これから経営者の年収(報酬額)を決める方の中には、平均を知っておきたいと考える人は多いでしょう。しかし、報酬額を決める際に重要なポイントは、相場以外にも複数存在しています。金額によっては会社の存続が難しくなったり、社員のモチベーションが下がったりするリスクがあります。
そこで本記事では、経営者の平均年収や金額の決め方について解説します。年収を決める際のポイントや注意点も紹介しているため、年収をいくらに設定すればよいのか悩んでいる経営者の方はぜひ参考にしてください。
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経営者の平均年収
2022年に一般財団法人労務行政研究所は、上場企業や上場企業に匹敵する会社などを対象に「2022年役員報酬・賞与等の最新実態」という調査を実施しました。ここではその調査結果から、経営者の平均年収を役位別・会社の規模別に紹介します。
役職別
役職別の年間報酬は、会長で4,641万円、社長で5,039万円、副社長で4,179万円となっています。
役位 | 平均年齢 | 平均報酬 | 月額報酬 | 年間賞与 |
会長 | 70.4歳 | 4,641万円 | 355万円 | 381万円 |
社長 | 59.1歳 | 5,039万円 | 328万円 | 1,103万円 |
副社長 | 62.6歳 | 4,179万円 | 302万円 | 555万円 |
専務取締役 | 60.6歳 | 3,055万円 | 218万円 | 439万円 |
常務取締役 | 59.8歳 | 2,307万円 | 169万円 | 279万円 |
取締役 | 51歳 | 2,009万円 | 140万円 | 329万円 |
従業員兼務取締役 | 33歳 | 1,665万円 | 116万円 | 273万円 |
監査等委員の取締役 | 34歳 | 1,488万円 | 121万円 | 36万円 |
常勤監査役 | 84歳 | 1,391万円 | 115万円 | 11万円 |
※「2022年役員報酬・賞与等の最新実態」を基に作成
一般財団法人労務行政研究所が実施した「2022年度 モデル賃金・年収調査」によると、25歳の従業員のモデル年収は389万円、40歳の従業員のモデル年収は683万円です。これらの結果から社長の平均年収(5,039万円)は、25歳の従業員の約13倍、40歳の従業員の約5.6倍と言えます。
会社の規模別
社長の平均年収は、従業員が1,000人以上の場合には7,502万円、300〜999人の場合には4,619万円、300人未満の場合には3,501万円となっています。会長や副社長の平均年収は、以下の通りです。
会社の規模 | 1,000人以上 | 300〜999人 | 300人未満 |
| 社数/平均年収 | 社数/平均年収 | 社数 |
会長 | 17社/6,435万円 | 19社/3,860万 | 11社/3,234万 |
社長 | 36社/7,502万円 | 44社/4,619万円 | 45社/3,501万円 |
副社長 | 14社/5,026万円 | 7社/2,968万円 | 6社/3,622万円 |
※「2022年役員報酬・賞与等の最新実態」を基に作成
会社の規模が1,000人以上と300〜999人の場合には、会長・社長・副社長の中で最も社長の年収が高くなっています。
従業員が300万人未満の場合には、副社長の年収が最も高い結果となっていますが、会長の年収を調査した会社は11社、社長の年収を調査した会社は45社、副社長の年収を調査した会社は6社であり、それぞれ調査した会社数は異なります。そのため、一概に300人未満の場合には副社長の年収が最も高いとは言えないでしょう。
オーナー社長は役員報酬の他に配当を得ることも可能
オーナー社長とは、会社の株式の50%以上を所有している経営者のことです。会社から対価を得る方法として、役員報酬の他に配当があります。
配当は税金を差し引いた後の利益から支払うものであり、会社の経費に計上できません。役員報酬は特定の条件を満たすことで経費として計上できるものであり、経費計上の可否で役員報酬と配当は大きく異なります。
経費計上をできるからといって、役員報酬が必ずしも得とは限りません。利益額によって法人税率は異なるため、自社の利益額にとってお得になる方法で対価を得ましょう。
経営者の年収の決め方
ここでは、経営者の年収の決め方を説明します。
株主総会と取締役会で決める
経営者の年収の設定は会社法に基づいて行われます。この法律には、役員報酬は定款または株主総会の決議によって定めることが明記されています。しかし、中小企業や小規模法人では、定款に役員報酬の取り決めについて記載していないことが多く、株主総会の決議で設定されることが一般的です。
経営者の報酬が決まる方法は、主に以下の2通りとなっています。
- 株主総会で経営者各自の年収を決める
- 株主総会で経営者の報酬の総額を決め、取締役会で内訳を決める
経営者の報酬に関する決議を行なった際には、その内容を議事録として文書に残しておくことが不可欠です。後々の税務調査などで報酬の取り決めや支払いに関する証拠として必要になるからです。
会社設立後3か月以内に決める
新たに会社を設立した際、3か月以内に経営者の報酬を決める必要があります。この期間を過ぎると、経営者の報酬を会計上の損金として計上できないので注意が必要です。
経営者の報酬は、定期同額給与が基本条件とされています。これは、事業年度を通じて毎月同額を支払うことを意味しており、この方式を採用することで報酬を損金として計上できるので、会社の税負担の軽減が可能です。
変更は事業年度開始から3か月以内に行う
経営者の報酬を変更する場合、事業年度開始から3か月以内に再設定すれば、新たに設定された経営者の報酬は会計上の損金として計上できます。事業年度開始から3か月を経過して経営者の報酬を変更した場合には、増額分や減額分は損金として計上できません。例えば、経営者の報酬を途中で増額すると、増額分は追加の課税対象となります。
経営者の報酬は変更できますが、税務上の影響を十分に理解して、変更するタイミングを慎重に判断する必要があります。
経営者の年収を決める際のポイント
会社の経営状況や、社員の給料とのバランスを考慮して、経営者の年収を決める必要があります。ここでは、会社の経営状況や社員の給料とのバランスが重要となる理由を説明します。
会社の経営状況
現在の売上や予測される税金、社会保険料などを基に、経営者の報酬を適切に決定することが重要です。しかし、創業したばかりの会社では、売上の予測が難しく、経営状況によっては報酬の支払いができないこともあるでしょう。
役員報酬を未払金として計上しておくと、後からまとめて支払うこともできます。役員報酬を損金算入できて税金を抑えられるため、設立したばかりであっても3か月以内に報酬を決めましょう。
また、現段階で社員を雇っていなくても将来的に新しい人材を迎え入れることがあります。人材の増加も考慮して経営者の報酬を計画的に決めることが、会社の持続的な発展に必要です。
社員の給料とのバランス
社員の給料を減らして経営者が高額の報酬を得ている状況は、社員のモチベーションを低下させる要因の一つです。社員のモチベーションが下がると、生産性の低下や、優秀な人材の離職という形で企業の成長を妨げます。社員の給料が相場より高くても、経営者との格差が大きい場合には不満に思う社員が現れる可能性があり、経営者と社員の給料のバランスは非常に重要です。
社長の給料は社員の○倍が理想と明確に決まっているわけではなく、会社の規模によっても適切なバランスは異なります。ただし、社員の平均年収の8〜10倍程度を経営者の年収として設定している企業が多いことから、参考にするのもよいでしょう。
なお、社員のモチベーションを上げる代表的な方法に、ストックオプションが挙げられます。ストックオプションとは、従業員が自社株をあらかじめ決められた金額で取得できる権利です。株価が安いときに権利を付与すれば、従業員は株価上昇を目的に営業成績を上げるように努めるため、モチベーション向上を期待できます。
経営者の年収に関する注意点
損金算入できる報酬の条件は、定期同額給与と事前確定届出給与、業績連動給与のいずれかに限定されています。経営者の報酬に関する損金算入の条件はケースによって異なるため、具体的な報酬額を決める前に条件をきちんと把握しておくことが重要です。
例えば、定期同額給与の場合、会社の設立後3か月以内に決定する必要があります。一方、事前確定届出給与の場合、株主総会などで決議されてから1か月以内、あるいは事業年度開始から4か月以内の、いずれか早い日付で決める必要があります。
経営者の年収のシミュレーション
法人利益の額が同じでも経営者の年収が違えば、発生する税金も異なります。ここでは、法人利益の金額別にシミュレーションを行います。
なお、役員報酬の計算は税理士法人経営サポートプラスアルファが提供している「役員報酬シミュレーション」で実施しました。
法人利益が100万円のケース
法人利益が100万で社会保険に加入しているケースのシミュレーションを行ないました。
経営者の報酬 | 所得税・住民税 | 社会保険料(個人) | 法人税など | 社会保険料(法人) | 個人差引+法人差引 | 手取合計額 |
0円 | 0円 | 137,124円 | 262,800円 | 137,124円 | 537,048円 | 462,952円 |
20万円 | 0円 | 137,124円 | 218,000円 | 137,124円 | 492,248円 | 507,752円 |
50万円 | 0円 | 137,124円 | 150,800円 | 137,124円 | 425,048円 | 574,952円 |
100万円 | 0円 | 154,824円 | 70,000円 | 154,824円 | 379,648円 | 620,352円 |
編集部のおすすめポイント
経営者の報酬を100万円に設定した場合の手取りは620,352円であり、上記の中で最も税金を抑えられています。
法人利益が500万円のケース
法人利益が500万で社会保険に加入しているケースのシミュレーションを行ないました。
経営者の報酬 | 所得税・住民税 | 社会保険料(個人) | 法人税など | 社会保険料(法人) | 個人差引+法人差引 | 手取合計額 |
0円 | 0円 | 137,124円 | 1,179,700円 | 137,124円 | 1,453,948円 | 3,546,052円 |
100万円 | 0円 | 154,824円 | 930,600円 | 154,824円 | 1,240,248円 | 3,759,752円 |
200万円 | 99,400円 | 299,400円 | 674,400円 | 299,400円 | 1,372,600円 | 3,627,400円 |
300万円 | 189,200円 | 449,100円 | 416,800円 | 449,100円 | 1504,200円 | 3,495,800円 |
編集部のおすすめポイント
経営者の報酬を100万円に設定した場合の手取りは3,759,752円であり、上記の中で最も税金を抑えられています。報酬を高めに設定するほど社会保険料は上がりますが、法人税は下がるため、報酬額を高め、または低めに設定すればよいというわけではありません。
法人利益が1,000万円のケース
法人利益が1,000万円のケースのシミュレーションを行ないました。
経営者の報酬 | 所得税・住民税 | 社会保険料(個人) | 法人税など | 社会保険料(法人) | 個人差引+法人差引 | 手取合計額 |
0円 | 0円 | 137,124円 | 2,644,800円 | 137,124円 | 2,919,048円 | 7,080,952円 |
100万円 | 0円 | 154,824円 | 2,270,600円 | 154,824円 | 2,580,248円 | 7,419,752円 |
400万円 | 284,300円 | 598,800円 | 1,313,600円 | 598,800円 | 2,795,500円 | 7,204,500円 |
800万円 | 997,500円 | 1,179,300円 | 253,500円 | 1,179,300円 | 3,609,600円 | 6,390,40円 |
編集部のおすすめポイント
経営者の報酬を100万円に設定した場合の手取りは7,419,752円であり、上記の中で最も税金を抑えられています。
よくある質問
ここでは、経営者の年収に関するよくある質問を紹介します。
- ひとり社長の年収は誰が決める?
- 雇われ社長の年収はどのように決まる?
Q.ひとり社長の年収は誰が決める?
A.ひとり社長の報酬は、自分自身で自由に決めることができます。
Q.雇われ社長の年収はどのように決まる?
A.雇われ社長の年収は、従業員と同じように、人事評価をもとに決定されます。経営者ではあるものの、会社のオーナーに雇われている状態であるからです。
決まった期間内に経営者の年収を適切な額で設定しよう
経営者の年収は、一般的に株主総会と取締役会で決められます。経営者の報酬に関する決議を行なった場合には、税務調査への対応に向けて議事録として文書を残しておきましょう。
報酬額は会社設立後3か月以内に決める必要があり、変更する場合には事業年度開始から3か月以内に行います。期間を超えて金額を変更した場合には、増額分は追加の課税対象となる点に注意が必要です。
本記事で紹介した、経営者の年収を決める際のポイントは、以下の2点です。
新たに創業したばかりでは売上の予測をすることは難しいですが、売上や税金、社会保険料などを考慮して適切に報酬額を決める必要があります。また、社員の給料を低く設定して経営者の報酬額を高くすると、社員のモチベーションが下がってしまう可能性があり、社員の給料とのバランスも重要です。
ぜひ本記事で紹介した注意点やシミュレーションも参考にして、適切に報酬額を決定してください。
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(本文執筆・編集:オンリーストーリー編集部)
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(コメント:代表平野)