監修:平野 哲也(株式会社オンリーストーリー 代表取締役)
今の取引先からの売上だけでは目標に届かないときは、取引の無い会社から新しく受注を取る必要があります。
新規顧客開拓とは、これまで取引の無い会社に働きかけ、初めての受注につなげる営業活動です。
手法の選び方と、受注の目標から連絡する会社の数を逆算する計算、進める手順を確認しましょう。
新規顧客開拓とは

新規顧客開拓とは、自社の商品やサービスをまだ使っていない会社を見つけ、商談を経て、取引を始めてもらうまでの営業活動です。
すでに取引のある会社から追加の注文をもらう営業と違い、相手は自社と取引したことが無いため、まず会って話を聞いてもらう約束(アポ)を取るところから始めます。
新規顧客開拓の手法は、自社から相手に連絡するアウトバウンドと、相手からの問い合わせを待つインバウンドに分けられます。
紹介や交流会のように、人のつながりを通して相手と会う手法もあります。
新規顧客開拓の手法と選び方
新規顧客開拓の手法は、自社から連絡する、問い合わせを待つ、人のつながりを使うの3つに分け、期限と会いたい相手に合わせて選びます。
- 自社から連絡する手法(アウトバウンド):電話、手紙、問い合わせフォーム、メール
- 問い合わせを待つ手法(インバウンド):検索で見つけてもらう記事(SEO)、Web広告、展示会、セミナー・ウェビナー
- 人のつながりを使う手法:既存顧客や知人からの紹介、交流会、決裁者マッチング
3つの手法の向いている場面と、気をつけることは次のとおりです。
| 手法 | 向いている場面 | 気をつけること |
|---|---|---|
| 自社から連絡する | 狙う会社が決まっていて、連絡の数を自社で決めてすぐに始めたいとき | アポが取れるのは連絡した会社の一部なので、多くの連絡先が要る |
| 問い合わせを待つ | 自社の商品を探している会社から、続けて問い合わせを集めたいとき | 記事は検索結果に表れるまで時間がかかり、広告は出すのをやめると、広告からの問い合わせも止まる |
| 人のつながりを使う | 紹介を頼める相手や、決裁者が集まる場があるとき | 会える数は、紹介してくれる人や、場の参加者・登録者の数で決まる |
Googleは、サイトの変更が反映されるまでに数時間から数か月かかることがあり、検索結果への影響は数週間待ってから確かめるよう勧めています(2026年10月時点)。
出典:Google 検索セントラル「検索エンジン最適化(SEO)スターター ガイド」
期限までに商談の数が要るときは自社から連絡する手法、時間をかけて問い合わせが続く仕組みを作るときは問い合わせを待つ手法、決裁者に会いたいときは人のつながりを使う手法を、中心にします。
楽楽メールマーケティングが、従業員300名以下のBtoBの中小企業で営業の管理職をしている300名に聞いた調査では、新規開拓のために実施している手法は「既存顧客や知人からの紹介」が60.7%で最も多く、次いで「代表電話への架電や飛び込み営業」が30.7%でした(2025年10月)。
最も商談につながっている手法に限ると、「紹介」が52.0%を占め、ほかの手法はいずれも12%以下でした。
出典:楽楽メールマーケティング(株式会社ラクス)「中小企業の新規開拓に関する実態調査」
紹介は、商談につながっている手法として最も多く選ばれた一方で、件数は紹介してくれる人しだいで、自社だけでは増やせません。
紹介だけでは目標の数に届かない分を、連絡の数を自社で決められる手法で補います。
受注の目標から、連絡する会社の数を逆算する

連絡する会社の数は、受注の目標を、受注率、商談化率、アポ率の順に割って逆算します。
受注率は商談のうち受注できた割合(成約率)、商談化率はアポのうち商談に進んだ割合、アポ率は連絡した会社のうちアポが取れた割合です。
次の例の数字は、計算の仕方を示すための仮の数字です。
必要な商談の数 = 受注の目標 ÷ 受注率
必要なアポの数 = 必要な商談の数 ÷ 商談化率
連絡する会社の数 = 必要なアポの数 ÷ アポ率
例:1か月に新規顧客を2社増やしたい。受注率25%、商談化率80%、アポ率2%のとき → 商談8件、アポ10件、連絡する会社500社
同じ例で、アポ率が1%なら → 連絡する会社は1,000社
例のアポ率は、オンリーストーリーが延べ400社以上の手紙と電話の支援で目安にしている1〜2%に合わせています。
計算で出た連絡の数に、連絡先の一覧や連絡する人手が足りないときは、紹介のように商談につながりやすい手法を足すか、狙う相手を見直します。
受注率と商談化率は、自社の過去の商談の記録から出します。
成約率は、人によって大きく違うためです。
HubSpot Japanが、法人営業をしている企業の経営者・役員、営業の責任者、営業の担当者に聞いた調査では、商談の成約率(成約数÷商談数)の平均は42%で、回答は「51〜60%」(17%)と「21〜30%」(16%)が上位でした(2025年10月)。
出典:HubSpot Japan「日本の営業に関する意識・実態調査2026 データ集」
記録が無いときは、少ない数の会社に連絡して実際の割合を出し、計算をやり直します。
楽楽メールマーケティングの「中小企業の新規開拓に関する実態調査」では、新規開拓を評価する指標(KPI)を明確に設定していない人が39.0%でした(2025年10月)。
出典:楽楽メールマーケティング(株式会社ラクス)「中小企業の新規開拓に関する実態調査」
逆算した商談・アポ・連絡の数を毎月の目標にすると、どの段階の数が足りないかを月ごとに確かめられます。
新規顧客開拓の進め方
新規顧客開拓は、狙う相手を決める、連絡先の一覧を作る、手法を選んで少ない数で試す、数字を記録して見直す、の4つの手順で進めます。
手順1 今の取引先の共通点から、狙う相手を決める
狙う相手は、今の取引先のうち、取引の額が大きく、長く続いている会社の共通点から決めます。
同じ条件の会社には、同じ理由で受注できる見込みがあるためです。
次の質問の答えを、営業の記録と、営業の担当者への聞き取りで集めます。
「今の取引先のうち、取引の額が大きく、長く続いている会社は、どの業種で、従業員は何名くらいか」
「その会社は、どんな課題があって、当社に依頼したか」
「導入を決めたのは、誰(役職)か」
「初めて会ってから受注するまでに、何回会い、何か月かかったか」
「失注した会社や、取引がすぐに終わった会社には、どんな共通点があったか」
答えを、狙う会社の条件(業種・従業員数・地域)と、会う相手(役職)にまとめます。
狙う相手を「従業員〇名以上の〇〇業で、〇〇に課題がある会社の〇〇(役職)」のように1文で言えるようにしておくと、紹介を頼むときにも、そのまま伝えられます。
手順2 狙う会社の連絡先の一覧を作る
連絡先の一覧は、名刺・過去の問い合わせ・失注した会社のように接点のある会社から作り始め、足りない分を、会社のサイトなどで公開されている情報で足します。
接点のある会社には、名刺交換や問い合わせのときの話をきっかけに連絡できるためです。
一覧には、次の項目を入れます。
- 会社名・業種・従業員数・地域
- 会う相手の部署と役職、連絡先
- 連絡した日と手法、結果(アポ・断られた理由)、次に連絡する日
メールで連絡するときは、特定電子メール法(2026年10月時点)で、送れる相手と書く内容が決まっています。
原則として、あらかじめ送信を求めた相手か、送ることに同意した相手にだけ送れます。
例外として、名刺などの書面でアドレスを知らせてくれた人や、アドレスを公表していて、送らないよう求めていない会社などにも送れます。
メールには、送信に責任を持つ会社の名前と、受信を断るための連絡先などを書きます。
出典:総務省・消費者庁「特定電子メールの送信等に関するガイドライン」
手順3 手法を選び、少ない数の会社で試す
手法は、逆算した連絡の数と期限に合わせて選び、はじめは少ない数の会社で試します。
試した結果から自社のアポ率と商談化率が分かり、必要な連絡の数を計算し直せるためです。
2つ以上の手法を同時に試すときは、どの手法から取れたアポかを一覧に書き、手法ごとに結果を分けます。
手順4 数字を手法ごとに記録し、毎月見直す
手法ごとに、連絡した数・アポ・商談・受注の数と、かかった費用を記録し、毎月見直します。
新規顧客1社あたりにかかった費用(顧客獲得単価)は、手法にかかった費用を受注した会社の数で割って出し、手法どうしで比べます。
すぐに商談にならなかった会社も、断られた理由と次に連絡する日を一覧に書いておきます。
楽楽メールマーケティングの「中小企業の新規開拓に関する実態調査」では、すぐに商談にならない見込み客に続けて連絡することを「特に行っていない」と答えた人が40.7%でした(2025年10月)。
出典:楽楽メールマーケティング(株式会社ラクス)「中小企業の新規開拓に関する実態調査」
断られた理由が時期や予算のときは、相手の状況が変わってからもう一度提案できるので、一覧から消さずに、次に連絡する日を決めておきます。
決裁者に直接会って新規顧客を増やす方法
決裁者に直接会って新規顧客を増やすには、電話で受付から決裁者につないでもらう方法に加えて、決裁者同士が会える場を使います。
オンリーストーリーの架電支援では、電話をかけたうち決裁者につながった割合の目安を10%に置いています。
電話だけでは、決裁者と話せる数には限りがあります。
オンリーストーリーが、決裁者マッチングの商談を通じて約1,000名の決裁者に聞いた調査では、業種と役職のどちらで分けても、新規開拓が課題の1位でした。
代表・CEOの74%、取締役・役員の77%、部長・マネージャーの89%が、新規開拓を課題に挙げています。
(出典:株式会社オンリーストーリー「決裁者約1,000名のリアル購買ニーズ調査レポート」2026年5月)
調査に答えた決裁者の多くは、自社の新規開拓を課題にしています。
決裁者と会うときは、自社の商品の説明より先に、紹介できる相手や、自社で成果の出た進め方のように、相手の新規開拓に役立つ話をします。
売り込むだけの面談にせず、相手にも会う理由を作るためです。
オンリーストーリーが運営する決裁者マッチングは、審査を通過した企業の決裁者同士が直接つながれる仕組みです。
12年で築いた8,000名以上の決裁者ネットワークの中で、新しい出会いを求める相手と対等な入口から会えます。
一方で、商材の単価が低い場合や担当者レベルで決裁が完結する商材では、効果が出にくい傾向があります。
まとめ
新規顧客開拓は、自社の商品やサービスをまだ使っていない会社を見つけ、取引を始めてもらうまでの営業活動です。
手法は、自社から連絡する、問い合わせを待つ、人のつながりを使うの3つに分け、期限と会いたい相手に合わせて組み合わせます。
連絡する会社の数は、受注の目標を受注率・商談化率・アポ率の順に割って出し、手法ごとの記録で毎月見直します。
決裁者に会いたいときは、受付を通す電話だけに頼らず、決裁者同士が会える場も使いましょう。
よくある質問
Q. 新規開拓の営業はきつい仕事ですか
A. アポにならない連絡が多い仕事なので、きついと感じる場面はあります。
オンリーストーリーが手紙と電話の支援で目安にしているアポ率は1〜2%で、連絡した相手の多くはアポになりません。
断られた理由を記録し、狙う相手と伝える内容を見直す材料にすると、断られた連絡も次に生かせます。
Q. 新規顧客開拓に使える補助金はありますか
A. 小規模事業者持続化補助金(一般型・通常枠)は、販路開拓などの取り組みの経費の一部を、上限50万円・補助率3分の2で補助します(2026年10月時点)。
対象は、常時使用する従業員が5人以下(宿泊業・娯楽業を除く商業・サービス業の場合)などの小規模事業者です。
第20回は、申請の締切が2026年12月15日の予定で、申請に要る事業支援計画書(様式4)の発行の受付は、その前の12月4日に締め切られます。
出典:小規模事業者持続化補助金事務局「小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠> 第20回公募 公募要領」
Q. 既存顧客と新規顧客の配分はどう決めますか
A. 売上の目標から、今の取引先で見込める売上を引いた残りを、新規顧客開拓で増やす分にします。
今の取引先の売上は、過去の取引の続き方から見込みます。
足りない額を新規顧客の受注の数に直し、連絡する会社の数を逆算します。
Q. 新規顧客開拓は外部に任せられますか
A. 任せられます。
電話でアポを取るならテレアポ代行、見込み客への連絡から任せるならインサイドセールス代行、商談まで任せるなら営業代行があります。
任せる前に、狙う相手と、アポとして受ける条件を決めておくと、代行会社と基準をそろえやすくなります。
この記事の監修者

平野 哲也(ひらの てつや)
株式会社オンリーストーリー 代表取締役
BtoB営業と決裁者マッチングの領域に12年間携わり、決裁者同士をつなぐマッチングサービスを運営。
累計26億円の資金調達を実施し、「ベストベンチャー100」にも選出されている。
「つよいい会社をつくる」を掲げ、経営の中でのしくじりや営業の現場で得た知見を発信中。



