ナレッジスイート株式会社

稲葉 雄一

【特集】その属人的かつ非効率な営業をいつまで続けられますか?

今すぐ、営業マンの働き方改革に取り組め。
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今、中小企業の経営者のほとんどが悩んでいる課題がある。
それは、営業力・販売力。

日本政策金融公庫が発表した『2017年の中小企業の景況見通し』によると、調査対象となった企業のうちのほとんどが営業力・販売力に課題を感じ、その強化に努めようとしているという。

“2017年に注力する分野は、「営業・販売力の強化」が75.3%と、これまで同様最も高い割合を占めている。 | 『2017年の中小企業の景況見通し(株式会社日本政策金融公庫)』より”

中小企業のほとんどが、自社の商材・商品が売れなくて困っているのだ。
では、どうすれば売り上げが上がるようになるのか。成長を続けている企業は、どのようにして売り上げを上げているのか。

今回は、2017年に東京証券取引所マザーズ市場へ上場し、『脳の記憶補助装置を作る会社』として今なお成長を続けているナレッジスイート株式会社の代表取締役社長・稲葉 雄一氏にお話を伺う。

デジタル革命の中で生まれた「仮想インフラ」という新たな発想


2006年にブランドダイアログ株式会社として設立され、『脳の記憶補助装置を作る会社』として成長を続けているナレッジスイート株式会社は、2017年に東京証券取引所マザーズ市場へ上場。

常に先頭に立ち、日本におけるクラウド業界を牽引する成長を実現してきた代表取締役社長の稲葉氏は、もともと電通グループで活躍したトッププランナーだったという。

その環境を飛び出してまで稲葉氏が起業に至った理由とは、なんだったのか。

稲葉氏
「僕は広告会社である電通グループにいて、デジタルマーケティング領域の業務に携わっていました。具体的に言うと、デジタルとリアルの世界を融合させるような取り組みであったりとか、いわゆるインターネットを活用した顧客との関係を最大化させるCRM活動、要するに顧客をどういうふうに育成させていくかというところ。

その当時、ちょうどデジタル革命が動き始めた時でね。例えば、テレビがデジタル放送に変わるタイミングだった。」


ここで、稲葉氏はあることに疑問を抱いたという。それは、テレビとインターネットの融合から生まれる膨大なトラフィックをどうやって受けていくのか。

稲葉氏
「デジタル放送の世界に移行が進んだ時、テレビとインターネットの融合によってトラフィックを受け止めるために、強固で膨大なインフラ設備と回線が必要になってくるだろうなと思った。

ただ、当時の僕にはもう1つ疑問があって。今後、そんな大きなインフラを支えるためのコストは、今まで通り広告主がお金を出す場合、さらに何億、何十億ってお金を投資してかないといけないのかってこと。」

この時に生まれたアイディアが、現在のサービスの原型とも言える『仮想インフラ』というもの。

稲葉氏
「インフラっていうのはピーク地点に合わせて作るんですけど、ピークを超えてからはずーっと底辺まで下がっていくので、余白の部分っていうのがすごくもったいなくなる。コスト的にね。

そこで、『仮想インフラ』というものを思いついた。


いわゆる今でいうクラウドのエンジンで、大きくなるトラフィックに応じてサーバーとか回線がどんどん大きくなったり、トラフィックが小さくなるとそのスケールが小さくなってくるようなもの。

クラウドという言葉がまだ日本に上陸していない時代に、アメーバのように大きくなったり小さくなったりするような仮想インフラっていうのが作れないかと考えたのが、もともとの発想だったんです。」

とはいえ、当時の稲葉氏は広告会社である電通グループで2年連続MVPを獲得するほどのトッププランナー。周囲の誰もがビジネスマンとしての憧れの眼差しと感情を稲葉氏に向けていたのではないだろうか。

そのような中、稲葉氏だけは違う世界を見ていた。

裏方としてのプロモーションプランナーの仕事は、名前が表に出るデザイナーとは違って自分の名前が世に出づらい。そのため、新しい世代が新しい発想の波を起こした時、それまでのプランナーは飲み込まれてしまうのではないかという危機感を抱いていたという。

そこで、自分の価値が最も印象付けられたピーク時に飛び出すことによって、フィールドを移してもその影響力を生かすことができると考えて独立。そして、起業へ。

その手に掴んだ『クラウドコンピューティング』という新たな波


起業当初は、まだ『仮想インフラ』というアイディアや理想とする自分たちの仕事というものの実態像を掴みきれずにいたという。

その後、アメリカから『クラウドコンピューティング』という言葉が訪れたタイミングで稲葉氏らは勝負をかける。

稲葉氏

「なんだか、僕らが構想として考えている技術そのものが、アメリカで生まれた『クラウドコンピューティング』の概念とテクノロジーに非常に似ていると思ったんです。

2008年か。ちょうどサービスを立ち上げてすぐにリーマンショックが来て。そうした時に、今までのパッケージソフトウェアだったりASPとか、またSIって呼ばれている業界が軒並み大きな波に飲まれていったんですよね。

ここだ!と思ったよ。


リーマンショックによる時代の変化により、『クラウドコンピューティング』を求める波が来るとわかった。僕らはその当時まだ10人前後の規模の会社だったんですが、その波を掴もうと3ヶ月で5千万の広告費を投下していった。」

当時はまだ新しかったこの概念やサービスに対し、1日に120件もの問い合わせがきて対応しきれない日が続いたという。B to B業界では初めて『フリーミアム』という仕組みも取りながら、順調に顧客を獲得していく。

そのような成長過程の最中、稲葉氏らは一度設備投資のタイミングを誤り、その時期にシステムの不具合によってサービスが止まってしまう事態も重なってしまったことがあった。

稲葉氏
「ナレッジスイート株式会社は、基本的には企業の機密情報を預かってる会社です。なので、『この会社は絶対に潰れないですよ』っていうのを常に示して信頼を得続けなければならない。

そこで、ベンチャー企業としては一般的に2・3ヶ月に設定するキャッシュポジションを私たちは1年に設定。あと、一般的なベンチャー企業の自己資本比率っていうのは10%〜30%と言われるところも、私たちは60%と言う数字を示し続けたんです。

でも、本当にきつかった時にはベンチマークが崩れてしまって、自分たちのバリエーションを落としてまで資金調達をしなければならなくなった時もありました。


その時に事業会社複数社が私たちを救ってくれたことで、会社が1年で蘇ったと。」

ここから一気に急成長を遂げたナレッジスイート株式会社は、2017年にマザーズ上場を果たす。
ここまでの成長を遂げた鍵の1つに、属人的で非効率な営業スタイルからの脱却というものがあったという。

営業マンの働き方改革。効率的に働ける環境と記憶(ナレッジ「知識」)の共有を。


ナレッジスイート株式会社の躍進の裏側には、マーケティングの神様と言われるピーター・ドラッカーの考え方を原点とした独自の営業スタイルがある。

稲葉氏
「僕らがよく言ってるのは、物は売り込むものではないよと。売り込むんじゃなくて、聞き込めっていうことを言い続けていて。それはピーター・ドラッカーが言っている『お客様が欲しい物を提案すれば必ず買ってもらえる』って考え方がその原点なんです。

『お客様は何を求めているか』っていうところを大切にし、欲しがっている物を提案できれば必ず買ってもらえますよね?

欲しい物を提案するには、まずは聞き込むことです。


だから、直接お客様に◯◯を買ってくださいって売り方は一切しないっていうポリシーを持ってる。」

そうして聞き込んだ情報・記憶は個々人が抱えてこんでしまうと、どうしても属人的な働き方になってしまう。そうではなく、情報・記憶というものは記録して共有するのがナレッジスイート流。

稲葉氏

「ナレッジスイートっていうサービスは記録のデータベースなんですね。記録して記憶させていつでも必要な情報を取り出すことができる。

基本的にはお客様がどんな人であっても、相手が何を求めているかを聞き込んで記録し、それをみんなで共有できていればいいんです。なぜかというと、それを参考にすれば相手のニーズに近しいサービスを持っていけば必ず喜ばれるじゃないですか。

こうした購買プロセスに応じた営業フローと記録によってニーズを明確にすることさえできれば、確実に売上は伸びますよ。そこに関しては、僕らは100%売上は伸びるって言い切ってますから。」


データに基づく働き方というのは、具体的にどういったものなのか。さらに、稲葉氏はこう続けます。

稲葉氏
「まず、1つの物を売る時に1人の営業マンが何ヶ月それに費やしているのかってことを把握しておくべきだと思っています。これは、特に中小企業に広く言えることではないかとも思うんです。

じゃあ、仮に営業担当Aさんの受注率が30%だとします。1件受注する為にAさんは何回訪問して、1回の訪問に何分時間を使っているのか。これは、言い換えればAさんの限界を知るということでもある。

例えば、2週間に1度、1時間の打ち合わせを3回やって、最後2週間後に見積もりを持っていって受注率が30%だとします。そうすると、初回打ち合わせから受注まで約2ヶ月間。

もしも、この打ち合わせを1回減らすことができれば、どういう現象が起こるか。

まず、受注までの期間が1ヶ月半に短くなりますよね。期間が短くなるということは、同時に行動に対する経費が落ちる。会社としては交通費をはじめとする目に見えないコストを下げつつ、Aさんとしては今まで2ヶ月間かかっていたものが1ヶ月半になれば2週間の余力ができるじゃないですか。


ここに、また新規のお客様を入れていくことができれば、必ず人の効率って上がっていくんです。受注率は30%のままでも対応出来る数が増えていく。受注率UPをどうしても狙いがちですが、実は一番難しいんですよ。性格やタイプがあるからこそ。」

なるほど。営業成績を良くしようとした時、各営業マンの受注率を上げようとすることが多い。しかし、その受注率というのはそう簡単には上がらないし、営業の技術や経験以外にも契約を獲得するために必要とされる要素は様々。

それであれば、その営業マンの受注率を上げるのではなく、業務を効率化させることで扱える件数を増やしていくということ。

稲葉氏
「Aさんが月に抱えられるクライアントが100社だったら、30%の受注で計算すると30社しか取れない。ここの母数を150社入れられれば、受注率はそのままに45社取れるようになるでしょ。

こうなると、月に100社を抱えていて受注率が40%のBさんがいたとしたら、Aさんの方が契約を取れるようになりますよね。」

とはいえ、各営業マンが自分でこうした工夫をしていけるのかというとそうではない。一方で、社長が「効率的にやりなさい」といったところで変わらないし、方法がわからない。

では、受注率はそのままに売り上げを上げることができる効率的な次世代型営業部隊とはどのようにして作ることができるのか。

稲葉氏
「やれ!取ってこい!と言われても、社員としてはどうしていいかわからないんです。だから、会社は彼らに環境を与えてあげるんですよ。


例えば、先ほど話したような当社の取り組みがそうですね。相手が何を求めているかを聞き込んで記録し、それを他の社員がいつでも引き出せるような形で共有しておく。このデータベースを整えてあげると、あのお客様はあの社員じゃないと・・・といったことにはならないでしょう。

さらに、僕らはそのデータベースに商談先との接触回数や進捗、確度などを記録しておくんです。そうすると、例えば残り1週間で追い込みをかけないとって思った時に非常に役立つ。

ボタン1つ押せば確度の高そうな商談先をピックアップでき、効率的に受注できるので。」

そのような環境を整えてあげることで、営業マンの動きは変わっていくという。

稲葉氏
「1時間を予定していた打ち合わせが40分とか45分で終わってしまったとする。その空いた時間って、どうしますか?


先日、そういう時にビルとビルの間に入って電話をしている当社の営業マンを見かけたんです。次のアポイントとか次々のアポイントとか、もしくは自分たちが後ろに抱えてるお客様へのフォローとかをしている。

当社の営業マンは、携帯電話のアプリの中に入ったデータベースを持ち歩くことで自分たちに与えられている時間内にやるべきことを決めているんです。こうしたパーソナルマネジメントができるか、そのための環境があるか、というところから結果が変わってきますからね。

人手不足だったり働き方改革って言われてるこの時代。

中小企業や中堅企業こそ、社員さんたちが効率的に働ける環境の整備やそれぞれの頭の中の記憶を記録して会社の資産に変えていくということをすべきなんじゃないかな。」

最後に


最後までお読みいただき、ありがとうございました。

営業成績に不安を抱えている企業様、業績の伸び悩みを感じている企業様、一度日頃の働き方を振り返る機会を作ってみてはいかがでしょうか。

さらなる成長の鍵は、『属人性・非効率からの脱却』にあるかもしれません。

執筆・山崎

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