゼネラルの斎藤様と株式会社やる気スイッチグループ高橋様の特別対談

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売上の拡⼤や顧客満⾜度の向上、時流に合った事業計画……。経営者が取り組むべき課題はさまざまで、日々複数の経営課題に頭を抱えている⽅が少なくない。

今回は経営課題の中でも「⼈材教育」について空調機ビジネス、情報通信システム・電子デバイスビジネスを展開する株式会社富⼠通ゼネラルの斎藤様とやる気スイッチグループの⾼橋様にお話を伺った。

対談者紹介


株式会社富士通ゼネラル(以下:富士通ゼネラル)
代表取締役社長 斎藤悦郎(以下:斎藤氏)

1954年生まれ。明治大学政経学部を卒業後、1977年に富士通ゼネラルに入社。2015年に同社代表取締役社長 経営執行役社長に就任。


株式会社やる気スイッチグループ(以下:やる気スイッチ) 
代表取締役社長 高橋直司 (以下:高橋氏)

社内教育は企業理念からはじまる


––まず、社内教育についてお話を伺います。高橋様と斎藤様が社内教育を行う上で、大事にしていることは何ですか。

高橋氏(やる気スイッチ):いくつかありますが1つは企業理念ですね。当社は「全世界一人ひとりの"宝石"を見つけること、そしてそれを輝かせることを全力でサポートし、人々が"やる気スイッチ"を入れ、"自分力"を発揮しながら幸せに生きる社会の創造に貢献する。」という企業理念を掲げています。

宝石は能力・才能のこと、自分力は主体的に自分の個性を活かす力を指しており、顧客となる子供たちだけでなく社員も「自分で自分の人生をデザインする力」が身につくような教育を目指しています。


斎藤⽒(富⼠通ゼネラル):どこの企業でも、社員教育で最初にすることと言えば、企業理念を教えることだと思います。企業理念を正しく受け止め、実践していくことは、会社で働く上で一番大切なことです。とはいえ、当社の企業理念は2018年に再設定したばかりですので、入社時の研修だけでなく、今も各職場での集会などいろいろな活動を通じて浸透に努めています。

当社の企業理念は、「-共に未来を⽣きるー」という1つのミッションと「①⾃発的に取り組みます、②⼈を思い活かします、③誠実さを⼤切にします」の3つのフィロソフィから構成されています。


⾔うなれば、どのような⾏動をとるかを決める際に羅針盤となるのが企業理念です。

本当に強い会社というのは、最前線にいる社員それぞれが自律的に考え、行動できることです。そのためには、会社としてのミッションが共有されることと、現場にいる一人ひとりのレベルアップを支援するための教育・研修が必要だと考えています。

―研修・教育はどういったものでしょうか。

斎藤氏:階層別研修では⼊社時、3年次、管理職前、管理職後など、時期やポジションに合わせて必要な知識や考え方を学んでいます。

それらに加えて、昨年「空調技術アカデミー」という技術者向けの教育部門を新設しました。ここでは、若手には基礎的な技術、中堅層以上にはマネジメントスキルや⼈間性に磨きをかけるための「⼈間塾」など、階層別に様々なカリキュラムを用意してレベルアップを図っています。

私は社長就任当初から「人を思い活かす経営」を事業基盤に置きました。最も重要なステークホルダーは「社員と社員の家族」だと言い続けています。

高橋氏:社員に関する考え⽅は私たちも同じです。企業には投資家や株主、顧客などのステークホルダーがいますが、やはり「共に事業に取り組んでいる社員が⼤事だよね」とよく役員会議で話しています。

先ほどの⾃分⼒にも通じますが、⽣徒だけでなく社員⼀⼈ひとりが⾃分の⼈⽣を切り拓く⼒を得られるように教育はもちろん、環境づくりも⾏っています。

斎藤氏:企業理念の再設定、サステナビリティ経営や健康経営の推進、働き方改革、海外での新規ビジネス推進、イノベーションの創出活動など、当社の経営を語るときにメインとなる具体的な内容は、この数年で社員が作成し、実行してくれたものです。このような社内文化を変える取組みは、教育だけでなくいろいろな施策を総合的に取り混ぜ、ベクトルを合わせて目標に向かって取り組んでいます。

今のようなコロナ禍においても、社員がいきいきと働き続けられることは、当社の成長には欠かせないものですので、教育も含めて積極的に人への投資を進めていきます。社員達には成功体験を積んでもらい、才能を伸ばし、⾃分⼒を育める会社へと、共に成⻑させていきたいですね。やる気スイッチさんが⼦供たちや社員さんに向けて⾏っていることと全く⼀緒です。社員⼀⼈ひとりの声を聞きながら、より良いものに変えていきたいと思います。

社内と社外を見つめて、企業理念を再考


―富士通ゼネラル様では2018年に企業理念を再設定されたと伺いましたが、どのような背景があったのでしょうか。

斎藤氏:2000年前後に経営が悪化し、会社全体に閉塞感が漂うようになってしまったんです。業績は2010年あたりから好転していきましたが、以前のような明るい空気には戻りませんでしたし、挑戦心も失われつつありました。どうにか社員や職場の雰囲気を良くしたいと思って企業理念を再設定しました。

高橋氏:会社を変えたいと思ったり、設定から時間が経ったり、新型コロナウイルスのような予期せぬ事態に直⾯したりすると、会社の⽬指す未来も変わりますから、おのずと企業理念も見直す必要が出てきますよね。

斎藤氏:そうですね。さらに、挑戦を肯定するような⾵⼟も作りたいという意図で、社員全員が参加可能なアイデアソン活動や新価値創出の専任組織「Being Innovative Group」の設置、最近は「The Future of Innovation Challenge」という取り組みを通じて、全社員から50件ほどの新たな価値となるアイデアを出してもらいました。

こうした風土を促進するため、当社の歴史から自発と挑戦の心を学ぶ「自発館」の開設、業務時間の一部を自分の研究に使用できる10%ルール、技術者間のワイガヤ会議、上司と部下の1 on 1(ワンオンワン)ミーティングなど、様々な施策を導入しています。社員にも、少しずつですが、会社が変わってきたなぁと実感してもらえているようです。また、CSR活動の一環として、小学生向けにモノづくり教育にも取り組んでいます。

高橋氏:社内だけでなく社外向けの教育ですか。

斎藤氏:はい、各学年の学習テーマに則って、出前授業や会社見学会などを実施しています。例えば4年⽣であれば、環境問題をテーマにした授業の一環として、企業がどのように環境問題に向き合っているかという話から、リサイクルしやすくするための前工程と実際の様⼦を見せたりしています。

安心して働ける環境を目指して


―素敵な取り組みをされていらっしゃるんですね。今後はどのような取り組みをしていきたいか展望はございますか。

斎藤氏:当社だけでなく、世の中の流れとして⼥性社員が⾮常に増えています。優秀な⽅が多いので、彼⼥たちが安⼼して仕事ができる保育・教育環境を作れないかと思っています。まだまだ何かできないかなと思っている段階です、例えば当社の⾷堂を開放した学童保育とか。

高橋氏:お⼦さんが幼稚園・保育園に通っていた頃には⼣⽅まで預かってもらえましたが、⼩学校に入学すると急にお⼦さんの帰宅時間が早まります。この変化にどうしたらいいのか、と悩まれる親御さんはとても多いんです。「⼩1の壁」とも呼ばれますが、この悩みを解消できるような環境を作りたいということですよね。

教育事業者としては、今後学童の課題解決を進めていきたいと考えています。と言うのも、学校で起きる⼈間関係の問題の約8割が学童内で起きているというデータがあるんですね。70-80⼈のお⼦さんを、学童について勉強してきた先⽣が複数⼈で見られれば、そのような問題も起きにくいんですが、実際はバイトのお兄さんやお姉さんが見ていることが多いんです。

課題は浮き彫りになっているのですが、学校は⼈⼿不⾜から学童に対して舵を切ることができず、私たちのような⺠間の教育事業者が学童保育を行うようになりました。ただ保育に⼒を入れているところは多いですが、まだまだ学童には改善点が多いので、当社も安⼼して⼦供を預けられる学童に取り組んでいきたいです。

斎藤氏:学童に力を入れてもらえると、働く親にとっては非常にありがたいと思います。当社としても安全性を確保した上で、Kids Duoに通う子供たちなどに向けた見学会を提案できる機会もあると思います。それがきっかけでモノづくりやサイエンスに興味を持ってくれる子供を増やすことができればいいですね。

―経営者・事業者としての使命を持って事業に取り組んでいらっしゃるお二人のお話を伺うことができて勉強になりました。さらなるご活躍を楽しみにしています。


執筆=笠原

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会社名: 株式会社富士通ゼネラル

会社名: 株式会社やる気スイッチグループ

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