吉田電材工業株式会社
松本 匡史
POSTED | 2018.04.20 Fri |
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TAGS | 従業員数:101〜300人 業種:卸売業・小売業 創立:15年以上 決裁者の年齢:その他 商材:BtoB |
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78年間培ってきた確かな技術と独自の生産体制
知的財産の活用で、差別化できるものづくりを目指す。Topics
吉田電材工業株式会社 社長 松本 匡史氏のONLY STORY
【経歴】
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1973年、千葉県柏市出身。平成11年明治大学大学院農学研究科農芸化学専攻終了。
大学院では「植物の脳波」といわれる「葉面電位」の研究に没頭し、卒業後はキユーピー株式会社に入社。マヨネーズの量産工場で製造マンとしての基本を学ぶ。その後、アルプス電気に転職。アルプス電気が子会社として設立した、知的財産戦略支援コンサルティング会社「IPトレーディングジャパン株式会社」の創業期から参加、マーケティング部門を経たのち、コンサルティング部門の業務に従事。共著として、「知的財産管理実務ハンドブック(中央経済社)」及び「知財紛争トラブル100選(三和書籍)」の執筆にも関わる。
実は学生の頃から「アイデア・発想」に興味を持ち、アイデア研究部に所属していた。吉田電材工業に入社してからは、コーポレートスローガンを「アイデアでものづくりを進化する。」に定め、事業の競争力の源泉である「アイデア」を活用する会社にするべく邁進している。
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様々なものづくり企業に触れるうち、その経営に興味が。
私は明治大学を卒業していますが、当時はそれほど勉強熱心なわけでもない、ごく普通の大学生でした。しかし、農学部の研究室の研究テーマには非常に心惹かれ、大学院まで進学しました。
大学院卒業後に入社したキユーピーでは植物工場に関わる仕事がしたいと思っていたのですが、実際はマヨネーズの現場で業務に携わることになりました。
これが後に製造業を経営するうえで大変貴重な経験になりました。精神面から手法まで、製造現場で大事なことはすべてキユーピーで学んだといっても過言ではありません。そして、一方で、働きながら、以前より興味のあった弁理士関連の勉強を独学で始めることになります。
その当時資格の勉強をしている際に、小泉総理が知的財産で日本の企業の収益を高めようという国策を打ち出しました。その流れの中で、アルプス電気が知的財産の流通・活用のためのベンチャー企業を立ち上げるという記事が新聞に掲載されました。それを見て、私は「同じアイデアを活用する仕事でも、弁理士の様な仕事ではなく、アイデアをビジネスに結び付ける仕事が向いている。」という考えに至りました。
プレス発表のその日にアルプス電気に電話し、募集をしていないところを無理やり面接してもらい、入社することになりました。入社後、様々な技術系ベンチャー企業の知的財産戦略の支援業務を行う中で、技術系ベンチャー企業の経営者は技術は一流だが経営が不得意な場合も多いと気づきます。
はじめは将来的に吉田電材工業株式会社を継ぐことはあまり頭になかったんですが、このような、様々なモノづくり企業の社長と交流するうちに、次第にものづくり企業の経営自体に興味が湧いてきました。
78年間培ったネットワークを活かした独自の製造体制
この吉田電材という会社は私の祖父が創業したのですが、これまで日立関係をメインとした大手企業のものづくりを支える協力工場ビジネスを展開してきました。協力工場というとどの工場も似たような印象を受けるかもしれませんが、私たちには大きな特徴があります。
まず、さまざまなものづくりを社内で行っているのが1つの特徴です。一般的には、機械加工なら機械加工、樹脂成形なら樹脂成形と、ひとつの分野に特化する協力工場が多い中、当社は様々なものづくりを内作し、さらに独自のものづくりネットワークによって、自社でできないものづくりも商社的機能によって調達・提供することができます。極端なことを言えば図面が1枚あればすべて物を揃えることができ、完成品組立まで社内で手がけることができるのです。
例えば、大手の医療メーカーに納めているレントゲンの医療器は、当社で設計、開発、製造まで行っています。部品の調達から組立て完成まで、大手メーカーの完成外注工場として成長してきた当社が、ものづくりの幅を広げていく中で、いつしか自社ブランドの製品を製造するメーカーとして事業を展開するようになっていったのです。
去年の4月からは、吉田電材工業新潟事業所を株式会社ヨシデンとして分社化し、より専門特化しています。当社では「差別化」をキーワードに各分野で当社が強みを持てる事業を残し、そうでない事業は縮小してきました。たとえば、機械加工部門では顧客の要望に応じた加工機械に更新を進めるともに、加工が難しい難削材と言われる材料の加工にもフォーカスしています。
設計~部材調達~完成まで取り組める強み、そして他社にできない加工ノウハウなどの強みをより最大化させるべく、最近ではWEBマーケティングに力を入れています。当社の自社ブランド製品のひとつに「巻線機」という製造機械があります。価格帯は300〜4000万円ほどの製品なんですが、インターネット経由でのマーケティングを中心に、ネットからの引き合いとそこからのリピートがメインで事業が成り立っています。
また、この特長を生かして、さまざまなものづくりの製造機械を私たち自身で設計して、使って、生産を効率化しているという点も当社の特徴になります。自社の製造工程を自社設計の製造機械を開発して効率化を図っている企業は、中小企業では他にあまりないのではないでしょうか。
このような普段からの取り組みが、自社で産業機器の設計・開発を行う事業のトレーニングにもなっているといえるでしょう。
社内の雰囲気としては、家族が多いということが特徴的ですね。勤続40年、50年という人も多数いらっしゃいますし、その子供や妻、兄弟が同じ社内で働いていたりしますから。
こうした幅広い社員同士のコミュニケーションが円滑に進むよう、バーベキュー大会や花見、納涼祭、忘年会などのイベントを大切にしています。社員もそれを素直に楽しんでくれている印象があります。そういった社風のためか、離職率が低いことは私たち吉田電材工業株式会社の自慢です。
忍耐・努力・親和というのが当社の社訓ですが、忍耐と努力は個人的なものであるのに対して、人間同士のコミュニケーションの中から生まれる「親和」を大事にしています。
社員一人一人のアイディアが、知的財産そのもの
物作りの部品作りから組立、設計、自社ブランドと進んできて、次のステップとしてはやはり、知的財産の活用だと考えています。さまざまな形で知的財産を活用した経営をやっていくのが、今後のひとつの展望ですね。
例えば医療器に関して言えば、レントゲンは何十年も機能が変わらない製品なので差別化がなかなか難しい商品です。そういった医療器に関してはデザインで差別化をはかることを行っています。デザインにこだわると価格が高くなるので、デザイン重視で価格が高い商品の価値観を認めてもらう様なマーケティングも必要になってきます。
当社は「アイディアで物作りを進化する」というコーポレートスローガンを掲げているのですが、今の医療器も現状に満足するのではなく、次のステップでは知的財産を活用した差別化できる物作りを考えていかなければなりません。
例えば吉田電材工業も今年から始めますが、分社化した新潟の株式会社ヨシデンでは、10年以上、従業員がひと月に1人ひとつアイディアを出すルールを作っています。新潟の従業員は150人ほどいて、その150人が1ヵ月にひとつ必ず改善アイディアを出すんです。そうすると1ヵ月で150件、年間で1800件ものアイディアが生まれます。そのアイディアがいくらの価値があるのか算定して、素晴らしいアイディアに対しては表彰という形で従業員にフィードバックするという取り組みをずっと行っています。
こうしたアイディアは知的財産そのもの。社員の考えるノウハウやアイデアを、会社が積極的に従業員から買い取り、会社の財産として管理をしていく体制をこれから作っていこうと考えています。全社員がアイディアを出して、全員のアイディアを会社の競争力の源泉にしていくような姿を目指していきたいです。
最後に、若い世代に送りたい好きな言葉があります。
「好きこそ物の上手なれ」 「足踏みしてても、靴は減る」
まず、仕事は興味を持って楽しんで仕事に取り組む方が、嫌なことをやるよりも技術の習得やスキルの向上などに繋がり、それは結果的に会社にとってもプラスになります。
また、若いうちは苦労したり、我慢しなければならないこともありますが、初めの段階を過ぎたら、自分の仕事を好きになってほしいと思います。私自身も「自分が興味をもって取り組める仕事」を大事にしています。
その姿勢を貫いているからこそ、周りの人も面白がってついてきてくれる。そういう人たちと共に会社を成長させていくのが、これから叶えたい理想ですね。