監修:平野 哲也(株式会社オンリーストーリー 代表取締役)
相見積もりで選ばなかった会社に、どう連絡すればよいか決めかねて、そのままにしていないでしょうか。
この記事では、断る時期と手段の選び方、場面別のメール例文、電話で伝えるときの言い方、断られた営業側の受け止め方までを解説します。
断りの連絡を出さないと何が起きるか
放置してしまう気持ちは分かりますが、損をするのはこちらです。
三つの影響があります。
相手の社内で案件が閉じない
営業側は、返事が来るまで案件を進行中のまま抱えます。
見込みとして報告され続け、上長から何度も確認されます。
その状態が続くと、確認の連絡がこちらに来ます。
一通出すだけで、双方の手間が消えます。
次に声をかけづらくなる
断らずに終えた相手には、翌年も依頼しにくくなります。
きちんと断った相手のほうが、次に見積もりを頼みやすくなります。
相見積もりは毎年のことです。
関係を一度で切る必要はありません。
条件を引き出せなくなる
断りの連絡は、相手の譲歩を引き出す最後の機会でもあります。
理由を伝えると、条件を見直した再提案が出ることがあります。
黙って終えると、その可能性は消えます。
すぐに決める必要がない案件ほど、伝える価値があります。
断る時期と手段の選び方
早さと手段を決めておけば、迷う時間がなくなります。
三つの基準で判断します。
決定した週のうちに出す
時間が空くほど、文面を考える負担が増えます。
社内で決まったら、その週のうちに連絡します。
決裁の承認待ちであれば、見込みの時期だけ先に伝えます。
年末年始をまたぐ場合は、休業前に出します。
原則はメール、関係が深ければ電話
どちらか一方に決めておくと、毎回迷いません。
面識が浅い相手はメール、継続取引のある相手は電話が基本です。
電話で伝えた場合も、記録としてメールを残します。
対面で断る必要は、ほとんどありません。
社数が多いときは順番を決める
声をかけた会社が多いと、連絡漏れが出ます。
採用した一社に伝えた直後に、残りへ一斉に出します。
採用した社を先に確定させないと、覆ったときに困ります。
送った記録は、見積もり依頼の一覧に残します。
断る前に確認しておくこと
勢いで断ると、あとで戻せなくなります。
三つだけ確かめます。
社内の決定が確定しているか
稟議が降りる前に伝えると、覆ったときに気まずくなります。
決裁が通ってから連絡すると決めておきます。
時間がかかる場合は、見込みの時期だけ先に知らせます。
途中経過の共有は、相手の助けになります。
条件交渉の余地が本当にないか
価格だけが理由なら、確認の余地が残っています。
断る前に一度、条件の見直しが可能かを尋ねます。
聞いたうえで断れば、相手も納得します。
最初から断ると決めているなら、尋ねません。
今後も付き合う相手かどうか
関係を続けるかどうかで、文面の丁寧さが変わります。
来期も声をかける相手なら、次の機会に触れる一行を入れます。
一度きりの相手には、簡潔な文面で足ります。
判断は、担当者個人ではなく会社として決めます。
断りのメールに入れる要素
型を決めておけば、毎回ゼロから考えずに済みます。
四つの要素で構成します。
結論を先に書く
前置きが長いと、相手は最後まで読みません。
今回は見送る旨を、二行目までに書きます。
挨拶は一行で足ります。
曖昧な表現は、期待を残して相手を困らせます。
理由は一つだけ伝える
複数挙げると、言い訳に見えます。
価格、納期、機能のうち決め手になった一つだけを書きます。
社内の都合であれば、そう書いて構いません。
理由を書けない事情があるなら、無理に作りません。
他社の情報は出さない
金額や社名を伝えるのは、相手への裏切りにあたります。
他社より安かったという書き方も避けます。
比較の基準は伝えてよいですが、数字は出しません。
聞かれても答えない姿勢を保ちます。
次の機会に触れる
関係を続けたいなら、ここで一行足します。
次の案件では改めて声をかける旨を書きます。
社交辞令で書くと、翌年に困ります。
意思がないなら、書かないほうが誠実です。
場面別の断りメール例文
理由と関係の深さで、書き方が変わります。
四つの場面を示します。
価格で見送る場合の例文
金額が理由であることは、伝えて問題ありません。
予算の上限があった旨を書くと、相手は納得しやすくなります。
他社の金額は書きません。
再提案を受ける気があるなら、その旨も添えます。
件名:お見積りの件につきまして(株式会社□□ 田中)
株式会社△△
佐藤様
お世話になっております。
株式会社□□の田中でございます。
先般お見積りをいただきました件につきまして、社内で検討いたしました結果、今回は見送らせていただくこととなりました。
ご提案の内容自体は要件を満たしておりましたが、今期の予算の上限を超えておりました。
お忙しい中ご対応いただきましたこと、あらためて御礼申し上げます。
来期の案件では、またご相談させていただければ幸いです。
納期や体制が理由の場合の例文
価格以外が決め手になることもあります。
いつまでに必要だったかを具体的に書くと、相手の改善につながります。
条件が変われば依頼する可能性も伝えます。
相手の落ち度を示す書き方は避けます。
件名:今回のご提案につきまして
株式会社△△
山本様
いつもお世話になっております。
株式会社□□で購買を担当しております田中と申します。
ご提案いただいた件ですが、今回は他社に依頼することといたしました。
弊社の都合で恐縮ながら、二月上旬の稼働が必須条件となり、ご提示いただいた開始時期では間に合わないと判断いたしました。
内容そのものは高く評価しておりました。
今後、期間に余裕のある案件の際は、ぜひお声がけさせてください。
社内の事情で見送る場合の例文
案件そのものが止まることもあります。
会社としての判断であることを書くと、相手は切り替えられます。
再開の見込みがあれば、時期を添えます。
先方の提案への評価は、別に一行入れます。
件名:案件の見送りについてのご連絡
株式会社△△
佐藤様
お世話になっております。
株式会社□□の田中と申します。
ご検討いただいておりました件につきまして、社内の方針変更により、今期は案件自体を見送ることとなりました。
ご提案の内容に問題があったわけではなく、弊社側の事情によるものでございます。
数度にわたりお時間を頂戴しながら、このようなご連絡となり申し訳ございません。
来期に再開する見込みがございますので、その際は改めてご相談させてください。
継続取引のある相手を断る場合の例文
付き合いのある相手ほど、丁寧さが要ります。
今回に限った判断であることを明記します。
電話で伝えたうえで、記録としてメールを送ります。
他の取引への影響がない旨も書きます。
件名:先ほどのお電話の件(お見積りについて)
株式会社△△
鈴木様
平素より大変お世話になっております。
株式会社□□の田中です。
先ほどお電話でお伝えした件につきまして、念のため書面でもご連絡いたします。
今回の案件につきましては、要件との適合を重視した結果、他社にお願いすることといたしました。
今回に限った判断でございまして、現在ご対応いただいている保守の契約に変更はございません。
引き続き、どうぞよろしくお願い申し上げます。
電話で断るときの言い方
書くより電話のほうが早い場面もあります。
三点を押さえます。
冒頭で結論を伝える
世間話から入ると、相手は期待してしまいます。
名乗ったあと、すぐに見送る旨を伝えます。
声の調子は普段どおりで構いません。
謝りすぎると、かえって気まずくなります。
理由を聞かれたら一つだけ答える
その場で深掘りされることがあります。
決め手になった一点だけを答え、それ以上は話しません。
他社の条件を聞かれても答えません。
答えられない旨をはっきり伝えます。
返信が来たときの返し方
断りに対して、丁寧な返事が届くことがあります。
短く礼を返し、やり取りはそこで終えます。
理由を詳しく聞かれた場合も、追加では答えません。
次の案件で声をかけると書いたなら、記録に残しておきます。
その日のうちにメールを残す
電話だけだと、記録が残りません。
通話後にメールで同じ内容を送ります。
先方が上長へ報告する際の控えになります。
文面は電話で話した内容と食い違わせません。
断られた営業側の受け止め方
立場を変えると、この連絡の価値が見えてきます。
三つの観点で整理します。
理由を一つもらえたら前進と考える
断りの連絡そのものが、次の材料になります。
価格か納期か機能か、どれで負けたかが分かれば改善できます。
聞き返すなら、一度だけ丁寧に尋ねます。
食い下がると、次の機会まで失います。
返事をくれた相手を記録する
断りを入れてくれる会社は、仕事の仕方が丁寧です。
きちんと連絡をくれた相手は、優先度を下げずに残します。
次の案件で声がかかる確率が高くなります。
記録には、断られた理由も残します。
すぐに再提案しない
条件を下げてすぐ出し直すと、最初の見積もりを疑われます。
再提案は、条件が実際に変わったときだけにします。
値引きだけの再提案は、信頼を落とします。
時間を置いてから、別の切り口で接点を作ります。
記録に残して翌年に使う
断った相手と理由を残しておくと、次の依頼先選びが早くなります。
社名、提案内容、断った理由の三つを一行で控えます。
翌年に同じ条件で声をかけるかどうかが、その場で決まります。
担当者が替わっても判断を引き継げます。
見積もりの前段階を見直す
断る回数が多い案件には、前段階に原因があります。
三つ確認します。
声をかける社数を決めておく
五社以上に声をかけると、断る手間だけが増えます。
三社までに絞ると、比較も連絡も現実的な量に収まります。
社数は相手にも伝えておきます。
多すぎる比較は、各社の本気度を下げます。
条件を先に文書でそろえる
各社に伝える条件がずれると、比較になりません。
用途、数量、納期、予算の幅を同じ文面で渡します。
後から条件を足すと、再見積もりの手間が発生します。
決める基準も、依頼の時点で共有します。
決裁者と直接つながる場を併用する
営業として断られる側に回ることも多いはずです。
オンリーストーリーが運営する決裁者マッチングは、審査を通過した企業の決裁者同士が直接つながれる仕組みです。
比較の土俵に乗る前に、条件を決める人と話せます。
一方で、単価の低い商材や、担当者の判断で完結する商材では効果が出にくい傾向があります。
まとめ
相見積もりの断りは、社内で決まったその週のうちに出すと双方の手間が減ります。
面識が浅い相手にはメール、継続取引のある相手には電話を使い、電話の場合も記録としてメールを残してください。
文面では結論を二行目までに書き、理由は決め手になった一つだけにします。
他社の金額や社名は、聞かれても出さないのが原則です。
次の案件で声をかける意思があるときだけ、その一行を添えてください。
断られた側に立ったときは、理由を一つもらえた時点で前進と捉え、値引きだけの再提案は避けます。
そのうえで断る回数が多いなら、声をかける社数と条件の渡し方を見直してみてください。
よくある質問
Q. 相見積もりを断る連絡はいつ出しますか
A. 社内で決まったその週のうちに出します。
時間が空くほど文面を考える負担が増え、相手の案件も閉じられません。
年末年始をまたぐ場合は、休業に入る前に出してください。
Q. 断る理由はどこまで伝えるべきですか
A. 決め手になった一つだけを伝えます。
複数挙げると言い訳のように見え、かえって印象が悪くなります。
他社の金額や社名は、聞かれても答えないのが原則です。
Q. メールと電話のどちらで断るべきですか
A. 面識が浅い相手はメール、継続して取引のある相手は電話が基本です。
電話で伝えた場合も、その日のうちに同じ内容をメールで残してください。
相手が社内で報告する材料になります。
Q. 断ったあとに再提案が来たらどうしますか
A. 条件が実際に変わっているかどうかで判断します。
値引きだけの再提案であれば、最初の見積もりの根拠を確認してください。
検討を再開する意思がないなら、その旨をはっきり伝えます。
この記事の監修者

平野 哲也(ひらの てつや)
株式会社オンリーストーリー 代表取締役
BtoB営業と決裁者マッチングの領域に12年間携わり、決裁者同士をつなぐマッチングサービスを運営。
累計26億円の資金調達を実施し、「ベストベンチャー100」にも選出されている。
「つよいい会社をつくる」を掲げ、経営の中でのしくじりや営業の現場で得た知見を発信中。

