監修:平野 哲也(株式会社オンリーストーリー 代表取締役)
目的と続け方を決めずにオウンドメディアの記事を書き始めると、成果が出ているかを判断できず、続けるかどうかも決められません。
オウンドメディアは、目的と記事のテーマ、体制、サイトの作り方を決めて計画を1枚にまとめ、公開後は半年ごとに見直す手順で立ち上げます。
営業が受ける質問から記事のテーマを決める方法と、計画書の記入例、費用の見積もり方を確認しましょう。
オウンドメディアとは

オウンドメディアとは、「自らが所有するメディア」という意味で、企業が自ら発信する自社のサイトや広報誌、パンフレットなどを指します。
BtoBの集客で立ち上げるのは、自社のサイトに記事を載せていくWebのメディアで、見込み客に検索などで記事を見つけてもらい、問い合わせや商談につなげます。
記事は公開した後もサイトに残るため、今すぐ買う予定の無い相手とも、検討が始まるまで接点を持ち続けられます。
広告・展示会・決裁者マッチングとの違い
見込み客との接点を作る手段には、オウンドメディアのほかに、Web広告、展示会、決裁者マッチングなどがあり、向いている場面がそれぞれ違います。
| 手段 | 向いている場面 | 気をつけること |
|---|---|---|
| オウンドメディア | 検討に時間がかかる商材で、今すぐ買う予定の無い相手とも接点を持ち続けたいとき | 記事が検索結果に出るまでに時間がかかるため、半年以上続ける前提で計画する |
| Web広告 | すぐに問い合わせを集めたいとき | 広告を止めると、広告からの問い合わせも止まる |
| 展示会 | 同じ業界の相手と、短い期間で多くの名刺を交換したいとき | 名刺を交換した相手への連絡を、展示会の後も続ける |
| 決裁者マッチング | 決裁者に直接会って提案したいとき | 会える相手は、そのサービスに登録している決裁者に限られる |
今月の商談を増やしたいなら広告や展示会、決裁者と直接話したいなら決裁者マッチングが合います。
オウンドメディアは、ほかの手段の代わりではなく、今すぐ買う予定の無い相手との接点を保つ手段として組み合わせます。
オウンドメディアの立ち上げ手順

オウンドメディアは、目的と追う数字を決める、営業の質問からテーマを決める、体制を決める、サイトの作り方を選ぶ、計画を1枚にまとめる、公開して半年ごとに見直す、の6つの手順で立ち上げます。
手順1 目的と、追う数字を決める
最初に、オウンドメディアで何を増やしたいかを1つに決め、その結果を表す数字を決めます。
オンリーストーリーが決裁者約1,000名から集めた調査では、業種・規模・役職のどの切り口で見ても、課題の1位は新規開拓でした。
(出典:株式会社オンリーストーリー「決裁者約1,000名のリアル購買ニーズ調査レポート」2026年5月)
新規の顧客を増やすことが目的なら、追う数字は、記事が読まれた回数ではなく、記事から来た問い合わせのうち商談になった件数にします。
ただし、記事が検索結果に出始めるまでは問い合わせが少ないため、公開から半年までは、公開した本数と、検索結果に表示された回数を追います。
最初の半年に追う数字と、半年後から追う数字を、始める前に分けて決めておきます。
早い時期から商談の件数だけで判断すると、記事が読まれ始める前にやめることになるためです。
手順2 営業が受ける質問から、読者と記事のテーマを決める
記事の読者は、営業がふだん商談で会う相手に絞り、テーマは、その相手が営業に聞く質問から決めます。
営業が受ける質問は検討中の相手が実際に知りたいことなので、答える記事を書けば、同じ疑問を検索で調べている別の相手にも読まれるためです。
営業担当者に、直近の商談で聞かれた質問と失注した理由を書き出してもらい、次の例のように記事のテーマに直します。
「料金はいくらくらいですか」→ 料金の決まり方と、見積もりの比べ方
「他社のサービスと何が違いますか」→ 選ぶときに比べる点の一覧
「導入までにどのくらいかかりますか」→ 導入の流れと、社内で準備すること
「社内の稟議をどう通せばいいですか」→ 費用対効果の計算の例と、稟議書に書く項目
「うまくいかない会社は、どこでつまずきますか」→ よくある失敗と、その防ぎ方
「当社と同じ業種でも使えますか」→ 業種ごとの使い方と事例
失注した理由「上司に説明しきれなかった」→ 決裁者に説明するときの資料の作り方
1つの質問に1本の記事で答える形にすると、営業が商談の前後に、その記事を相手に送って使えます。
手順3 体制を決め、社内に残す仕事を分ける
体制は、記事のテーマ決めと公開の判断を社内に残し、執筆やサイトの保守は外に任せてもよい形にします。
仕事ごとの分け方は、次のとおりです。
| 仕事 | 社内か外か | 理由 |
|---|---|---|
| 目的と追う数字を決める | 社内 | 事業の計画と合わせて決めるため |
| 記事のテーマを決める | 社内(営業担当者も入る) | 顧客が聞く質問は、営業の現場にあるため |
| 取材と事実の確認 | 社内 | 自社の事例や数字を正しく書くため |
| 執筆と編集 | 外に任せてもよい | 書き方の決まりを渡せば、書く人が替わっても質をそろえられるため |
| サイトの構築と保守 | 外に任せてもよい | サーバーやCMSの専門の知識がいるため |
| 公開の判断 | 社内の責任者1人 | 決める人を1人にすると、承認を待つ時間が短くなるため |
株式会社日本SPセンターが、コンテンツマーケティングの実務者65名に聞いた調査(2025年11月〜2026年1月)では、B2Bの36名のうち、専任のメンバーが「2〜5名」と答えた人が41.7%で最も多く、「0名(専任なし)」も27.8%いました。
出典:株式会社日本SPセンター「CM-SURVEY 2025」
専任の担当者がいなくても、記事のテーマと公開の判断を受け持つ責任者を1人決めておきます。
公開を決める人がはっきりしていれば、兼任の担当者でも、記事を出し続けやすくなるためです。
手順4 サイトの作り方を選ぶ
サイトの作り方は、社内に設定と更新を続けられる人がいるかで、自社でWordPressを入れる、クラウド型のCMSを使う、制作会社に頼む、の3つから選びます。
| 作り方 | 向いている場面 | 気をつけること |
|---|---|---|
| 自社でWordPressを入れる | 社内に、サーバーの設定と、本体やプラグインの更新を続けられる人がいるとき | 更新を受け持つ人を決め、担当が替わっても続けられるようにしておく |
| クラウド型のCMSを使う | 社内に、サイトの技術に詳しい人がいないとき | 毎月の利用料と、契約をやめるときに記事を持ち出せるかを確かめる |
| 制作会社に頼む | デザインや機能を、自社に合わせて作り込みたいとき | 公開した後の記事の追加や修正を、自社でできる作りにしてもらう |
どの作り方でも、Googleが無料で提供するSearch ConsoleとGoogle アナリティクスを入れておきます(2026年10月時点)。
Search Consoleでは、サイトが検索結果に表示された回数(インプレッション数)、クリックされた回数、平均掲載順位を確かめられ、最初に開く画面には過去3か月間のデータが表示されます(2026年10月時点)。
出典:Google「検索パフォーマンス レポート(検索結果): 概要と基本設定」
問い合わせフォームで名前やメールアドレスを集めるときは、個人情報の利用目的を、送信の前に相手に示します。
個人情報保護法では、書面(電磁的記録を含む)に書かれた個人情報を本人から直接取得するときは、あらかじめ本人に利用目的を明示しなければなりません(2026年10月時点)。
個人情報保護委員会のガイドラインは、ネット上で取得するときは、送信ボタンなどを押す前に利用目的が本人の目に留まるよう、置き場所に気をつけることが望ましいとしています。
出典:個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」
手順5 計画を1枚にまとめ、社内の合意を取る
手順1〜4で決めたことは、公開の前に1枚の計画書にまとめ、経営者や営業の責任者と合意しておきます。
続けるかを決める時期と、そのときに見る数字を先に決めておけば、成果が出る前に、印象で打ち切りを決めずに済むためです。
次の記入例の業種と数字は、書き方を示すための仮のものです。
目的:記事から来る問い合わせを通して、新規の商談を増やす
読者:従業員50〜300名の製造業で、生産管理の見直しを任された部長
テーマ:営業が商談で受ける質問(料金、導入までの期間、他社との違い、稟議の通し方、よくある失敗)
公開の計画:最初の3か月で12本、その後は月に4本
公開から半年までに追う数字:公開した本数、検索結果に表示された回数
半年後から追う数字:記事から来た問い合わせの件数と、そのうち商談になった件数
体制:責任者1名(営業部長が兼任)、テーマ出しは営業担当者3名、執筆は外注
費用:記事の外注費(月4本分)、サイトの利用料、社内の担当者の時間(週5時間)
見直す時期:公開から6か月後と12か月後
続け方の決め方:12か月後に、1件の商談あたりの費用をほかの手段と比べる
手順6 記事を公開し、半年ごとに見直す
記事を公開したら、半年ごとに、計画書で決めた数字を見て、続け方を決めます。
Googleは、サイトの変更が検索結果に反映されるまでには、数時間で済むものも数か月かかるものもあるとして、一般的には数週間待ってから、良い影響があったかを確かめるよう勧めています。
出典:Google「Google 公式 SEO スターター ガイド」
生成AIで記事の下書きを作るときも、公開の前に、人が事実を確かめます。
Googleは、生成AIなどを使って、ユーザーにとっての価値を加えずに大量のページを作ると、スパムに関するポリシーに違反するおそれがあるとしています(2026年10月時点)。
生成AIの出力には不正確な情報が含まれることがあるため、公開する前に手作業で事実を確かめることが重要だともしています。
出典:Google「ウェブサイトで生成 AI によるコンテンツを使用するための Google 検索のガイダンス」
半年ごとの見直しでは、次の項目を確かめます。
公開した本数は、計画どおりか
営業がよく受ける質問のうち、まだ記事で答えていないものはどれか
検索結果に表示された回数は、半年前より増えているか
問い合わせが来たのは、どの記事からか
記事から来た問い合わせのうち、商談になったのは何件か
営業が商談の前後に、記事を相手に送って使ったか
表示された回数が増えないときはテーマを営業の質問に近づけ、表示が増えても問い合わせが無いときは、記事の中の問い合わせへの案内を見直します。
オウンドメディアの立ち上げにかかる費用
オウンドメディアの費用は、サイトを作って保つ費用、記事を作る費用、社内の担当者の時間の3つで、外に任せる範囲によって大きく変わります。
費用の内訳
費用ごとの中身と、抑え方は次のとおりです。
| 費用 | 中身 | 抑え方 |
|---|---|---|
| サイトの費用 | 構築費、サーバーやCMSの利用料、保守の費用 | 会社のサイトの中に置き、サーバーと保守を1つにまとめる |
| 記事の費用 | 執筆・編集・取材・画像の外注費 | テーマ出しと事実の確認は社内でし、執筆だけを外に任せる |
| 社内の時間 | テーマ出し、取材への協力、原稿の確認、公開の判断 | 営業の質問を集める時間を、ふだんの営業会議の中に取る |
株式会社日本SPセンターがコンテンツマーケティングの実務者65名に聞いた調査では、2026年度の年間予算は、B2Bの36名のうち「100万円未満」が41.7%で最も多い一方、1,000万円以上も合わせて約30%ありました。
出典:株式会社日本SPセンター「CM-SURVEY 2025」
予算は会社によって大きく違うため、金額の相場より、自社が外に任せる範囲から見積もります。
1件の商談あたりの費用に直して比べる
オウンドメディアの費用は、記事から生まれた商談の件数で割って、1件の商談あたりの費用に直し、ほかの手段と比べます。
次の例の金額と件数は、計算の仕方を示すための仮の数字です。
1か月の費用 = 記事の外注費 + サイトの利用料 + 社内の担当者の時間を金額に直したもの
1件の商談あたりの費用 = 1か月の費用 ÷ 記事から来た問い合わせのうち、商談になった件数
例:外注費20万円(月4本)+ サイトの利用料1万円 + 社内の時間9万円 = 1か月30万円
公開から半年の月:問い合わせ2件、商談1件 → 1件の商談あたり30万円
公開から1年の月:問い合わせ10件、商談5件 → 1件の商談あたり6万円
記事は公開した後もサイトに残るため、半年ごとに計算し直し、1件の商談あたりの費用が下がっているかを確かめます。
広告や展示会の費用も1件の商談あたりに直すと、どの手段にいくら使うかを、同じ物差しで決められます。
決裁者との商談につなげたいとき
記事から決裁者との商談を増やしたいときは、記事で集めた問い合わせに加えて、決裁者に直接会える経路も使います。
オンリーストーリー代表の平野は、決裁者が買うときには、「出会って→相談して→信頼して→買う」という流れがあると話しています。
平野は、ほかと違いを出しにくいサービスでは、「この人だから」と選んでもらう、「Who(誰)」をベースとしたマーケティングを勧めています。
記事にも、代表や担当者の名前と考えを載せておくと、決裁者に会う前に、どんな人がいる会社かを知ってもらえます。
決裁者に会った後は、相手の質問に答える記事を送ると、次に会うまでの間も接点を保てます。
オンリーストーリーが運営する決裁者マッチングは、審査を通過した企業の決裁者同士が直接つながれる仕組みです。
12年で築いた8,000名以上の決裁者ネットワークから、担当者を経由せずに決裁者と会えます。
一方で、商材の単価が低い場合や、担当者の段階で決裁が終わる商材では、効果が出にくい傾向があります。
まとめ
オウンドメディアは、企業が自ら持ち、情報を発信するメディアで、BtoBでは、今すぐ買う予定の無い相手とも記事で接点を保つために使います。
立ち上げは、目的と追う数字、営業の質問から決めるテーマ、体制、サイトの作り方を決めて1枚の計画書にまとめ、公開後は半年ごとに見直す手順で進めます。
費用は、サイト・記事・社内の時間の3つで見積もり、1件の商談あたりの費用に直して、ほかの手段と比べましょう。
決裁者との商談を増やしたいときは、記事で集めた問い合わせに加えて、決裁者に直接会える経路も使いましょう。
よくある質問
Q. AI検索の時代にSEOは時代遅れですか
A. 時代遅れではなく、Googleは、SEOのベストプラクティスはAIによる概要やAIモードでも引き続き有効だとしています(2026年10月時点)。
AIによる概要などに表示されるための追加の要件は無く、特別な最適化も要らないとしています。
Q. 会社のサイトとは別に作るべきですか
A. 特に理由が無ければ、会社のサイトと同じドメインの中に作ります。
会社の名前を知って訪れた人も記事を見つけやすく、サーバーや保守の費用も1つにまとめられるためです。
採用向けのように、読者も目的も大きく違うメディアは、分けて作る方法もあります。
Q. 記事は何本そろえてから公開しますか
A. 本数を決めて待つより、営業がよく受ける質問のうち、商談に近いものに答えた記事から順に公開します。
公開するまで記事は検索結果に出ないため、数本でも先に公開し、半年ごとの見直しで足りないテーマを足していきます。
Q. 社長が記事を書いたほうがよいですか
A. すべてを書く必要はありませんが、会社の考えを伝える記事は、社長の名前と言葉で出すと、どんな人の会社かが伝わります。
社長に話を聞いて担当者がまとめる形にすれば、社長が使う時間は取材の分だけで済みます。
この記事の監修者

平野 哲也(ひらの てつや)
株式会社オンリーストーリー 代表取締役
BtoB営業と決裁者マッチングの領域に12年間携わり、決裁者同士をつなぐマッチングサービスを運営。
累計26億円の資金調達を実施し、「ベストベンチャー100」にも選出されている。
「つよいい会社をつくる」を掲げ、経営の中でのしくじりや営業の現場で得た知見を発信中。



