株式会社ダイオーズ

大久保 真一

年商300億 創業49年赤字なし!その経営論に迫る

大久保氏が考える、継続して成長し続ける秘訣とは?
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東京の街を歩いていると、その社名の車を見ない日は無いと言っても過言ではないダイオーズ。

代表取締役社長を務める大久保氏にお話を伺うと、様々な社会の変化の中にいながらも49年間止まることなく増収を続けてこれた確かな理由が明らかになりました。

『時間をかけて、1歩1歩足元を固めていく。それが、私の経営です。』

株式会社ダイオーズ 代表取締役社長 大久保 真一氏のONLY STORY


【経歴】

1941年東京・浅草生まれ。
中央大学卒業。在学中、全日本学生写真連盟委員長。
読売広告社勤務を経て67年より米国と欧州の流通企業で研修。
69年に家業の米穀店に入店しダイオーズを設立。
都内の米店を組織化し配達スーパー開始。
70年、ダスキンのフランチャイジーに。
77年日本初のオフィスコーヒーサービス事業を開始する。
89年には米国の同業会社を買収して海外進出。
2007年に東証一部に上場。B to Bの継続サービスに特化してオフィスコーヒーサービスなど事業所向け各種サービスを日本、アメリカ、アジアで多角的に進めている。
趣味は写真撮影と世界旅行。      
(株式会社ダイオーズHP 社長略歴より)

インタビュアー:平野

国内外で『ダイオーズ流・継続して積み上げるビジネス』を展開


平野:それでは、まず初めに御社の事業内容についてお伺いできますか?



大久保:はい。ダイオーズは大きく分けると2つのビジネスを柱としています。1つ目は日本のビジネス、2つ目が海外のビジネス。

国内ではオフィスコーヒーサービス、ボトルウォーターサービス等の飲料事業と、玄関マットや清掃モップなど定期交換を行うクリーンケアやお掃除を行うダイオーズカバーオールなどの環境事業を展開しています。一方、海外ではオフィスコーヒーサービス事業に特化して展開しています。

平野:様々な業界で事業を行っていらっしゃるんですね。

大久保:一見すると、いろいろとやっているように思われるかもしれませんが、これらの事業には共通している点があるんです。
それは、すべて『BtoBで継続する必然性があるものに特化している』ということ。

水やコーヒー、マットやモップ等のクリーニングなど1回の利用で終わるものではなく、継続的に販売や貸し出し機器のメンテナンスを行う必要のあるサービス、商材に絞って展開しています。

他社様でも、オフィスコーヒーやボトルウォーターなどのビジネスを展開している会社はあります。しかし、私たちのように「BtoBの継続サービス」に特化している上場企業は他にないでしょうね。

1回限りの利用ではなく、定期的に継続してご利用いただくような「継続を積み上げるビジネス」。それが、ダイオーズのビジネスの特徴です。


平野:同じ業界でビジネスを展開されている他社様もいらっしゃると思うのですが、長年御社が選ばれ続けている訳はどういったところにあるとお考えですか?

大久保:おそらく、大きく分けて2点あげることができると思います。

1つ目は、お客様の多様なニーズに対応できるようなサービス、商材を取り揃えていることです。

例えば、私たちのオフィスコーヒーサービスをお使いいただいているお客様にお水や清掃サービスへのニーズもあると気づいたとしましょう。こうした時、「弊社ではボトルウォーターサービスや清掃サービスも展開しているんですよ。」と提案できるように、ダイオーズではお客様のニーズに合わせた様々なサービスや商材を取り揃えているんです。

平野:お客様にとってはすごくありがたいですね。そうしたビジネス展開を続けているということは、やはりビジネス的にも利点があるということなのでしょうか?

大久保:おっしゃる通りです。やはり、サービスや商材が1つだけだと、価格競争に巻き込まれた時、「一番安い◯◯社のものを使います」と言われてしまうことがあるかと思います。

そのような中で、多様なサービスや商材を取り揃えていること自体が魅力となり、多くの方々からご支持を頂き、継続的にご利用いただいています。


平野:近年はある特定のニーズに対して一点突破するようなビジネスが注目されがちですが、御社のようにお客様の多様なニーズを幅広く受け止めることで、その心を掴むという方法もあるんですね。

大久保:2つ目は私たちのスタッフが継続的に訪問し、フォローさせていただくという体制をとっているところでしょう。

先ほど商材が幅広くあるという話をさせていただきましたが、お客様のニーズに合わせてその商材を提案する体制がなければ、意味がありませんよね。

そこで、私共は商品やサービスをお届けする担当とは別に、「CDR」(Client Development Representative)というお客様毎の専任担当を設け、お客様と定期的に顔を合わせてお話を伺う機会を作っているんです。

平野:多様な商材を取り揃え、お客様のニーズをくみ取り、届けるところまで体制作りをされている。とても勉強になります。

一方では、そのようにお客様と顔を合わせて定期的に訪問する体制を整えるということは、従業員一人一人に個々の対応力が求められると思われます。

大久保:はい、おっしゃる通りですね。

平野:実は、弊社でも御社の清掃サービスを利用させていただいているのですが、御社のご担当者様の対応がすごく良く、研修や教育体制が行き届いているなと感じていたところでした。

どのようにしてそのような人材を育成されているのか。御社の人材育成や従業員に対する考え方、仕組み等について伺ってもよろしいでしょうか?

大久保:やはり、人材育成や従業員と向き合うという場面で一番大切にしていることは、本人がやる気になるような仕組みを作ることです。


例えば、ダイオーズでは年に2回、全社員が集う勉強会を行っています。そこで、従業員の日頃の活躍を讃えたり様々な成功事例を発表したりする場を設けています。成績優秀なスタッフに対しての表彰等も行っています。

自分が一生懸命やったことが評価され、他の社員の前で会社から表彰される。こういったことを積み重ねることで、従業員の対応力やスキルアップに繋がっていると考えています。

創業49年間赤字決算無しのダイオーズから学ぶ「安心できる経営」とは?


平野:それでは次は視点を変えて、事前に募らせていただきました「経営者の方々が大久保様に聞きたいこと」を元に質問させていただきたいと思います。

よろしくお願いします。

【Q1】「海外進出の経緯とその過程で苦労したことについて」

平野:御社の特徴の1つとして海外展開している点が挙げられるかと思いますが、海外進出の経緯やその際に心がけたことを伺ってもよろしいでしょうか?

大久保:ダイオーズがアメリカに進出したのは、創業20周年のときのことです。日本でオフィスコーヒーサービスを立ち上げたのが創業から8年経った年なので、そこからアメリカでビジネスを始めるまでにも12年かかっているんですよね。その間、アメリカの成功している会社を見学させていただき、勉強をしていました。


平野:その当時は、どのような会社に訪問していたのでしょうか?

大久保:アメリカの同業者、つまりオフイスコーヒーサービスの会社ですね。年に3回程度マネージャーと一緒に行っていましたので、合計で50社以上訪問したと思います。この期間にアメリカの業界内部について深く学ぶことができました。その頃、日本でのビジネスが軌道に乗っていたこともあり、アメリカでのビジネスを思い切ってスタートさせることができました。

平野:今振り返っていただいて、海外展開の際に役立った経験というのはどのようなものがありましたか?

大久保:海外展開するうえで大きかったなと感じるのが、実際に海外に住んだ経験です。

というのも、実は私は26歳から28歳までの2年間、アメリカ、ヨーロッパに流通研修に行き、現地の会社で働きながら勉強させていただいていたのですが、その2年間はホテルに宿泊せずにすべてホームステイをしていました。そこで、アメリカやヨーロッパのカルチャーを学ぶことができたのが、海外展開をする上で非常に役立ちましたね。

さらに、日本でコーヒーサービスを始めてから10数年アメリカに通って勉強していました。アメリカのカルチャーを知り、しっかりと準備をしてからアメリカでのビジネスをスタートさせられたというのも、ダイオーズの海外展開が順調に進んだ理由の1つだと思います。


加えて、海外展開をする上で意識したこととしては、新規事業の立ち上げは常に私が先頭に立って行ってきたことが挙げられます。

0から1を生み出すことは大変ですから、そこはやはりトップの仕事だと思っています。私の場合、アメリカでのビジネスを立ち上げたときは、逆に日本に通勤しながら、アメリカに住んだこともありましたね。

【Q2】「組織拡大の過程で経営者が感じる壁について」

平野:次に、会社を継続的に成長させるうえで過去に感じた壁とその壁をどのように乗り越えたのかについて伺います。

大久保:私の場合は、会社設立30周年の時に大きな試練を迎えましたね。

当時、ダスキンの事業は順調に実績を伸ばすことができていました。ところが、ダスキンの事業はフランチャイズ型であったこともあり、特に業務用の分野においては価格競争が激しくなってきてしまったんですね。

やがて、競合他社様が『うちはダイオーズさんの半額でやりますよ』などと営業するようになって。そうすると私たちは太刀打ちできませんので、そこでやむを得ず独立することになりました。

平野:会社設立から30年目にして、非常に大きな決断ですね。

大久保:その時はアメリカの事業が軌道に乗っていたので、日本で独立して成功するために最前線で頑張りましたよ。もう、それは生きるか死ぬかのときでしたから。


先ほどもお話ししましたが、こうした0から1を生み出す時や大変な時には、トップ自ら背中を見せて引っ張っていくことが大切だと思っています。そうして軌道に乗せた後は、しっかりと部下に引き継いでいく。そのような循環構造をつくることが、継続成長するために大事なことだと思います。

【Q3】「幹部層の教育や採用について」

平野:経営幹部層の採用や組織体制の悩みなど、人に関する悩みというのは多くの経営者が日々頭を悩ますところだと思います。幹部層の採用や教育についても、大久保様の経験を元にお話を伺ってもよろしいでしょうか?

大久保:そうですね。幹部層に関しては、外部からスカウトするというよりは基本的に社内の能力ある人をどんどん登用していって、その方が結果的に幹部になるというケースが多いです。もちろん、M&Aで統合した会社の中にも優秀な方はどんどん抜擢しています。

【Q4】「成功する経営者に感じる共通点について」

平野:約50年間、株式会社ダイオーズを経営し、成長させ続ける中で、様々な経営者様を見て来られたと思います。そうした中で、「こういう経営者はうまくいくな」と感じる成功する経営者の特徴がありましたら教えてください。

大久保:なかなか難しい質問ですね…。私は足元をきちんと固める事しかやってこなかったんですよ。どちらかというと、ニッチな分野を深堀りする経営をしてきました。

さらなる高みを目指して、1歩ずつ着実に


平野:最後にお伺いさせていただきたいのは、今後の展開です。

大久保:今は年商300億円ですけれども、これから2024年までに500億にしようという目標を掲げています。そのためには、やはり足元を固めることが何より大切であると思っています。

そういった中では、ダイオーズでは「10%の成長と、売上対比10%の利益を上げましょう」というのを創業時から経営指標として掲げています。これは、つまり急に大きく売上が上がるということはありませんが、逆に大きく減少することもないということです。
創業以来49年間で売上が前年比5%以上減少したのは1回しかありません。

時間をかけて、1歩1歩足元を固めていく。それが、私の経営です。


平野:具体的には、今後どのようなビジネス展開を考えておられますか?

大久保:今後もBtoBの継続サービスに特化して事業を展開して行きます。その上で、私たちの強みである全国のネットワークを活かした事業展開をして行きます。

具体的には、既存のお客様に対してさらに新しい価値を提供できるように、新商品、新サービス、事業開発や展開を、他社様とも組みながら進めていきたいですね。

例えば、今年始めた取り組みとしては、タニタ様とコラボレーションして「ヘルシーコーヒー」という商材の展開を開始しましたし、三菱ケミカルさんとダイオーズクリンスイという浄水器も開発しました。
このように他社様とコラボレーションができるようなビジネスチャンスがあれば、今後も是非させていただきたいと思っています。


一方で、アメリカでの事業展開に関しては、まだ50州中26州しかネットワークを築けていないので、2024年までに全米にネットワーク展開をするというのが目標です。

平野:以上でインタビューは終了となります。本日は貴重なご経験に基づいてお話しいただき、本当にありがとうございました。

大久保:こちらこそ、ありがとうございました。

編集・山崎

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