ワンチェック株式会社
山田貴裕
POSTED | 2020.06.01 Mon |
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TAGS | 従業員数:5人以下 業種:IT・情報通信業 創立:3〜4年 決裁者の年齢:30代 商材:BtoB |
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手軽、安全、低コストで不法就労助長罪から企業を守る
偽造カードを見抜く「One Check TAB」Topics
今回のインタビューは、偽造在留カードによる不法就労助長罪のリスクから企業を守り、外国人がきちんと評価される社会を目指すワンチェック株式会社の山田氏にお話を伺います。外国人労働者の現状と課題、同社の取り組みなどについて語っていただきました。
ワンチェック株式会社 社長 山田 貴裕氏のONLY STORY
国連から国際貢献事業認定を受けたサービス
【経歴】
防衛大学校を卒業後、営業支援ベンチャー企業へ。入社1年目から連続して、マーケティング賞を受賞、目標達成賞、社内規範賞を授与。多業界の営業企画、コンサルティング実績。120億の出資を受けたITセキュリティ技術の営業会社のセールスマネージャーにヘッドハンティングされ、販路拡大に努めた。
その経験を生かし、中国大手ECモール内の店舗のEC設計、仕入れ販売等に携わる。
その活動から、その多岐に渡る経験を基に、働きたくても働けない、地方の学生や主婦層、海外人材を活用しながら、在宅で依頼したことがない企業でも、コストを抑えて、外注できる仕組みを構築し、企業のリソースを補う、株式会社Go onを設立。
また、『若者』をテーマに切磋琢磨できるコミュニティを軸に、学びたくても学べない地方の学生やビジネスパーソンに据えた、スキルシェアのコミュニティを立ち上げた。
またフィリピンで貧困層への国際ボランティア活動を経験したり、自衛隊で国際協力をしていた事がきっかけで、外国人労働者を支援する志が強くなった。海外人材に携わる中、日本で働きたくても、働けない外国人の雇用問題に直面する。日本に出稼ぎに来たのに、働くことができず、生きるために在留カードの偽造を行っている外国人を目の当たりにした。
現在、若者や主婦層の潜在的な労働力を活用したとしても、日本の少子高齢化の問題を解決できないと考え、この事実を大きな視野で捉え、在留カードの偽造から引き起こされる雇用主側の不法就労助長罪や外国人の不適切な雇用を無くすことで、外国人が働きやすい社会を創出するべくワンチェック株式会社を設立。
外国人が適正に評価される社会を目指して
–ワンチェック株式会社のサービス内容からお伺いします。
山田氏:弊社は外国人を雇用している企業向けに、ITを活用して外国人の身分確認や就労管理を自動化するサービス「One Check TAB」を提供しています。これは、外国人の身分証明である在留カードが正しいものかどうかをタブレット端末で確認ができる、精度100%のチェッカーです。
現在日本では外国人が偽造在留カードで労働することが大きな問題となっており、こうした外国人を採用した企業は、不法就労助長罪として3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科せられる恐れがあります。雇用主をそのリスクから守るのが弊社のサービスです。
–接触型・非接触型を問わず、瞬時に情報を読み取るサービスは多くの企業が展開していますが、その中で御社の差別化ポイントや強みはどこにあるのでしょうか。
山田氏:「手軽さ」「安全性」「低コスト」の3つを強調したいですね。
まず「手軽さ」で言えば、従来この手の機器はサイズが大きいために店舗や小さな会社には設置できませんでしたが、弊社の「One Check TAB」はタブレット端末を使用するため持ち運びが可能で、使い勝手が格段に良いものになっています。
次に「安全性」ですが、「One Check TAB」は国際貢献事業として国連から認定証が発行されており、これは他社とは大きく異なるところです。また、在留期限切れのアラート告知やハローワークへの書類自動送付(2021年実装予定)など企業の利便性にも気を配っており、読み取り用タブレット端末については現在特許を申請しているところです。
3つめの「低コスト」については、従来は月額3万円ほどの高コストがかかっていたカードリーダーと比べて、「One Check TAB」は月額4166円、年間で5万円という圧倒的な安さで導入してもらえることが強みになっていますね。
–どういう企業が導入しているのでしょうか。
山田氏:弊社は2020年2月に創業したばかりですが、大手建築会社をはじめ、建設会社、SOHO物流事業、外食・小売り事業者など、既に約300箇所に導入いただいています。
–導入後の反応はどういうものでしょうか。
山田氏:これまではコンビニやレストランなどの現場では在留カードチェックができず、いちいち本社に問い合わせる必要があり、不正な書き換えも見過ごされがちでしたが、コンパクトな「One Check TAB」は現場でも邪魔にならない点が一番評価されています。また、圧倒的な安さも多くの企業に喜ばれていますね。
今後はさらに導入を促進していきたいのはもちろんですが、同時に不法就労そのものをなくす使命も感じています。そうすることで「外国人が最も働きやすい日本」になることを願っています。
外国人労働者の与信情報データバンク構築へ
–どういう想いで起業をされたのでしょうか。
山田氏:もともと私は、在宅でしか働けない人や正当に評価されない若者を対象に事業展開をしていたのですが、不法就労を理由に強制送還されてしまう外国人を目の当たりにして、外国人の置かれた境遇こそ解決が急がれていると気づきました。
コンビニやファミレスで外国人スタッフを見ない日はなく、地方の1次、2次産業も外国人労働者によって支えられています。そうした現状から、雇用主が外国人を適正に評価する社会になることを目指してワンチェック株式会社を立ち上げました。
–その解決をどう考えていますか。
山田氏:日本ではインバウンド客の情報データは膨大に蓄積されていますが、外国人労働者の日常行動のデータはありません。もしこの部分をきちんとデータ収集できれば、それが外国人労働者の与信情報データベースとなり、正しい評価につながって、外国人が働きやすい社会が実現できると思っています。
–どのような点で苦労がありますか。
山田氏:日本における外国人への理解の低さに苦労することが多いですね。在留カードを確認するという日常行為を通して不法就労をなくし、外国人=安い労働力という意識そのものをなくしていきたいです。
また、不法就労以外にも、偽造在留カードはマネーロンダリングや公的医療保険の不正利用につながってしまっています。弊社の調査では年間約30万枚の偽造在留カードが発行されているため、これを根絶することが社会、経済、人材などの課題を解決するきっかけになると思います。
–今後の事業目標をお聞かせください。
山田氏:まずはタブレット端末導入を進めていきます。就労確認がおろそかになりがちな小規模事業を中心に、今年度中に10,000台の導入が目標です。
それを達成した次は、外国人本人確認の主要ログを取るサービス作りに着手していきます。これによって外国人の与信情報データバンクができ、外国人労働者が正当に評価される社会作りに進むことになります。開発コストもかかるので、まずは情報集めを進めながら、3~4年後の実現を目指しています。
–実現に向けて、特に力を入れていきたいことはありますか。
山田氏:弊社の事業には「認知」と「設置」が必要だと思っています。弊社も弊社のサービスもまだ広く知られていないため、外国人の正当評価という弊社理念も社会に浸透していません。また、不法就労助長罪さえ知らない企業も多く存在しています。
まずは認知に力を入れることで、「One Check TAB」の設置拡大につなげ、弊社の理念実現に近づいていきたいと思っています。
–最後に、読者へのメッセージをお願いします。
山田氏:少子高齢化によって2030年の日本は労働者が630万人不足するとも言われているため、確実に外国人雇用は増加していきますが、不法就労問題に目を向ける人はあまりいないのが現実です。
弊社は外国人を安心、安全に採用できるシステムを推進し、外国人が働きやすい日本にしたいと考えています。応援していただけたら幸いです。
執筆=増田
校正=米山