大手企業にアプローチする大手開拓営業(エンタープライズ営業)は、難易度が高い一方、受注に成功した際のメリットが大きいです。大手開拓に成功するには、大手開拓ならではの特徴を理解し、アプローチ方法を工夫したり、関係性構築に努めたりすることが重要です。
この記事では、大手開拓営業に注力するメリットや難点、大手開拓に求められるスキル、成功するためのポイントなどを解説します。さらに、大手開拓の効果を上げるのに役立つ代行サービスについても紹介します。大手企業にアプローチしてビジネスチャンスを広げたい方は、ぜひ参考にしてください。
大手開拓に注力するメリット
大手企業を開拓する大手開拓営業は、エンタープライズ営業とも呼ばれ、成約までに時間がかかる難易度の高い営業手法です。一方で、受注に成功すれば大きい利益が得られるという特徴があります。
大手開拓営業に注力し大手からの受注を得られれば、以下の3つのメリットがあります。
- 1社で複数契約・複数プロダクトの利用が期待できる
- 商品・サービスの信用性がアップする
- 安定した売上が期待できる
それぞれ、詳しく解説します。
1社で複数契約・複数プロダクトの利用が期待できる
大手企業は、多数の従業員や部署を抱えていることが多いため、その分ビジネスチャンスが増えます。1社で複数のサービスやプロダクトの契約・利用が期待できる点は、大手開拓の大きなメリットです。
1つの部署での導入をきっかけに、後から他の部署にも導入され、結果的に複数部署で利用される場合も多いです。部署ごとに利用しているサービスが異なると、業務がスムーズに進まなくなるためです。また、サービス同士の互換性を考えて、自社の複数プロダクトを利用してもらえる場合もあります。このように、1社から複数部署や複数サービスの契約ができれば、大きな利益になるでしょう。
商品・サービスの信用性がアップする
「大手企業で導入されている」という事実は、商品やサービスの信用度アップにつながります。導入実績を検討材料としてサービスを選ぶ人は多く、特に大手企業での導入実績は、非常に大きなアピールポイントとなります。
また、自社の商材が大手企業で採用されていることを、外部メディアに取り上げてもらえる可能性もあります。メディアを目にした見込み顧客から「大手のあの会社が導入しているのなら安心だ」と思ってもらいやすく、今後の受注率アップにつながります。自社のブランディングという面でも、大手開拓は有効です。
安定した売上が期待できる
大手企業は、一度成約した後はプロダクトの購入が継続される可能性が高いため、安定した売上が期待できます。
大手企業では、意思決定にあたってさまざまな関係者が存在します。そのため、関係者の調整や説明など意思決定までにかかる時間が長くなりますが、その分、決定を簡単に変更しづらいため、他社の商品に乗り換えるリプレイスのリスクは少ないです。特に、サブスクリプション型のサービスなど、毎月料金が発生するタイプの商材を契約してもらえた場合は、毎月安定した売上が入ってくることになります。
大手開拓が難しい理由
大手開拓には、上記の通りさまざまなメリットがある一方、大手開拓ならではの難しさもあります。
ここでは、大手開拓営業のハードルが高い以下2つの理由をご紹介します。
- ターゲットが少なく接点を作りづらい
- リードタイムが長い
ターゲットが少なく接点を作りづらい
大手企業はそもそも数が少ないため、アプローチしづらいという特徴があります。
大手企業とは、中小企業以外の企業のことを指します。中小企業については、「中小企業基準法」によって明確に以下のような基準が設けられています。
- 製造業・その他:3億円以下または300人以下
- 卸売業:1億円以下または100人以下
- サービス業:5,000万円以下または100人以下
- 小売業:5,000万円以下または50人以下
参考:中小企業庁 中小企業・小規模事業者の定義
日本の企業のうち、約99.7%が中小企業とされています。つまり、大手企業に該当するのは、日本の企業のうち残りの約0.3%、社数にして約1万社ほどです。大手開拓は、受注するのが難しいという以前に、ターゲットが少なく顧客との接点が作りにくいという難しさがあります。
リードタイムが長い
受注までのリードタイムが長い点は、大手開拓における難点の1つです。大手企業では、意思決定プロセスに複数人・複数部署が関係するため、意思決定や検討に時間がかかる傾向があります。
また、大手は次年度までの予算や予算の使用方法が、既に決まっていることも多いです。その場合、商品に魅力を感じてもらっても、今期すぐの導入は難しく、導入次期が伸びる傾向があります。
大手開拓の特徴
大手開拓を成功させるためには、大手開拓営業ならではの特徴を理解することが大切です。ここでは「The Model型」営業と比較しながら、大手開拓営業の以下3つの特徴を紹介します。
- 最初にターゲットを絞り込む
- 社内のあらゆるリソースを活用して訴求する
- 手厚くアフターフォローする
最初にターゲットを絞り込む
大手開拓の特徴は、最初からアプローチする企業を決めて営業する点です。最初からターゲットを絞り込み、さまざまな方法でアプローチを行います。そこから、連携している部署や実際にサービスを使う部署、最終的な決裁者など、別の関係者へとアプローチ先を拡大して、営業活動を進めます。
一方、近年注目されている「The Model型」の営業は、最初は広くアプローチし、優先順位を決めて顧客を絞っていきます。アプローチする企業が多い点が大手開拓との違いと言えます。
社内のあらゆるリソースを活用して訴求する
「The Model型」の営業では、インサイドセールスやフィールドセールスなど、特定の担当者が営業活動を行い、リレー形式で連携していきます。フェーズごとに担当者が異なり、それぞれが営業活動を進めていくのが特徴です。
一方、大手開拓では、自社全体で商品やサービスをアピールする必要があります。大手企業が商品・サービスを導入するとなると、数百人、場合によっては数千人が利用することになります。大きな意思決定となるため、自社の営業担当者1人のアプローチだけで導入に至る可能性は低いです。
そのため、大手開拓では、営業担当者だけでなく、ホームページやSNSなど、あらゆるリソースを活用してサービスの魅力を訴求する必要があります。
手厚くアフターフォローする
営業では契約後にアフターフォローを行いますが、大手開拓においては、特にアフターフォローの重要性が高いです。導入後のサポートや運用支援といったきめ細やかなアフターフォローを実施することにより、顧客満足度を高め、アップセルやクロスセルにつなげることが求められます。信頼を獲得できれば、自社の新しい商品やサービスを優先的に導入してもらえる可能性があるとできるでしょう。
大手開拓営業に必要なスキル
大手開拓営業を成功させるためは、以下のようなスキルが必要です。
- 情報収集力
- コミュニケーション能力・交渉力
- スケジュール管理能力
- 関係構築能力
ここでは、大手開拓営業に必要なそれぞれのスキルについて解説します。
情報収集力
大手開拓では、ターゲットの詳しい情報を把握する「情報収集力」が求められます。競合他社との激しい競争を勝ち抜くには、他社よりも顧客のニーズを満たすアプローチをしなければならないからです。
大手開拓を成功させるためには、単にホームページに載っている情報を収集するだけでは不十分です。提供している商材の基本内容からターゲット、経営戦略や組織が抱えている課題、決裁者など、さまざまな情報を収集する必要があります。
コミュニケーション能力・交渉力
コミュニケーション能力や交渉力は、営業担当者にとって欠かせない能力です。単なるサービスの紹介だけでなく、サービスを導入する効果やターゲットとの親和性など、さまざまな観点からプレゼンを行わなくてはなりません。
そのため、サービスの魅力を訴求するハイレベルなコミュニケーション能力やプレゼン能力が必要となります。特に大手開拓では、多くのステークホルダーが存在するため、さまざまな担当者と面談を行って関係性を築き、商品の魅力を伝えるスキルが求められます。
さらに、数ある競合他社との競争に勝つためには、他社よりも先に商談を進める交渉力も欠かせません。
スケジュール管理能力
営業活動に関する計画を立てて、それを着実に遂行していくスケジュール管理能力も、大手開拓における重要な能力です。大手開拓では、リードタイムが長い傾向があります。
意思決定に時間がかかるだけでなく、予算を前期に決めているケースも多く見られるため、計画的に営業活動を進める必要があります。長期でスケジュールを組み、着実にアプローチしていくことが、契約を獲得するコツです。
関係構築能力
大手企業との面談後、いかに関係を構築するかも非常に重要です。特に、商談をスムーズに進めるためには、顧客企業の内部に支援者を作り、支援者と良好な関係を構築する必要があります。支援者とは、社内で商品やサービスの購入・導入に向けて積極的に動いてくれる担当者のことを指します。
大手企業は、複数の企業の商品やサービスを比較検討したうえで、導入するものを決定します。その際に、支援者がいれば自社の商材を推薦してくれるため、成約に至りやすいです。
大手開拓を成功させるポイント
大手開拓を成功させるためには、以下のポイントを理解しておきましょう。
- 様々な方法でアプローチする
- 紹介営業を活用する
- ステークホルダーを洗い出す
それぞれ、解説します。
様々な方法でアプローチするア
大手開拓を成功させるためには、ターゲットへのアプローチ数を増やし接点を作ることが大切です。
アプローチ方法としては、以下のような選択肢が挙げられます。
- テレアポ
- 飛び込み営業
- メール
- 手紙
- DM
- 手紙
- SNSやオウンドメディアの運用
- 知り合いやクライアントからの紹介
- イベントやセミナー
ターゲットとの接点を持つために、色々なアプローチ方法を試みましょう。ターゲットの課題やニーズを把握したうえで、自社の商材と親和性が高い企業に優先的にアプローチすると効果的です。
紹介営業を活用する
紹介営業は、顧客獲得コストがかからず、最初から顧客に信頼してもらいやすいため、非常に有効なアプローチ方法です。特に大手開拓においては、高い効果を発揮します。
大手企業にテレアポやメールなどでアプローチを行っても、他社からの同様のアプローチに埋もれ、興味を持ってもらうことは難しいでしょう。しかし、知人やクライアントからの紹介であれば、スムーズに面談をセッティングしてもらえる可能性が高いです。
しかし、紹介営業は自社だけではできません。紹介営業を活用するためには、紹介者から信頼されることが重要です。まずは既存顧客や大手に人脈のある関係者としっかりと信頼関係を築き、自社商材と相性がよさそうな大手企業を紹介してもらいましょう。
ステークホルダーを洗い出す
大手企業では、意思決定プロセスにおいてさまざまなステークホルダー(利害関係社)が存在します。そのため、担当者だけではなく、複数のステークホルダーに商材の導入を納得してもらう必要があります。ステークホルダーとなるのは、主に以下のような部署や人です。
- 最終的な意思決定を行う決裁者
- サービスの購入を行う部署
- 実際にサービスを利用する部署
- サービスを利用する部署と連携している部署
- 情報システム部や法務部といったサービスに関連する部署
多くのステークホルダーが登場する大手開拓では、ステークホルダーを洗い出し、部署や決裁者の相関図を作り、全体像を把握することが有効です。相関図を作ることによって、次にアプローチすべき関係者や、契約後にアップセル・クロスセルを狙うために関係性を構築するべき担当者が明らかになるでしょう。
大手開拓に有効な営業・マーケティング手法
大手開拓においては、ABMというマーケティング手法と、BDRという営業手法が有効です。ここでは、ABMとBDRについて解説します。
ABM(Account Based Marketing)
ABMとは、特定のターゲットに狙いを定めて、戦略的にアプローチしていくBtoBマーケティングの手法です。自社にとって価値が高い顧客をターゲットアカウントとして選定し、そこからの売り上げの最大化を目指します。
前述のとおり、大手開拓では最初からアプローチするターゲットを絞り込んで進めるため、ABMは大手開拓に活用できる手法です。顧客情報や購買履歴を参考に、ターゲットとなる業界、業種、部署といった属性を抽出し、企業情報や財務情報などを踏まえたうえで、アカウントを特定していきましょう。
BDR(Business Development Representative)
BDRとは、インサイドセールスの手法の1つで、アウトバウンド型の新規開拓営業のことを指します。大手開拓でよく用いられる手法です。
BDRにおいては、戦略的にアプローチするターゲット企業の規模を自社で設定します。そして、電話やメールなどを活用し、ターゲットに対してゼロから能動的にアプローチしていきます。戦略的に顧客に働きかけ、自社商品と親和性が高い顧客との商談機会の創出を目指しましょう。
大手開拓には代行サービスの活用もおすすめ
大手開拓は難易度が高く、中長期的に行う必要があったり、社内のあらゆるリソースを活用したりする必要があります。効果が出るまで時間がかかるケースが多く、自社だけでは大手開拓に割くリソースの確保が難しい場合も多いでしょう。
自社での大手開拓に課題を抱えている場合、代行サービスの活用がおすすめです。大手開拓のプロにアプローチを依頼でき、大手とのアポイントを効率的に獲得できます。
サービスによっては、テレアポやメールなどのアプローチ方法だけでなく、紹介営業を活用して効率的にアポイントを取得できるものもあります。費用はかかりますが、自社のリソースを割くことなくビジネスチャンスを広げられるでしょう。大手開拓のプロからノウハウを共有してもらえれば、サービス利用後の自社の営業にも活かせます。
大手開拓に取り組み、売上拡大を目指す
大手開拓は成功確率が低く、時間がかかることが多いですが、受注できれば大きな利益を期待できます。大手開拓に成功するためには、大手開拓営業の特徴やポイントを理解することが大切です。また、効率的に大手開拓を行いたい場合は、代行サービスの利用を検討してはいかがでしょうか。