株式会社FESCH
安井 慎治
POSTED | 2019.02.07 Thu |
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TAGS | 従業員数:5人以下 業種:その他 創立:7〜8年 決裁者の年齢:50代 商材:BtoB |
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悪条件の土地でも設計次第で魅力ある建物に
建築で町の活性化や過疎化対策の提案もTopics
今回は、株式会社FESCH代表の安井氏にお話を伺います。
「設計士は家を建てるお客さまの側に立つべき」という考えから、不動産業者やディベロッパーの下請けをせず、悪条件の土地にでも設計士ならではの視点とアイデアで、魅力あふれる設計をしているFESCHの建築理念をお聞きしましょう。
株式会社FESCH 代表 安井 慎治氏のONLY STORY
建て主の利益を考えて、建設会社の下請けはやらない
–設計事務所である株式会社FESCHのサービスを具体的にお聞かせください。
安井氏:FESCHはBtoBで建築をメインとした設計をやっています。設計事務所、設計士といっても意匠設計、構造設計、設備設計など、いくつもに分かれていますが、FESCHはその中の意匠設計、いわゆるデザインと言われる部分を業務としています。
たとえば住宅、アパート、マンションなどは建築物が商品ですから、デザインや企画、アイデアが金銭的なメリットに直結するという価値を認識してもらうことに特化してBtoBとしています。
–設計事務所はたくさんありますが、御社が特に意識する差別化のポイントはどこにあるでしょうか。
安井氏:建物の設計は設計士にしか許されていないため、設計士の介在しない建物はないのですが、一般的には家を買うとなるとお客さまはハウスメーカーか不動産屋に行きます。
なので、設計事務所は、多くのお客さまが足を運ぶハウスメーカーや不動産屋の下請けをすることで、個人のお客さま向けに事業を展開するよりも効率よく仕事の量を確保しています。また、設計士がファイナンスに強くないことも下請けになっている理由の一つです。
しかし、このように設計事務所が下請けになってしまうと、家を建てるお客さまが本来顧客であるべきなのに対し、ハウスメーカーや不動産屋がお客さまになってしまいます。
建築や設計の知識をあまり持たない建て主が、見積書の精査や、プロの会社を相手に交渉をすることは難しいと思います。相談に応じることができるのは設計士なので、設計士は建て主の方をお客さまとするべきだと考えています。
こうした考えのもと、FESCHは下請けをやらないことを大前提としており、この点が大きな差別化であると言えます。
当社は設計士ならではの視点からメリットを見つけ出して、魅力的な建物を作ることができます。こうしたアイデアとファイナンスを併せ持つ設計事務所は他にありませんから、大きな強みとなっています。
–デザインを考える際、どういったところに着目し、気をつけるのでしょうか。
安井氏:私は場所、地域、誰がやるのか、そして周囲の状況などを徹底的に調べ、その上で誰かにとって価値ある「こと」を生み出し、「もの」化、つまり建築物として形にしていく作業に入ります。
価値ある「こと」をどういう形に具現化するのかを考えるのがデザインであるはずです。見た目のいい建物を提案するのは設計士として当然で、それにどういう付加価値を付けられるかを重視しています。
–実際に、お客さまの声はどういったものがあるでしょう。
安井氏:空室率が減ったり、入居者が決まったという声をいただいています。そうしたお客さまの声もあり、情報誌への掲載や、テレビの取材のお話もいただくようになりました。
建築に限らず、シャッター街化した商店街の空き家の相談をいただいたことから、ゲストハウスで外国人を呼ぶことを提案して、町の活性化に寄与することもできました。
このように空き家再生、相続した土地の有効利用などの活性化や、町おこし、過疎化の問題解決にまで広がっていて、そうした面の相談や依頼も増えています。
–事業をやっていく上で、一番大事にしていることは何ですか。
安井氏:お客さまの立場になって考えるということが第一です。他の工務店からできないと言われて当社へいらっしゃるお客さまも多いのですが、社員にはそのような話が舞い込んできたときも、できる理由をひとつ探せといつも言っています。
外的要因以外にも自身の経験や知識のなさなど、できない理由はいくらでもありますが、当社は常にどうやったらできるのかを考えています。できないと思われることを形にしたときが、建築家の最大の醍醐味ですね。
社名の5文字にFESCHの建築理念を込める
–起業に至る過程で何かエピソードがありますか。
安井氏:特にやりたいことを見つけられずにいた頃、建築に出会い、面白くて専門学校に行って一級設計士の免許を取得しました。しかし、現場で監督をやっていても、そこでは経験と知識に歯が立ちませんでした。
作ることは楽しかったので、現場仕事の前段階である設計はより楽しいだろうし、アイデアで経験や知識の不足は相殺できるはずだと思い、設計を志しました。
その当時、私は内装会社を立ち上げていたので、経営者として進むのか、設計で自分の力を試すのか迷いましたが、30歳のときに思い切って建築の大学に入りました。それから、会社をたたんで、大学で縁のあった建築家の先生の下で、6年半修業しました。
自分で設計事務所を開くという目的があったので、とても面白かったですね。
–FESCHという社名に込めた企業理念をお聞かせください。
安井氏:建築事務所の名前は、個人名が冠されることが多いですが、私はだれが作ったかよりも、作ったものを重視しているので、建築理念さえきちんとしていれば、あとは自由でいいと考えています。ですから、FESCHという会社名には、理念を込めています。
Fはファミリー、私たちと関わる全ての人々を指します。そのファミリーのために、E、エボリューション、進化をしていく。古きを知りながら新しい進化と情熱を持って、関係する人との化学反応を起こしながら、誠実に事業を行います。
それさえできていれば、自由であるというのが大前提です。これを実際に取り組むときに必要なのは、自身が楽しみ、相手を楽しませているかどうかなんです。
そこで、Sのサプライズ、Cのチャレンジ、Hのホスピタリティを忘れず、事業を行いましょう、というように、理念を社名に込めているんです。
設計士は労働裁量制の対象ですから、責任さえ果たしてくれれば、どこで仕事をしてもかまわないし、出勤も休みも自由です。また、いろいろな建築物を見て勉強することも大切なので、自分で企画した仕事兼旅行の費用も出しています。
–起業してから、嬉しかったこと、つらかったことは何でしょう。
安井氏:嬉しいのは自分たちのやれること、できることでお客さまに喜んでもらえ、そのための方向性を自分たちで提案できることです。
つらいというより怖いのは、人を雇うことで、給料は確実に払わなくてはならないし、その人の生活に責任を持つことですから、心配はついて回りますね。
設計事務所のスタンダードを作り、自由に働ける環境へ
–今後の目標をお尋ねします。
安井氏:法人化してまだ5期目なので、設計事務所とはどんなものか知らない若い社員が多く、FESCHの理念、スタンスを教え、共感してくれても、それを体現するのはなかなか難しいようです。
でも、努力して、成長して、自分で動けるようになった先に、設計士として自由にできる場所を提供してあげられるようにする。それが私の目標のひとつですね。各々が自由に図面を書くプレイヤーであれるようにと思っています。
–読者の方に一言お願いします。
安井氏:考えることが好きという若い人、問題解決が楽しいと思う若い人とは、ぜひ一緒に仕事をしたいと思っています。当社で働きたいという方も、一緒に事業をしたいという方も、ぜひご連絡ください。