アンター株式会社
中山 俊
POSTED | 2018.06.12 Tue |
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TAGS | 従業員数:5人以下 業種:医療・介護・健康 創立:7〜8年 決裁者の年齢:30代 商材:BtoC |
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医師を繋いで患者さんの命を繋ぐ「AntaaQA」
日本から世界の医療の質を支える会社を目指してTopics
アンター株式会社 社長 中山 俊氏のONLY STORY
医療現場において、医師同士で情報を共有する重要性
アンター株式会社は、「つながる力で 医療を支える」をビジョンに「ONE FOR ALL, ALL FOR ONE」の医療を目指して2016年に設立されました。まずは、その設立の経緯からお話ししますね。
私は鹿児島の奄美大島の出身で、地元に貢献できるような仕事に就きたいと考えて医療の道に進みました。
アンター株式会社を起業したのは2016年で、私は医者になって5年目に入っていました。それまでは起業を考えたことはなくて、「いい医者になりたい。患者から信頼される医者になりたい。」という想いで自分の仕事に向き合っていました。
しかし、医者になって4年目のときに、医者1人の能力の限界を感じるようになったんです。例えば当直で1人のとき、自分だけで何でもできるわけではないし、調べても分からないこともあるけれど、今知っておかないと患者の治療はできないという状況にも立ち合いました。そこで、医師同士で情報を共有することが必要なんじゃないかと考え、プロトタイプを作ろうと思ったんです。
最初はLINEを使って「困ったことがあったら相談に乗ってください」という実験的なサービスをやっていて、半年間くらいずっと24時間 5分以内に回答していました。そのうち仲間が増えてきて、「みんなでコミュニケーションできるサービスがあったらいいよね」という話になり、アプリケーションを作る流れで会社を立ち上げました。
そのときに、IBMが行っていたベンチャー支援のプログラムに企画を出しました。内容としては、我々のアプリでデータを集めていくと、将来的にIBMでもAIが自動応答できるシステムができるんじゃないかというものです。その企画が採用され、IBMと相談しながらアプリを制作しました。
2000年以降ものすごい勢いで医療が進歩していて、論文も年間30万ほど出るような状況になっている今、医者が1人ですべての医学を理解することは不可能です。患者を秒で治療しなければならない状況なのに、必要な情報が得られない、医学の進歩に医療現場がなかなか追い付けないというところが、大きな課題になっています。
その情報のハブのようなプラットフォームがあったらいいんじゃないかということで、弊社のサービスは始まりました。
医師が実名で参加し、相談ができるアプリを開発
アンター株式会社の事業は、医者と医者をつないで患者さんの命をつなぐ「AntaaQA」いうアプリケーションの運営です。
具体的には医師が実名で参加し、患者についての相談や医療の相談をインターネット上でやりとりする、医師と医師のオンライン相談サービスです。
利用のケースとしては、例えば夜当直のとき、内科の先生が腹痛を訴える若い女性を検査して「妊娠している」となった場合に、どう対応したらいいのかをすぐに専門の診療科に尋ねることができます。
また、肩が痛いと言って整形外科の外来にきた高齢の方が心筋梗塞だったという場合、迅速な判断と処置が必要になりますが、専門ではないのですぐ対応ができないというとき、どうしたらいいのか「AntaaQA」で相談することができます。
アプリケーションなのでプッシュ通知が誰かに届く上、ハッシュタグで何科の相談なのか、緊急を要するのかどうかを一目で判断でき、それぞれの専門家が自分ならばどのように対応するかを答えてくれます。それによって専門外であっても、より良い対応と治療が可能になり、患者の命を救う確率が上がるというのが、何よりのメリットです。
実際にあった例だと、内科の先生が当直で夜23時に「子宮筋腫で入院中の人がいて、お腹を痛がっててこういう状態なんですけど。」と「AntaaQA」に投稿したところ、産婦人科の先生から次々に対応方法が寄せられ、放射線科の先生が画像を見て原因を解明し、治療が変わって助かったということがありました。
現在は医師が1000人登録していて、毎月100人ほどのペースで登録者数が増えているという状況です。
アプリケーションをメインに据えて、他にも医師向けのイベントサービスを行っています。勉強会や、地域の若手のドクターを集めて交流会を開いたり、自治体と組んで地域の中で学べる仕組みを作っていますね。規模が小さいものだと大体週に一度、大きなものだと2、3ヶ月に一度のペースで開催していて、コンテンツ的には医療だけではなく、開業に向けてのマーケットやマネジメントを学ぶ機会も設けています。
地方の医療現場を改善し、世界にまでネットワークを広げる
今後の展望としては、国内のドクターのネットワークをどんどん広げていきたいという思いがあります。自治体と協力しながら、それぞれの地域ごとにネットワークを増やしていこうと考えています。特に地方では医者が足りず、満足に医療がまかなえていない部分もあるので、そういった状況を打破していきたいですね。
医師が地方に足りないことで何が起こるかというと、子育て世代が都会に出て行ってしまうんですね。小児科の体制が整った場所で暮らそうと考えるからです。それが一層、地方の人口減少と、高齢化を進める要因になってしまう。私の地元の奄美大島も、高齢の方ばかりが多くなっています。だからこそ、地方の医師に参加してもらいながら、地方の医療、地方でもできることを増やすことが目標です。
長期的には、ドクターのネットワークを日本から世界に広げていきたいと思っています。出産時の乳幼児死亡率が最も低いなど、日本の医療技術は世界で最も高いと言われています。
参加するドクターを増やしていきながら、日本で解決している課題やデータを世界に提供していく。今はメディカルツーリズムと言って、海外から日本に医療を受けに来る中国や東南アジアの富裕層が多いので、もし海外の患者が日本で医療を受けたいと望むなら、日本の医者に紹介してもらえばいいと思います。
地方の医療現場をより良くしていくこと、そして世界に日本の医療技術を広げていくことが、今後の弊社の使命です。世界の医療の質を支える会社として、今後も発展していきたいと思います。