監修:平野 哲也(株式会社オンリーストーリー 代表取締役)
資金調達はすべきか、決めきれずにいることはないでしょうか。
より事業の拡大を考えるタイミングこそ、多くの経営者が頭を悩んできたのがこの問題です。
この記事では、判断の軸、調達ありと調達なしの4つの状態、調達の3つの難所を解説します。
資金調達の判断軸|目的にせず手段として考える
資金調達は、会社を伸ばすための手段のひとつです。
判断の軸を3つ挙げます。
資金調達そのものを目的にしない
資金調達の成功が、ゴールのように語られる場面があります。
オンリーストーリーは、資金調達は目的ではないと考えています。
お金が入った時点は、事業を伸ばす作業が始まる地点です。
調達の前に、そのお金で何を変えたいかを1文で書いてください。
賛成派と反対派の議論に引きずられない
資金調達への賛否は、上向きか下向きかの矢印のように、極端に語られがちです。
調達を善悪で語る議論から離れ、自社にとってどうかを軸に決めます。
賛成派の成功例も反対派の失敗例も、会社の段階や事業の形が違えば当てはまりません。
周囲の意見は参考にとどめ、自社の目的と照らして判断してください。
自社の状況を3つの問いで確かめる
判断に迷うときは、問いに置き換えると整理できます。
何に使い、いつまでに成果を出し、資金なしで進められるかを問います。
自己資金で目的を達成できる見通しがあるなら、調達は急がなくても構いません。
3点を紙に書き出し、答えが曖昧な項目から詰めてください。
調達した場合としない場合|4つの状態で考える
資金調達の良し悪しは、調達の有無と結果の良し悪しの2軸で決まります。
4つの状態を順に並べます。
| 状態 | 内容 |
|---|---|
| 調達なし×良い | 自己資本経営で、自由度が高い |
| 調達あり×良い | 投資して時間を買い、面を押さえられる |
| 調達なし×悪い | 先行投資ができず、リビングデッド状態になる |
| 調達あり×悪い | 株主と揉め、自由度なく詰められる |
調達なしで良いのは自己資本で自由に動ける状態
調達しない選択にも、良い状態があります。
自己資本で経営できれば、意思決定の自由度が高いまま事業を進められます。
株主への説明や、期待された成長の速さに合わせる必要がありません。
自己資金で目的に届く見通しがあるうちは、無理に調達しなくて構いません。
調達ありで良いのは時間を買い面を押さえる状態
調達が生きるのは、お金で時間を縮められる場面です。
投資して時間を買い、広く展開して面を押さえられると、調達ありの良い状態になります。
自己資金だけでは数年かかる投資を、短い期間で進められます。
調達した資金で、何の時間を何か月縮めるのかを具体的に決めてください。
調達なしで悪いのはリビングデッドになる状態
調達しなかったことが、裏目に出る場合もあります。
先行投資ができず、生きてはいても伸びない、リビングデッド状態になります。
競合が資金を使って先に広げる市場では、立ち止まるだけで差が開きます。
調達しない場合は、先行投資なしで伸ばす道筋を、数字で描けているか確認してください。
調達ありで悪いのは株主と揉めて詰められる状態
調達したことが、重荷になる場合もあります。
株主と方針が合わず揉めると、自由度がないまま株主総会では厳しく追及される状態になります。
出資を受けるときは、お金と一緒に、期待と発言権も受け取ることになります。
面談の段階で、相手の期待する成長の速さと方針を確認してください。
資金調達の3つの難所|時間・保証・本業
調達を決めたあとにも、乗り越える壁があります。
オンリーストーリーが挙げる3つの難所を並べます。
半年以上かかる長期戦に備える
資金調達は、動き始めてから完了するまでに、半年以上かかる長期戦です。
調達の活動は半年以上続く前提で、資金が尽きる前から動き始めます。
面談、資料づくり、確認作業が重なり、想定より時間を取られます。
残りの資金で何か月動けるかを計算し、期限の半年以上前に着手してください。
上手くいく保証がないことを織り込む
資金調達には、上手くいくという保証がありません。
調達が決まらない場合の計画も用意したうえで、活動を進めます。
面談が進んでも、条件や時期が合わなければ見送りになります。
調達が決まらなくても事業が続く、最低限の計画を先に作ってください。
既存事業も伸ばし続ける
調達の活動中も、既存事業の数字は見られています。
調達に時間を割きながら、既存事業の成長も止めない体制をつくります。
売上や顧客の動きは、事業の勢いを測る材料になります。
調達の担当と既存事業の担当を分け、どちらも手を止めない形にしてください。
調達の判断を決裁者との接点につなげる視点
判断のあとは、時間のかけ方と相手の探し方が成否を分けます。
3つの視点を挙げます。
初回の調達に時間がかかる前提で動く
オンリーストーリーは、初めて資金調達するまでに約6年かかりました。
初回の調達は数年かかる可能性を見込み、早い段階から投資家と接点を持ちます。
実績や信頼が積み上がる前は、相手の関心を得るまでに時間が必要です。
調達の予定がなくても、年に数回は投資家に近況を伝えてください。
調達に頼らない選択肢も残しておく
調達が長引く間も、事業を続ける手段は必要です。
融資や補助金など、出資以外の方法も並行して検討します。
12の手段の違いは、資金調達の方法一覧で比べられます。
出資にこだわらず、返済や条件を比べて、組み合わせを決めてください。
決裁者と直接つながる場を併用する
出資や提携の相手を、紹介や偶然の出会いだけで探すと、数が限られます。
オンリーストーリーが運営する決裁者マッチングは、審査を通過した企業の決裁者同士が直接つながれる仕組みです。
12年・8,000名以上の決裁者が集まる場で、出資や提携の相手とも出会えます。
一方で、商材の単価が低い場合や担当者レベルで決裁が完結する商材では、効果が出にくい傾向があります。
まとめ
資金調達は目的ではなく手段で、調達のあとに選択肢が増えるかで判断します。
賛否の議論に流されず、自社にとってどうかを軸に決めます。
調達の良し悪しは、調達の有無と結果の2軸、4つの状態で考えます。
調達は半年以上かかる長期戦で、保証がなく、既存事業も伸ばし続ける必要があります。
初回の調達には約6年かかった例もあるため、早い段階から投資家と接点を持ってください。
出資や提携の相手を広く探すなら、決裁者と直接つながる場も考えてみてください。
よくある質問
Q. 資金調達はすべきですか
A. 資金調達は目的ではなく手段で、調達したあとに時間や選択肢が増える場合に検討します。
自己資金で目的に届く見通しがあるなら、急ぐ必要はありません。
Q. 資金調達にはどのくらい時間がかかりますか
A. 動き始めてから完了するまで、半年以上かかる長期戦と考えてください。
オンリーストーリーは、初めての調達までに約6年かかりました。
Q. 資金調達をしないほうがよい会社はありますか
A. 自己資金で目的に届く見通しがあり、株主の期待に合わせる必要を避けたい会社は、調達しない選択も成り立ちます。
ただし、先行投資ができず伸びが止まる状態にならないか、数字で確認してください。
この記事の監修者

平野 哲也(ひらの てつや)
株式会社オンリーストーリー 代表取締役
BtoB営業と決裁者マッチングの領域に12年間携わり、決裁者同士をつなぐマッチングサービスを運営。
累計26億円の資金調達を実施し、「ベストベンチャー100」にも選出されている。
「つよいい会社をつくる」を掲げ、経営の中でのしくじりや営業の現場で得た知見を発信中。



