Sop Moei Arts

磯村 真沙子

タイのカレン族の生活向上を目指す非営利プロジェクト

奥地ゆえの高コストをしのぐ高品質手製織物バスケット
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今回のインタビューは、タイの山岳地帯に暮らすカレン族のために活動する非営利組織Sop Moei Artsの磯村氏に、プロジェクトの目指すもの、現状と今後の課題などについてお伺いしました。

Sop Moei Arts マーケティング担当アドバイザー 磯村 真沙子氏のONLY STORY


【経歴】

1955年北海道室蘭市出身 東北大学理学部卒業 大学時代はバトミントン部
1978年日本IBM入社 初めての女性営業となり、金融機関(銀行)担当に配属。
1988年より銀行系システムの企画推進担当となり、主に国際資金決済システムの担当。
1991年より日系企業サポートとしてイタリアのミラノに駐在。
イタリアIBMの中で、現地IBM担当者を支援して日系企業とのビジネスを推進。その間に結婚し、1997年配偶者がタイのバンコクに転職(大手銀行のIT部門)するのを機会に日本IBMを退職してタイへ移住。
一時期タイIBMとコンサルタント契約で働くも、Social Businessにかかわりたいという長年の願望を実現することにして、タイの工芸関係プロジェクトを調査した結果、SopMoeiArtsと出会い、そのバンコクにおけるマーケティングと、バンコク店の立ち上げ運営をボランティアとして担当することとなった。

カレン族の栄養、衛生、教育改善のために


–まずSop Moei Artsの事業内容をお聞かせください。

磯村氏:私たちは、タイ北部の山岳地帯に暮らすカレン族の生活向上を目的に、彼ら手製のバスケットや織物を販売するプロジェクトを行なっています。
バスケットや織物の特徴は、何よりも品質に気を遣っていること。なぜかと言いますと、そもそもこれらの製品は高い価格設定をせざるを得無い環境で作られているため、その価格に見合った質の良い製品でなければお客様にご満足していただくことはできないからです。
例えば、彼らの生活に合わせた作業時間で製作されるため、生産管理が難しい。 さらに、生産地が奥地にあることから高い物流コストも加わるため、安価での商品提供はできません。
また、街に出て働くことに劣らない収入が得られるよう、工賃もフェアトレードをベースにしているんですね。これらの製作コスト・物流コストの理由から、必然的に価格も上がってしまうんです。
それでもお客様に喜んで買っていただけるよう、質の良い材料と丁寧な縫製、オリジナリティー豊富なデザイン、そして他にはない製品を作ることをポリシーとしていますし、製品については一流のものだと自負しております。

–実際に御社の製品をご購入したお客様からはどのような反応をいただきますか。

磯村氏:現在、弊社のお客様はタイ在住の日本人と外国人がほとんどで、それに加えて日本から購入の申し込みを少々いただいている現状です。大切な方へのプレゼントや結婚式の引出物や、法事の際に利用していただくことも多いですね。
そういったお客様からは、「長く使うことができ喜んでもらえる」「贈り物にはいつも必ず喜んでもらえるおたくの織物やバスケットが一番」といったお声をいただき、嬉しい限りです。

–先ほど、製品の販売を通して、カレン族の生活支援を行なっていると仰っていましたが、具体的にどういった面の向上、改善を目的とされているのでしょうか。

磯村氏:生活改善の大きなポイントは3つあります。まず健康を保つために栄養面を改善すること、次に伝染病や寄生虫を減らすために衛生を改善すること、そして最後に教育機会を増やすことです。
教育機会についていえば、多く子供たちが小学校までの教育しか受けられていないため、大きくなってもなかなかいい仕事に就くことができないという就職の問題にも繋がっているんです。
もちろん、街に出れば建築現場があって、単純な肉体労働には就けますが、私たちは教育によって就労機会のスタートラインを上げ、村を捨てずに伝統を継承しながら現金を得ることができる環境を作ることを目的としています。

アメリカ人がタイで始めたプロジェクト


–このプロジェクトはどういう形で始まったのでしょうか。

磯村氏:Sop Moei Artsはケント・グレゴリーというタイ生まれ、タイ育ちのアメリカ人が始めた非営利プロジェクトです。彼の両親はアメリカ人ですが、両親がボランティア活動でタイの田舎に在住している時に生まれたため、タイの国籍があります。 
そしてケントはアメリカで高等教育を受け、公衆衛生学を履修した後、この自分のスキルを求めている人のところへ行きたいと考えるようになりました。
やはり自分の原点であるタイがいいと思い、その中でもどこからのサポートも届いていないようなところがいいと奥地の山岳民族のところへ向かったそうです。そこから受け入れてくれる村を探し、言葉を覚えるところからはじめました。
当初は栄養と健康の改善を目指していましたが、この改善の仕組みを定着していくためには各家庭、特に女性がある程度の現金を持って栄養価の高い食物を購入できることが必要と考えました。そしてそれを「都会へ出稼ぎに行かずに」実現する手段として織物とバスケットの商品化を選びました。

–磯村様がこのプロジェクトに参加された経緯をお聞かせください。

磯村氏:私は大学の理学部を卒業後、IT大手の営業職に就き、それなりに楽しく仕事をしていましたが、結婚相手がタイで就職するために、会社を辞してタイへ移住しました。キャリアからタイでの就職も可能でしたが、あまりいい条件ではなかっため、それならばいっそ私がかつて考えていた社会貢献ビジネスに目を向けてみようと思いました。
その視点からタイを見てみると、織物やバスケットといった素晴らしい伝統製品があることに気がつき、調べていく中で出会ったSop Moei Artsの製品にとても惹かれたんです。
そして「こんな素敵なものを作っている人の話を聞きたい」と思い、ケントに会いに行きました。そこでプロジェクトの趣旨を聞き、マーケティングに困っている現状を聞くに及んで、私の営業・マーケティング経験と、日本で優れた織物やバスケットを見てきた審美眼が役に立つと思い、プロジェクトに参加させていただきました。

伝統と新しいものを融合し創造する


–将来の目標を教えてください。

磯村氏:90年代の日本やヨーロッパでのアジアン雑貨ブームの時期から比べると、現在は4割ほど売上が落ちているので、この数字を元に戻すことを直近の目標としています。
また、今は村で製作に従事する人も減っているので、どうにか需要と供給のバランスは取れていますが、今後は製作を希望する人が増えても、売上が増えない限り恒常的な仕事を保証できず、プロジェクトに参加してもらえなという問題があります。
この問題を解決するためには、バンコクやチェンマイの小売りだけでは限界があり、ネットや代理店など、安定した流通ルートを確立する必要があります。こうした新たなビジネスモデルに取り組むために、私自身もインタビューやメディアで新たなお客様の開拓に励んでいます。
その後の長期的な目標は、伝統と新しいものを融合し、創造する人たちのモデルであり続けることです。伝統の技は1度失われれば蘇らせることは至難の技になります。だからこそ、なんとしてでも伝統を残すためにも、この取り組みを続けていきたいと思います。

–読者のみなさんへメッセージをお願いします。

磯村氏:みなさんにお力添えをいただきたいことが2つあります。
ひとつがクラフトデザインについて。私たちの製品は、山岳民族固有の色や柄、プロジェクトリーダーのケントを中心とする欧米的な感性と美意識、それに日本人ボランティアによる日本的機能美のインプットが加えられ作られています。そのデザインについて協力してくださる方がいましたらぜひご連絡いただけたらと思います。
もうひとつが小売りに依存しない新たなマーケティングについてです。このプロジェクトと商品を多くの人に知ってもらうことができるビジネス、例えばアンテナショップのような形でご協力していただける方がいらっしゃいましたら、こちらもご連絡いただきたいです。
最後に、私たちの製品は会社のギフトや賞品、季節の贈り物などに最適ですので、企業の皆さま、個人の皆さまにもご利用いただきたいと思います。
品質とデザインには自信を持っており、お客様を失望させることは決してありません。ぜひ、日本の会社でもそうした用途でお使いいただきたいと考えています。

執筆=増田
校正=笠原

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