監修:平野 哲也(株式会社オンリーストーリー 代表取締役)
改善提案書を書くように言われたものの、何をどの順で並べれば通るのか分からず手が止まることはないでしょうか。
この記事では、改善提案書に必要な項目と並べる順序、そのまま使える構成、社内と社外それぞれの書き分けまでを解説します。
改善提案書が通らない理由
形式が整っていても、決まらない提案書は多くあります。
原因を四つに分けて見ていきます。
意見から書き始めている
べきだという主張を冒頭に置くと、読み手は是非の判断から入ります。
事実を先に置き、解釈はそのあとに回すと、議論の土俵がそろいます。
困っていることが共有されていない段階で対策を出しても、必要性が伝わりません。
最初の一段落で、誰がどれだけ困っているかを示します。
効果が書かれていない
やったほうがよいことは、社内にいくらでもあります。
何がどれだけ変わるのかを数で示すと、他の案件と比べられる形になります。
金額に換算できない場合でも、時間や件数で表せます。
効果が曖昧な提案は、決まらないまま先送りされます。
費用と手間が見えない
効果だけを並べると、読み手は裏にある負担を疑います。
初期の費用、毎月の費用、社内で必要な工数の三つを先に出しておきます。
隠して通すと、実行の段階で止まります。
概算であれば、その旨を明記して構いません。
決める人が読む前提になっていない
現場の言葉で書かれた提案書は、決裁の場で理解されません。
読む人が誰かを決めてから、分量と言葉を調整する必要があります。
役員が読むなら、要点は一枚に収めます。
詳しい説明は別紙に回し、本文は判断に必要な情報だけにします。
改善提案書に入れる七つの項目
順序を決めておけば、毎回の構成に迷いません。
上から順に並べる形で説明します。
表題と提案者
何についての提案かを、一行で分かる表題にします。
改善提案書とだけ書かず、対象の業務名を入れると検索や保管がしやすくなります。
提案者の所属と氏名、日付も忘れずに入れます。
複数名で出す場合は、代表者を先頭にします。
現状と課題
いま何が起きているのかを、事実だけで書きます。
頻度、所要時間、件数、金額のいずれかで量を示すと説得力が出ます。
関係者から聞いた内容は、誰の発言かを添えます。
推測が混ざる場合は、推測であることを明記します。
原因の分析
起きている事象と、その背景を分けて書きます。
人の問題にせず、仕組みや手順の側に原因を置くと反発が出ません。
原因が複数あるなら、影響の大きい順に並べます。
分からない部分は、調査が必要である旨を書きます。
改善案
対策を具体的な行動として書きます。
誰が、いつから、何をするのかまで落とすと実行の形が見えます。
案を複数出す場合は、推奨する案を最初に置きます。
やらない選択肢との比較も、一行添えておきます。
期待する効果
改善後に何がどう変わるかを示します。
現状の数値と、改善後の見込みを並べて書くと差が伝わります。
見込みの根拠も短く添えます。
効果が出るまでの期間も明記します。
費用とスケジュール
必要な費用と、実行の順序を示します。
初期費用、継続費用、社内工数を分けて書くと比較しやすくなります。
実行の段階を三つ程度に区切って並べます。
各段階の責任者も決めておきます。
想定されるリスク
うまくいかない場合に何が起きるかを書きます。
リスクを先に書いた提案書のほうが、かえって信用されます。
対処の方針もあわせて示します。
やめる判断の基準を書いておくと、後の議論が楽になります。
そのまま使える構成の型
項目をどう並べるかは、提出先によって変わります。
三つの型を用意しておきましょう。
一枚にまとめる型
役員や決裁者に出すときは、一枚に収めます。
現状、原因、対策、効果、費用の五つを各二行ずつで書き切ります。
細かい資料は別紙にまとめ、本文からは参照だけします。
図や表を入れるなら、一つに絞ります。
三枚で説明する型
部門内での検討に使う場合は、三枚程度が扱いやすい分量です。
一枚目に現状と課題、二枚目に原因と対策、三枚目に効果と費用を置きます。
各ページの冒頭に、そのページの結論を一行書きます。
会議で読み合わせる前提なら、文字量は抑えます。
社外へ提案する型
取引先へ改善を提案する場合は、相手の社内事情を考えます。
相手が社内で説明するための材料として作る視点が欠かせません。
稟議の様式が分かるなら、その項目に合わせて並べます。
自社の売り込みを前面に出すと、改善提案として扱われません。
項目ごとの書き方の例
抽象的な説明だけでは、手が動かない場面があります。
主要な四項目について、書き方の具体例を示します。
現状と課題の書き方
受注の入力を営業が手作業で行っており、一件あたり十五分を要している。
月の受注が二百件あるため、合計で五十時間が入力に充てられているという形で量を示します。
入力の誤りによる差し戻しが、月に十二件発生している点も添えます。
いずれも事実だけを並べ、評価の言葉は入れません。
原因の書き方
入力の項目が紙の注文書と電子の様式で異なり、転記が必要になっている。
担当者の習熟度ではなく、様式の不一致が原因であると書き分けるのが要点です。
過去に様式を統一しようとして、取引先の都合で見送られた経緯も記します。
分からない部分は、追加の調査が必要と明記します。
改善案の書き方
注文書の様式を電子の項目に合わせ、転記を不要にする。
十一月から営業部で試し、一月に全社へ広げるという段階を書くと実行の形が見えます。
取引先への説明は営業部長が担当する、と責任者まで決めます。
様式を変えない場合に何が続くかも、一行添えておきます。
効果と費用の書き方
入力時間が一件あたり十五分から五分へ短縮され、月に四十時間が空く見込みである。
初期費用は三十万円、毎月の費用は発生せず、社内の工数は二十時間と分けて書きます。
見込みの根拠として、試算に使った件数と単価も添えます。
効果が出るまでに三か月を要する点も明記します。
社内と社外での書き分け
同じ改善提案でも、相手によって書き方が変わります。
四つの違いを押さえましょう。
前提をどこまで書くか
社内であれば、業務の流れは共有されています。
社外へ出すときは、前提となる業務の説明から書く必要があります。
省略すると、肝心の課題が伝わりません。
用語も、相手の会社で通じる言葉に置き換えます。
誰の負担になるかを明示する
改善には必ず誰かの手間が伴います。
どの部署に、どれだけの工数が発生するかを先に書くと調整が進みます。
負担を隠すと、実行の段階で反発が出ます。
負担を減らす工夫も、あわせて示します。
数字の出どころを示す
社内の数字でも、どこから取ったかを書きます。
計測の方法と期間を添えると、議論が数字の正しさに逸れません。
概算であれば、概算であると明記します。
社外へ出す場合は、公開できる範囲かを確認します。
決裁の流れに合わせる
相手の会社で誰が判断するかによって、必要な情報が変わります。
稟議に必要な項目を事前に聞いておくと、差し戻しが減ります。
金額の区切りによって決裁者が変わる会社もあります。
提出の前に、様式の有無を確認しておきます。
書き出しでつまずかないための準備
いきなり書き始めると、手が止まります。
四つの準備を先に済ませましょう。
困っている人の声を三つ集める
自分の感覚だけで書くと、一人の不満に見えます。
同じ業務に関わる三人から、具体的な場面を聞いておくと事実として扱えます。
聞いた内容は、発言のまま短く記録します。
立場の違う人を混ぜると、原因が立体的に見えてきます。
数えられるものを一つ決める
量を示せないと、優先度の議論に乗りません。
回数、分数、金額のどれか一つを選んで計測すると提案が具体化します。
一週間の記録でも、根拠としては十分に機能します。
計測の方法と期間は、提案書に書き添えます。
過去に同じ提案がなかったか調べる
一度却下された案を知らずに出すと、同じ理由で止まります。
過去の議事録や稟議の記録を確認しておくと、前回との違いを説明できます。
却下された理由が解消されているなら、その点を冒頭に書きます。
前任者が残した資料も、あわせて探します。
決める人が何を気にするかを聞く
判断する人の関心は、現場とは違う場合があります。
費用なのか、人手なのか、取引先への影響なのかを事前に尋ねると的が絞れます。
直接聞けないときは、過去に通った提案を調べます。
関心のある項目は、提案書の前のほうに置きます。
テンプレートは最後に選ぶ
様式から入ると、埋めることが目的になります。
何を伝えるかを決めてから、収まる様式を選ぶ順序が確実です。
社内に指定の様式があるなら、それに合わせます。
様式がない場合は、本記事の七項目をそのまま見出しにします。
提案を実行まで持っていくために
書いて出すだけでは、提案は動きません。
三つの観点で進め方を考えます。
提出前に関係者へ内容を見せる
いきなり会議に出すと、その場で反対が出ます。
影響を受ける部署に、事前に内容を見せて意見をもらうと当日が静かになります。
指摘を反映した事実を、提案書に書き添えます。
根回しという言葉を嫌うなら、事前相談と呼べば足ります。
小さく試す案を併記する
全社で一度に始める提案は、決裁が重くなります。
一部門で三か月試す形を併記すると、承認の心理的な負担が下がります。
試した結果で判断する流れにすれば、反対が減ります。
試す範囲と期間、評価の基準を先に決めておきます。
実行後の振り返りを約束しておく
提案は、通した時点で終わりではありません。
いつ誰が結果を確認するかを、提案書の中に書いておくと実行まで責任が残ります。
三か月後に同じ指標を測り直す、という形で具体的に決めます。
うまくいかなかったときに戻す手順も、先に用意しておきます。
外の事例と接点を持つ
社内だけで考えた提案は、視野が狭くなります。
オンリーストーリーが運営する決裁者マッチングは、審査を通過した企業の決裁者同士が直接つながれる仕組みです。
同じ課題に取り組んだ他社の進め方を直接聞けるため、提案の根拠が厚くなります。
一方で、商談の相手を探す目的が中心であり、情報収集だけを求める使い方には向きません。
まとめ
改善提案書は、困っている事実から始めて、原因、対策、効果、費用の順に並べると読み手が判断できます。
意見から書き始めると、読み手は是非の議論から入ることになり、話が前に進みません。
表題と提案者、現状と課題、原因、改善案、効果、費用とスケジュール、リスクの七項目をそろえてください。
決裁者に出すときは一枚に収め、詳しい資料は別紙へ回すと判断が早くなります。
社外へ提案するときは、相手が社内で説明するための材料として作る視点が欠かせません。
提出前に影響を受ける部署へ内容を見せ、小さく試す案を併記すると承認が通りやすくなります。
社内だけで考えず、同じ課題に取り組んだ他社の進め方を聞いておくと、提案の根拠が厚くなります。
よくある質問
Q. 改善提案書は何枚くらいが適切ですか
A. 提出先によって変わります。
役員や決裁者に出すときは一枚に収め、部門内での検討なら三枚程度が扱いやすい分量です。
細かい資料は別紙にまとめ、本文からは参照だけにしてください。
Q. 効果を数字で書けないときはどうしますか
A. 金額に換算できなくても、時間や件数で表せます。
一件あたり何分短縮できるか、月に何件減らせるかという形で書いてください。
見込みであることを明記したうえで、根拠も短く添えます。
Q. 原因を書くときに気をつけることはありますか
A. 人の問題にせず、仕組みや手順の側に原因を置きます。
特定の誰かの能力を原因にすると、議論が感情的になり前に進みません。
原因が複数あるときは、影響の大きい順に並べてください。
Q. 取引先へ改善提案を出すときの注意点は何ですか
A. 相手が社内で説明するための材料として作ることです。
前提となる業務の説明から書き、相手の会社で通じる用語に置き換えてください。
自社の売り込みを前面に出すと、改善提案として扱われなくなります。
この記事の監修者

平野 哲也(ひらの てつや)
株式会社オンリーストーリー 代表取締役
BtoB営業と決裁者マッチングの領域に12年間携わり、決裁者同士をつなぐマッチングサービスを運営。
累計26億円の資金調達を実施し、「ベストベンチャー100」にも選出されている。
「つよいい会社をつくる」を掲げ、経営の中でのしくじりや営業の現場で得た知見を発信中。


