中小企業への営業活動を続けていると、以下のような悩みに直面することがあります。
- 成約率が低く営業リストが枯渇してきた
- 安定的に受注はできているものの単価が低く伸び悩んでいる
- 営業活動に見合うだけの利益が得られない
- 人材不足に陥って効率的な営業活動が求められる
これらの課題を解決する方法の1つに、大手開拓が挙げられます。大手企業は従業員数が多いため、契約に至れば売上げ(単価)が上がりやすいです。また、大手企業は部署や子会社、グループ会社の数も多く、サービスの横展開をしやすいという特徴もあります。
この記事では、大手企業開拓の方法や成功のポイントを詳しく解説します。
大手開拓をするメリット
大手開拓を行うメリットに、複数の商材を売り込む機会がある点が挙げられます。
例えば、顧客情報の管理などを行うSFAと、リード獲得を目的としたMA、契約書や見積書を管理するバックオフィスツールは、連携していた方が情報共有や業務進行をしやすくなります。同じプロセスを通過するのであれば、関連するシステムも入れ替える決定をする決裁者も少なくありません。そのため、自社の複数の商材を一度に導入してもらえる可能性があります。
また、導入済みのシステムを解約するのにも長い時間がかかるため、競合サービスにリプレイスされづらいという特徴もあります。サービスの利用期間が長期化すれば会社同士の信頼関係も構築しやすく、別の部署や子会社の決裁者を紹介してもらう機会が得られることもあります。
大手開拓を成功に導く方法
この項目では、大手開拓を成功させる3つの方法を紹介します。
- 自社のサービスで解決できる課題を洗い出す
- 企業の組織図を理解する
- リストを作成して進捗を管理する
自社のサービスで解決できる課題を洗い出す
大手開拓では、自社のサービスで解決できる課題を洗い出すことが重要です。課題を把握しておかなければ、自社の商材を導入するメリットをうまく伝えられず、提案の確度が下がります。また、商材が刺さりやすい企業に絞ってアプローチできるため、効率よく営業活動を行えます。
上場企業は四半期ごとに決算を発表し、四半期報告書を提出する義務があります。決算発表時に決算説明資料を公開する企業も多く、その資料には経営課題や減収要因などを記載していることが少なくありません。
これらの資料に目を通すことで、成長を阻害している要因やその解決に向けて何に取り組もうとしているのかを把握できます。
また、多くの大手企業はホームページで情報発信を行っています。そこから、自社の商材の訴求ポイントが見つかることもあります。
企業の組織図を理解する
大手企業の組織図を把握することも重要です。どの部署が意思決定を行うのか、決裁者は誰なのかを理解しましょう。アプローチすべき担当者が分かりやすくなり、提案が通りやすくなります。また、提案回数を少なくできるため、営業リソースのひっ迫を防げます。
事前にホームページを確認したり、担当者と会話をしたりして組織の構造を把握しておきましょう。
また、作成した組織図は定期的に更新することが重要です。大手企業は組織再編や人事異動が頻繁に行われ、それに伴ってキーマンが変更になることが少なくありません。最低でも年に一度は組織図を更新しましょう。
リストを作成して進捗を管理する
大手企業は契約成立までに長い時間がかかります。営業活動を細かく記録し、進捗状況を管理する必要があります。また、インサイドセールスやマーケティングチームなどが適切なアプローチを取れるように、社内で情報を共有することも求められます。
そのため、営業リストを作成して最新のステータスを記入することが望ましいです。営業活動の進捗状況を整理できるため、ダブルブッキングや同じ提案を繰り返すといったトラブルを防ぎやすくなります。次の提案をするタイミングも把握しやすくなるはずです。また、社内の情報共有も行いやすくなります。
営業リストには、提案の進捗状況や担当者の情報などを記録します。予算に余裕があればCRMなどの顧客管理ツールを活用して、営業活動を一元管理するのもおすすめです。
大手開拓に必要なアプローチ方法
大手開拓には切り口を変えたアプローチや提案が必要になります。関係者が多く、様々なタッチポイントが想定されるためです。
主なアプローチ方法として以下の6点が挙げられます。
- テレアポ
- 手紙営業
- 紹介
- オンラインセミナー・ウェビナー
- 自社メディアや自社のSNS
- ホワイトペーパー
①テレアポ
大手企業はテレアポのようなボトムアップアプローチは有効ではないケースが多いものの、アポイントの獲得に至る可能性があります。
大手企業へのテレアポで意識すべきなのは、相手に何らかのメリットを提示することです。メリットが明確に伝われば、受付を突破して担当者につないでもらえる可能性があります。
事前にターゲットの課題を把握し、分かりやすい提案資料を準備しましょう。また、自社の商材の機能や効果を整理して、簡潔に伝える練習をすることも重要です。
大手企業開拓を目的としたテレアポは、中小企業に比べて難易度が高いです。顧客の課題やサービスの特徴をよく知るインサイドセールスの担当者が、直接電話をかけることも有効な手段と言えます。
②手紙営業(CXOレター)
手紙営業は大手企業の決裁者に直接送付できるというメリットがあります。テレアポやメール営業の場合は、窓口となる担当者とつながりを持ち、サービスの提案、上司の決裁というステップを踏むことになり、長い時間がかかります。
しかし、手紙は決裁者に直接送付できるうえに、読まれずに破棄される可能性も低いです。また、手書きで手紙を作成すれば誠意が伝わるため丁寧な印象を与えられます。ターゲットの決裁者が分かっている場合には、効果的な手段です。
ただし、手書きの手紙作成に時間がかかることや、送付した後のフォローコールが必要であること、相手の反応がわかりづらいといったデメリットがあります。営業リソースが十分である場合に実施することが望ましいでしょう。
手紙営業のリソースが足りない場合には、代行サービスを利用するのがおすすめです。営業のプロが手紙を作成するため、アポイントにつながりやすいです。
③紹介
知人の紹介はリファラル営業とも呼ばれ、大手企業の開拓でよく活用される方法です。大手企業の決裁者は、広範な人脈を築いていることが多く、人との信頼関係を重視しています。
そのため、知人からの紹介であれば、提案内容を信頼してもらいやすい傾向があります。また、決裁者に直接アプローチもできるため、成約までスムーズに進みやすいです。
大手企業との人脈を作るのに効果的な手段として、営業顧問を雇うことが挙げられます。多数のクライアントを抱える経営コンサルティング会社の経営者などを顧問として招き入れることにより、複数の企業に効率よくアプローチできます。
④オンラインセミナー・ウェビナー
オンラインセミナー・ウェビナーも大手開拓には効果的な手段です。企業は何らかの課題を必ず抱えており、中間管理職や決裁者はその解決法を求めています。セミナーの内容と企業の経営課題が合致していれば、参加してもらえる可能性は十分にあります。
オンラインセミナーを成功させるポイントは2つあります。1つは企業の経営課題に寄り添ったテーマを設定すること、もう1つは人を呼べる知名度の高い講師をプログラムに入れることです。
近年の大手企業の課題として、以下のようなものが挙げられます。その解決策を提案するセミナーは参加者を集めやすい可能性があります。
- 少子高齢化による特定のマーケットの縮小
- 燃料高や資源高を背景とした粗利率の低下
- 価値観の変化で難易度が上がった人材教育や採用
- 生産性を上げるためのデジタル化の推進
- CO2削減に向けた取り組みの強化
- 女性の役員や管理職比率を効果的に上げる方法
オンラインセミナーであれば、相手がどこにいても参加できるなどメリットがあります。
オンライン・オフラインに限らず、セミナーでは説明資料の作成が不可欠です。作成時のコツは3つあります。
- 1つのスライドに載せるテーマは1つまで
- 文章ではなく図やグラフで伝える
- 1つの文章の長さは、40字~60字
1枚のスライドに複数のテーマを入れてしまいがちですが、情報量は可能な限りシンプルにしましょう。より内容が簡潔にまとまりやすくなります。また、図やグラフを使うと、視覚的に理解しやすいです。文章を入れる場合は、参加者が登壇者の話す内容に集中できるように最大でも60文字に留めることをおすすめします。
⑤SNSやオウンドメディア
SNSによるネットワークの構築も重要です。大手企業はSNSを運用していることがあり、DMなどで営業をかければアポイントを獲得できるかもしれません。
中でも効果的なのはFacebookです。Facebookは実名登録が基本で、管理職や経営者の利用者が多いと言われています。Facebookでターゲットとなる企業の担当者を探し、メッセージを送ってアプローチしましょう。また、SNSで自社の商材の情報を発信することも大切です。興味を持った企業からアプローチしてもらえる可能性があります。
また、オウンドメディアの構築も有効手段の1つです。自社のサービスの宣伝だけでなく、他社の利用事例など役立つ情報も発信できるため、商材への信頼性を高められます。
⑥ホワイトペーパー
ホワイトペーパーを作成することも効果的です。ホワイトペーパーは企業の課題を解決する方法を分析し、ソリューションを紹介するものです。ホワイトペーパーの中で自社商材を訴求すれば、そこから問い合わせが生まれる可能性があります。
ホワイトペーパーは、オフィシャルホームページやオウンドメディアなどに掲載する方法が一般的です。ダウンロードをする際に、メールアドレスや電話番号を入力するフォームを設ければ、担当者に直接アプローチできます。
大手開拓を成功させるためのポイント
最後に、大手開拓を成功させるためのポイントを解説します。
効率よく営業できる組織づくりをする
大手開拓はリードタイムが長く、営業に多くのリソースが必要になります。そのため、営業部内で効率よく企業にアプローチできる体制を整えましょう。
まずはインサイドセールスやフィールドセールスなどのチームを作り、業務を分担しましょう。担当者の負担が軽くなり、効率よく営業を行えます。また、大手開拓では他の部門との連携も必要不可欠です。マーケティングやカスタマーサクセス部門とは提案の進捗状況などを共有することを意識しましょう。
ただし、チームを作ると営業が属人化する恐れがあります。提案内容や進捗などは常に部署全体で共有することが求められます。営業管理ツールなどを利用して、社内で情報共有できるように工夫することが重要です。
企業の課題に合わせて提案する
大手開拓を成功させるためには、課題に合わせて企業ごとに提案内容を変えることが重要です。同じ提案を複数の企業に行っても、ニーズにマッチせず訴求力が低くなります。
企業の抱える課題を分析・把握したうえで、提案内容を考えることが大切です。また、アプローチ方法も適時見直すなどの工夫をしましょう。テレアポで効果が出なければ、手紙を送るなどして様々な角度からコンタクトを試みましょう。担当者の目に留まりやすくなるため、アポイントを獲得できる可能性が上がります。
アプローチする企業は適宜見直す
アプローチする企業を定期的に改めることも重要です。
確度が低い顧客にアプローチを続けても、契約には至りません。また、契約に至らない状態が続けば、従業員のモチベーションが低下し、パフォーマンスが下がる可能性もあります。
そのため、リードタイムが長すぎるなどの問題があれば、他の企業にアプローチするとよいでしょう。自社の商材との親和性が高い企業を中心に営業をかけると効果的です。
大手開拓で営業部の売り上げをアップさせよう
大手開拓の営業活動は長期に及ぶものの、受注につながると別部署や子会社、取引先などへと導入が広がる可能性があります。念入りに準備を進め、獲得したリードを丁寧に捌いていくことが大切です。
もし、自社のみで大手開拓の管理や進行が難しく感じる場合や、現実的に手を出せない場合は、外部の営業代行を検討するのも有効な手段です。既に外部の営業従事者の持つ人脈やコネクションに頼ることで、営業の工数を大幅にカットできる可能性があります。