株式会社オプトホールディング

鉢嶺 登

「黒船」襲来。GAFAがきたら本当に勝てますか?

日本企業の死活を分ける、デジタルシフトの本質とは。
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日本では2015年を過ぎた頃から「デジタル元年」という言葉が使われ始め、企業も個人も徐々にデジタル化に対応してきた。しかし、デジタルマーケティングを軸に産業価値の最大化に貢献する株式会社オプトホールディングの代表取締役社長グループCEOの鉢嶺登氏は現況を危惧している。

世界各地のデジタルシフト最前線を見てきた鉢嶺氏は、「今のままでは日本経済が大打撃を受ける」と語り、世界的視点からデジタルシフトの重要性を説く。

株式会社オプトホールディング 社長 グループCEO 鉢嶺 登氏のONLYSTORY


《経歴》
1994年㈱オプト(現:㈱オプトホールディング)設立。2004年、ジャスダック上場。2013年、東証一部へ市場変更。インターネット広告代理店の枠にとどまらず、日本企業のデジタルシフトを支援する会社として業務を拡大し、幅広いサービスを提供している。また、自ら新規事業の立ち上げや、ベンチャー企業の投資育成に努めている。著書に『ビジネスマンは35歳で一度死ぬ』、『役員になれる人の「読書力」鍛え方の流儀』

デジタル産業革命の黒船「GAFA」が日本へ


––なぜ、今、それほどまでに「デジタルシフト」の必要性を感じていらっしゃるのか。詳しく伺ってもよろしいでしょうか。

鉢嶺氏:そのご質問にお答えするには、一度これまでの一連の産業革命を振り返る必要があると思います。と言いますのも、今世界中で起こっているデジタル産業革命は『第四次産業革命』と言われていますね。

18世紀に第一次産業革命が起こって以来、数百年の間に第二次、第三次と、一連の産業革命が起こりました。その過程で、人類は「戦争」「飢餓」「疫病」という有史上の三大課題を解決してきたと言われています。

こうしてみると、第四次産業革命(デジタル産業革命)においても、過去の産業革命によってもたらされたようなポジティブな成果が期待できると考えています。今回の産業革命を前に、「AIに職を奪われる」「デジタルについていけない人はどうするのか」といった不安や問いが一緒にあげられることがありますが、根本的には人類の発展と幸せに大きく繋がる出来事になるはずなのです。

––過去の産業革命から考えられる第四次産業革命のポジティブインパクトに期待を向け、デジタル化を推奨されているのですね。

鉢嶺氏:世界的に見ればそうですね。一方で、この世界的なデジタル化を中心となって進めているのは、Google、Amazon、Facebook、Appleの4社、通称「GAFA(ガーファ)」と呼ばれる米国のプラットフォーマーであるということを、私たち日本人は認識しておかなければなりません。

彼らは、世界中の何億というアカウント情報と巨大ネットワークを武器にあらゆる業界に参入している。アメリカでAmazonにシェアを奪われた玩具販売大手「トイザラス」が経営破綻したような変化が、必ず日本でも起こります。

しかしながら、世界からみて日本は圧倒的にデジタル産業革命への対応が遅れているのが現状です。

世界的プラットフォーマーが日本に生まれない構造的理由とは?


––日本におけるデジタル化が遅れている要因はどういったところにあるのでしょうか。

鉢嶺氏:まず、一言で言うと、日本では「デジタルシフト時代の主役となる(GAFAクラスの)世界的プラットフォーマーが生まれにくい」という環境の問題があります。

––日本では世界的プラットフォーマーが生まれにくい…。それは、なぜですか?

鉢嶺氏:もっとも大きな要因は、言語圏人口の差にあります。

例えば、日本で最もTwitterのフォロワーが多い方はフォロワー数約700万人。かたや、アメリカで一番多くのフォロワーを抱えているアーティストのフォロワー数は1億800万人以上。このような差が生まれるもっとも大きな要因の一つが、まさに英語圏と日本語圏の人口の差です。

以前、当社でも実際にその差を大きく感じたビジネスシーンがありました。当社がSNSの広告ビジネスを展開していた時のことです。フォロワー数に応じて広告費をいただくというモデルだったのですが、日本では収益化が見込めず、撤退しました。これが、アメリカを舞台にしたビジネスだったら違った結果になっていたかもしれません。例えば先述のフォロワー数を参考にすると、日本でフォロワー一人あたり1円ずつ広告費を頂くとすれば、最大売上は約700万円。一方で、アメリカでは1億800万円になります。

同じことが中国にも言えますね。彼らは、13億人を対象にビジネスを行っています。収益、資金調達額、時価総額、研究開発費も13倍違う。こうなると、日本はもう追いつけませんよね。

––人口の差がプラットフォームビジネス規模の差になる、ということですね。

鉢嶺氏:はい。GAFAだけでなく、UberやAirbnbもプラットフォームビジネスで急成長を遂げています。

––両方とも、来日した外国人が旅行中や街中で使っているのを見かけるサービスですね。

鉢嶺氏:英語圏でUberのアプリを既にダウンロードしている人が日本に来たら、日本でもUberを使いますよね。わざわざ日本のタクシーアプリは使わない。これは一例にすぎませんが、アメリカや中国の企業は自国および言語圏で圧倒的な力を携えて、ネットワークの力を世界中に持ち込む動きを見せています。

日本はこうしたデジタルシフトの波を受け、圧倒的不利な状況にありながらも、知識・情報不足ゆえに危機感を持っていない経営者が多いと感じています。このまま何も知らずにアメリカや中国発のサービスを使う暮らしを続ければ、国内の大切なデータやビジネスチャンスをすべて外国に奪われてしまうことになるでしょう。

何百年に一度かの新たな産業革命の波が世界中に押し寄せている今、日本でビジネスを行っている経営者こそ、危機感を持ち、行動を起こしていくべきであると思っています。

トップに覚悟を…。あと一歩を後押しするオプトの存在


––デジタル化の波に乗り遅れてしまった日本。今後どのような姿勢でデジタル化に向き合うべきだとお考えでしょうか。

鉢嶺氏:一言でいうと、「GAFAが参入してきたら、本当に勝てますか?」という問いと向き合うことが大事だと考えています。金融業界にAmazonが参入してきたら…。ヘルスケア業界に参入してきたら…。そう考えた時に「Yes」と答えられる日本企業は、現時点ではそう多くないでしょう。もしもそうした参入が現実になった時、局所的、部分的にデジタル化を進めるような応急処置的対策では、GAFAには太刀打ちできません。

ところが、一部にデジタルツールを導入したことでホッとしている経営者がいることも事実。日本企業の経営陣ほぼ全員が「デジタル化しないといけない」ということは分かっていると思いますが、GAFAの参入を見据えて全社的にデジタル化へ踏み切っている経営者はあまり知りません。さらに、「デジタル化で事業が劇的に変わる」という実感を持っている経営者には、ほぼ会ったことがない。

––将来的なGAFA参入による影響を受けることが想像しづらい業界ではデジタル化への意識が低いように思えますが、そのような業界・企業についてはいかがでしょうか。

鉢嶺氏:基本的に、新たな産業革命の波とGAFAによる影響はすべての領域に関係あると思ったほうがいいでしょう。どんな小さなお店でも、です。

アメリカでは「Amazonエフェクト」と呼ばれているように、小売店がバタバタと潰れています。有名なのは先ほどお話したトイザラスですが、家電量販店も本屋もアパレルも、どんどん潰れていっている。その他の業界でも、様々な予測がたてられています。

タクシー業界であれば、お客様はより利便性の高いUberやライドシェアを選ぶようになるでしょう。飲食店であれば、Instagramの画像検索機能でお店を選ぶ時代になってきて、見た目やビジュアル要素でPRできている店舗とそうでない店舗とでは雲泥の差が生まれるはずです。

––今、日本企業にはGAFAを中心とした世界の動きを察知して、先手を打つことが求められているのですね。

鉢嶺氏:そうですね。とはいえ、企業規模でのデジタルシフトは本当に大変かと思います。デジタルシフトを試みたとしても、社内から理解を得づらかったり経営者自身がデジタルに精通していなかったりすると、デジタル化は困難を極めるでしょう。

デジタルシフトに一歩踏みきれない企業に対しては、1600人ものデジタル人材を抱える日本でも数少ない当社がお力添えしていきたい。私たちの総力を結集して、日本企業のデジタル化を本質的に進めることが私たちに与えられた使命だと思っています。

具体的には「広告代理サービス 」「ソリューションサービス」「データベースサービス」の3つの柱があり、これらを組み合わせて急速に変化する生活者の行動を掴み、企業の収益を最大化していきます。

この時、一緒に取り組む経営者にデジタルの知識そのものは特に求めていません。その代わり、反発を押さえきってでもデジタルシフトをやりきる胆力や覚悟を持っていただきたい。

デジタル化のパイオニアが明かす、5つの失敗原則


––日本で本質的なデジタルシフトを提唱するコンサルティング会社はまだ少ないかと思いますが、これまでに様々な事例を見てこられたのではないですか?

鉢嶺氏:そうですね。原点は、今から10年以上前。当時としてはかなり先進的にデジタルシフトに乗り出した大手企業さんがいらっしゃいました。そのパートナーに当社を選んでいただき、時には100人以上出向してその会社のデジタル化を推進しました。しかし、結果的には上手くいかなかった。以降も、様々な企業のデジタル化に取り組みましたが、上手くいかないことが多かったですね。

そうした試練を乗り越えていくうちに、失敗するケースに共通する5つの理由を発見しました。それから10年経った今でも、この『5つの失敗原則』をクリアする覚悟が経営者にあるかどうかは必ず確認しています。

––『5つの失敗原則』…ですか。詳しく教えていただけますか?

鉢嶺氏:①トップに、デジタルシフトを戦略の中心に据える決意と覚悟がない。 ②デジタルを分かっていない人が、デジタルシフトの責任者になる。 ③既存事業を優先させ、デジタルをないがしろにする。 ④デジタルシフトの責任者に権限(カネやヒト)を与えられていない。 ⑤デジタルシフトによってもたらされるワクワクする未来を、トップが語れない。

デジタルシフトを遂げるには、これらをクリアして押し進めるだけのリーダーシップが必要なのです。そこまでの覚悟を持つ経営者はごく一部にすぎませんが、デジタルシフトに成功した事例として注目される企業もあります。

それが、90年代に紙メディアで伸びていた現在の株式会社リクルートホールディングス。二度のデジタルシフトに成功した背景があり、一度目は紙メディアからウェブメディアへの転換の成功です。未だにほとんどの新聞社、出版社がデジタル化に成功していない中、2000年代前半に全社をかけてWEBメディアの会社に生まれ変わりました。

二度目はインディード社の子会社化と育成。買収した企業に対しては、自分たちの思い通りにしようとしたりデジタルに精通していない人材をトップとして派遣したりする(『5つの失敗原則』の②にあたる)企業が多いでしょう。しかし、彼らはそれをしなかった。自由にして、挑戦や成長を促し、インディード社をどんどん伸ばしたのです。

このようにして覚悟を決め、デジタル化に向き合った株式会社リクルートホールディングスは、人々の暮らしや社会に対して大きなポジティブインパクトを与え続ける企業へと成長しました。短期的な企業利益よりもさらに大きなものを、より先を見据えた経営戦略の一環にデジタルシフトを置いたことがその成長の要因だったと考えています。

若手起業家こそ、デジタルシフトの主役に!


–– 今回の取材を通してお話を伺っていると、今後のデジタルシフト時代においては、経営歴が長く、これまでの成功法則を知っている経営者が有利というわけではないということに気づきました。むしろ、デジタルネイティブな若い世代の方が有利なのでは…?

鉢嶺氏:そうですね。いまは若い人もどんどん起業しますし、デジタルに馴染んで育った若者にとってチャンスだと思います。例えば、世界で “ユニコーン” と呼ばれる企業の経営者の多くは、40歳前後。日本の若き経営者もどんどん挑戦して、デジタルシフト時代の主役になってくれたらと期待しています。

–– 今後のデジタルシフト時代の主役になるためには、どのようなことが必要だと思いますか?

鉢嶺氏:結局はどの時代も変わらない不変の教訓ではありますが、社会が必要とするものを生み出し、社会から応援されるような働きをすることが必要だと思います。目先の欲求だけにこだわるのではなく、ですね。今はその人自身が気づいていないとしても、その想いは絶対に全員持っているものだと思っています。

さらに言うと、自分の想いやビジョンを因数分解していった結果、行き着く場所は、0から起業するという答えだけではないと思います。当社では、先輩経営者に教わりつつ、すでにある資本や信用も活用しながら取り組める社内起業も推奨しています。

–– 最後に、日本の若者、若手経営者に一言いただけますか?

鉢嶺氏:何事もうまくいかない時や壁にぶちあたる時があると思いますが、自分の中の想い・行動・未来が一本の線で繋がるような一貫性を見つけ出し、邁進していって欲しいですね。先輩経営者を勢いよく追い越していくような次世代の若手経営者・ビジネスマンの活躍を願っています。




執筆=大塚(Nutcracker)
編集・校正=山崎・笠原

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