見積もりの承諾が決まったとき、どちらの立場で何を書けばよいのか分からなくなることはないでしょうか。
この記事では、見積もりを承諾する側と承諾された側の双方について、お礼メールの型と例文、発注書の扱い、断られたときの返し方までを解説します。
監修:平野 哲也(株式会社オンリーストーリー 代表取締役)
見積もり承諾の連絡は誰がどちらへ送るのか
見積もりをめぐるお礼メールは、二つの立場が入り混じって語られがちです。
まず、自分がどちらの側にいるのかをはっきりさせましょう。
承諾する側と承諾された側で文面が逆になる
見積書を受け取って了解を返すのが発注側、その連絡を受けるのが受注側です。
発注側は見積書を出してもらった手間に、受注側は選んでもらったことに礼を述べます。
検索して出てくる例文の多くは発注側のものなので、営業として送る場合はそのまま使えません。
どちらの立場かを取り違えると、相手に違和感を与える文面になります。
承諾の連絡は受け取ったその日に返す
見積書は、相手が時間をかけて作ったものです。
金額の判断が出ていなくても、受け取った事実だけは当日中に返します。
社内で検討に時間がかかる場合は、いつまでに回答するかを先に伝えます。
返事がないまま数日が過ぎると、相手は条件が合わなかったと受け取ります。
承諾と発注は同じ意味ではない
承諾しますという言葉は、人によって受け取り方が変わります。
金額に同意した段階と、正式に発注した段階は切り分けて書きます。
社内の稟議が残っている場合は、その旨を明記しておくほうが安全です。
曖昧なまま着手すると、後から条件が変わったときに揉める原因になります。
口頭やメールの承諾だけで着手しない
メールでの承諾は証跡として残りますが、社内規定で足りない場合もあります。
注文書や契約書が必要かどうかを、承諾の連絡と同時に確認します。
相手の購買部門が関わる案件では、様式が決まっていることがほとんどです。
確認を一往復増やすほうが、後戻りよりはるかに早く済みます。
発注側が見積もりを承諾するときのお礼メール例文
見積書を受け取り、進める判断をした側の文面です。
承諾の範囲と次の手続きを書き添える形が基本になります。
内容をそのまま承諾するときの例文
提示された内容に変更がない場合は、短くまとめて構いません。
どの見積書に対する承諾かを、件名か本文で特定できるようにします。
複数の案件が並行しているときは、見積番号や日付を添えます。
担当者と連絡経路も、この段階で確定させておきます。
件名:お見積書ご承諾のご連絡(株式会社△△・佐藤)
〇〇株式会社
田中様
お見積書をお送りいただき、ありがとうございました。
株式会社△△の佐藤でございます。
十月一日付でご提示いただいた内容にて、進めていただきたくご連絡いたしました。
注文書が必要でしたら様式をお知らせいただけますでしょうか。
以降のご連絡は、私と購買部の鈴木宛にお願いできますと幸いです。
何とぞよろしくお願い申し上げます。
社内の承認を経てから承諾するときの例文
稟議を通したうえで返事をする場合は、待たせた経緯に触れます。
社内で検討に時間がかかった事実を書くと、相手の不安が解けます。
承認が下りた範囲を明示し、下りていない部分があれば分けて書きます。
次の工程に入る時期も、分かる範囲で伝えておきます。
件名:社内承認が下りましたのでご連絡いたします
〇〇株式会社
田中様
お返事をお待たせしてしまい、申し訳ございませんでした。
本日、社内の決裁が下りましたのでご連絡を差し上げます。
ご提示いただいた三案のうち、二案目の内容にて正式にお願いしたく存じます。
保守の範囲につきましては別途協議としたいと考えておりますので、改めてご相談させてください。
着手いただける時期をお知らせいただけますと助かります。
どうぞよろしくお願いいたします。
条件を一部だけ調整して承諾するときの例文
金額は了解しつつ、納期や範囲を変えたい場合があります。
承諾する部分と相談したい部分を分けて書くと、話が前に進みます。
すべてを保留にすると、相手は着手の準備ができません。
変更の希望は、理由を一行添えると受け入れられやすくなります。
件名:お見積りの件、納期についてのご相談
〇〇株式会社
田中様
詳細なお見積りをご用意いただき、感謝しております。
金額と作業範囲につきましては、ご提示の内容で承知いたしました。
一点、納品の時期につきまして、年度内に実績を残したい事情がございます。
三月第二週までの完了が可能かどうか、ご検討いただけますでしょうか。
難しい場合は、範囲を分けて先行して進める形でも差し支えございません。
お手数をおかけしますが、よろしくお願いいたします。
承諾を保留して回答期日だけ伝える例文
すぐに判断できないときも、受け取った事実は返します。
いつまでに回答するかを明記するだけで、相手は予定を組めます。
期日を書かずに検討中とだけ返すと、催促のやり取りが増えます。
社内の都合で遅れる見込みが出たら、期日の前に再度連絡します。
件名:お見積書受領の御礼と回答時期のご連絡
〇〇株式会社
田中様
お見積書を確かに受領いたしました。
社内で関係部署と確認のうえ、判断する運びとなっております。
恐れ入りますが、十月十五日までにご回答を差し上げる予定でおります。
それまでの間に状況が変わりましたら、その都度ご連絡いたします。
しばらくお時間を頂戴できますと幸いです。
受注側が承諾の連絡を受けたときのお礼メール例文
見積書を出し、了解をもらった営業側の文面です。
礼を述べたうえで、着手までの段取りを一通で固めます。
承諾の御礼と次の手続きを伝える例文
最も標準的な形で、着手前の確認事項をまとめて伝えます。
礼と同時に、必要な書面と着手の予定を確定させると、進行が滑らかになります。
社内の調整をしてくれた相手の手間にも触れます。
確認を求める点は一度にまとめ、やり取りの往復を減らします。
件名:お見積りご承諾の御礼と今後の進め方について
株式会社△△
佐藤様
このたびはお見積りの内容にご承諾を賜り、誠にありがとうございます。
社内のご調整にお手数をおかけしたことと存じます。
つきましては本日中に注文書の様式をお送りいたしますので、ご捺印のうえご返送をお願い申し上げます。
着手は書面の到着後、十営業日以内を予定しております。
ご不明な点がございましたら、いつでもお申し付けくださいませ。
値引きに応じてもらったときの例文
こちらの提示額をそのまま認めてもらった場合は、その点に触れます。
値引きを前提にしない姿勢を示すと、次回以降の交渉が楽になります。
金額の話を長く書くと、かえって印象が残りすぎます。
品質や納期で返す意思を、一文で示す形が適しています。
件名:ご承諾いただき誠にありがとうございます
株式会社△△
佐藤様
このたびは当初のご提示額のままご承諾をいただき、恐縮しております。
ご期待に見合う内容でお返しできるよう、体制を整えて進めてまいります。
初回の打ち合わせを来週中に設定したく、候補日を二つお送りいたします。
十月十四日の午後、十月十六日の午前はいかがでしょうか。
引き続きよろしくお願い申し上げます。
着手が先になるときの例文
承諾はもらったものの、すぐに動けない場合があります。
待たせる期間と、その間に何をするかを先に伝えると不信を招きません。
理由を細かく説明するより、予定を具体的に示すほうが伝わります。
途中経過を報告する時期も、あわせて約束しておきます。
件名:ご承諾の御礼と着手時期のご案内
株式会社△△
佐藤様
ご承諾のご連絡をいただき、ありがとうございました。
恐れ入りますが、着手は十一月の第一週からとさせていただきたく存じます。
それまでの間に、要件の整理と担当者の割り当てを進めてまいります。
十月下旬に一度、準備の状況をご報告する機会を頂戴できればと考えております。
お待たせいたしますが、何とぞよろしくお願いいたします。
追加の見積もりが必要になったときの例文
承諾後に条件が増え、金額が変わる場合もあります。
先に承諾をもらった範囲を明示してから、追加分を切り分けて示します。
もとの見積もりに混ぜて出し直すと、何が増えたのか分からなくなります。
追加分の判断に必要な期間も、こちらから見込みを伝えます。
件名:ご承諾の御礼と追加項目のお見積りについて
株式会社△△
佐藤様
先日はお見積りをご承諾いただき、ありがとうございました。
ご承諾いただいた範囲は当初の三項目で、こちらは予定どおり進めてまいります。
その後にご相談のあった対象部門の追加につきましては、別紙にて金額をお示しいたします。
ご判断には社内でのお手続きが必要かと存じますので、二週間ほどお時間を見込んでおります。
ご確認のほど、よろしくお願い申し上げます。
見積もり承諾のメールに入れる要素
立場が違っても、書くべき項目は重なります。
抜けやすい四点を確認しておきましょう。
どの見積書への返事かを特定する
複数の案件が並行していると、どれへの返事か分からなくなります。
見積書の日付か番号を、件名か本文の冒頭に入れます。
相手が複数の担当者で案件を分けている場合はなおさら必要です。
過去のやり取りに返信する形であれば、件名を残すだけでも足ります。
承諾した範囲をはっきり書く
見積書に複数の案や項目が並んでいることがあります。
どの案のどの項目を承諾したのかを、文章で書き出します。
別紙のとおりという書き方だけでは、後から確認できません。
保留にした項目があれば、保留であることを明記します。
書面の要否と期日を決める
注文書や契約書が必要かどうかは、会社によって変わります。
必要な書面、様式、返送の期日の三つをこの一通で決めます。
相手の購買部門が関わる場合は、手続きに日数がかかります。
書面が整うまで着手しない方針であれば、その点も伝えます。
担当者と連絡経路を確定する
承諾の段階で、実務の担当者が変わる場合があります。
以降の連絡を誰に送ればよいかを、双方で明示します。
請求書の宛先や送付方法も、この時点で確認しておくと手戻りがありません。
担当が複数になる場合は、同報の宛先も決めておきます。
承諾されなかったときの返し方
見積もりが通らないことも当然あります。
そのときの対応が、次の機会を左右します。
見送りの連絡にも必ず返信する
断りの連絡を受けたまま黙って終えると、関係もそこで切れます。
検討してくれたことへの礼だけを書き、理由を問い詰めない姿勢が次につながります。
今回の判断を否定する表現は、どれほど丁寧に書いても伝わります。
短い文面で構わないので、当日のうちに返します。
金額が理由のときの聞き方
価格が合わなかった場合でも、いくらなら通ったかを直接尋ねるのは避けます。
想定していた予算の規模感を伺ってよいかという形で尋ねます。
答えてもらえなくても、聞いた事実は次回の提案に活きます。
値引きの再提示をその場で出すと、最初の金額の根拠が疑われます。
再提案の時期を決めておく
断られた相手こそ、時期を置いて戻る価値があります。
次に連絡してよい時期を、断りの返信の中で一行だけ尋ねます。
予算の時期や組織の変更に合わせると、再提案が通りやすくなります。
記録に残しておき、その時期が来たら必ず連絡します。
断る側として返信を出すときの書き方
発注側として見送りを伝える場合も、理由を一行添えると誠実です。
今回は見送る旨と、今後の可能性を分けて書きます。
曖昧に濁すと、相手が何度も確認の連絡を入れることになります。
社内の事情で言えない部分は、言えない旨だけを伝えれば足ります。
見積もりの段階で失注しないために
承諾されるかどうかは、見積書を出した時点でほぼ決まっています。
手前の工程から見直す視点を持ちましょう。
金額だけで比べられる状態を避ける
相見積もりになると、最後は数字の比較になります。
見積書に至る前に、判断の基準を一緒に作れているかが分かれ目です。
基準づくりに関わっていれば、金額以外の項目でも評価されます。
提案の初期から、何を比べるのかを相手と確認しておきます。
決裁者が見積書を見ていない場合がある
窓口の担当者とは話が進んでいても、決裁の場に届いていないことがあります。
担当者が社内でどう説明するかまで想定して資料を用意する必要があります。
稟議の様式に合わせた資料を渡しておくと、説明が通りやすくなります。
決裁者が何を気にするかは、担当者に直接尋ねて構いません。
決裁者と直接つながる場を併用する
商談の初期から判断できる立場の相手と話せれば、見積もりの通り方が変わります。
オンリーストーリーが運営する決裁者マッチングは、審査を通過した企業の決裁者同士が直接つながれる仕組みです。
窓口を経由しないため、金額の前提を決裁者と直接すり合わせられます。
見積書を出す段階で、すでに判断の基準が共有されている状態を作りやすくなります。
向かない条件も押さえておく
決裁者マッチングは、どの会社にも等しく効くわけではありません。
商材の単価が低い場合や、担当者レベルで決裁が完結する商材では効果が出にくい傾向があります。
一度の取引額が小さく、件数を積み上げる商材であれば別の手段が向きます。
自社の単価と決裁の流れを確かめたうえで、検討してください。
まとめ
見積もり承諾のお礼メールは、自分が承諾する側か承諾された側かで中身が入れ替わります。
発注側は見積書を作ってもらった手間に、受注側は選んでもらったことに礼を述べる形が基本です。
どちらの立場でも、承諾した範囲、必要な書面と期日、着手の時期の三つを同じ一通で確定させてください。
この三点が決まっていれば、着手後に条件のすれ違いが起きることはほとんどありません。
見送りの連絡を受けたときも、当日中に礼だけを返し、次に連絡してよい時期を一行尋ねておきます。
そのうえで、見積もりの段階で金額だけを比べられていると感じるなら、手前の工程に原因があります。
決裁者マッチングのように判断できる相手と早く話せる場を併用し、自社の単価に合うかを確かめてみてください。
よくある質問
Q. 見積もりを承諾するメールはいつまでに送るべきですか
A. 見積書を受け取ったその日のうちに返すのが基本です。
社内で判断に時間がかかる場合は、受領した事実といつまでに回答するかを先に伝えます。
返事がないまま数日が過ぎると、条件が合わなかったと受け取られます。
Q. メールでの承諾だけで着手してもよいですか
A. 会社によっては注文書や契約書が必要になります。
承諾の連絡と同時に、必要な書面と様式、返送の期日を確認してください。
購買部門が関わる案件では、手続きに日数がかかることを見込んでおきます。
Q. 値引きに応じてもらったとき、何を書けばよいですか
A. 金額の話を長く書かず、応じてもらった事実への礼を一文にとどめます。
そのうえで、品質や納期で応えるという姿勢を短く示します。
次の打ち合わせの候補日まで添えると、話が止まりません。
Q. 見積もりを断られたときも返信は必要ですか
A. 必要です。
検討してくれたことへの礼だけを書き、理由を問い詰めないでください。
次に連絡してよい時期を一行尋ねておくと、再提案の機会が残ります。
見積もりの前後には、面談の依頼から受注の連絡まで別のメールが並びます。
この記事の監修者

平野 哲也(ひらの てつや)
株式会社オンリーストーリー 代表取締役
BtoB営業と決裁者マッチングの領域に12年間携わり、決裁者同士をつなぐマッチングサービスを運営。
累計26億円の資金調達を実施し、「ベストベンチャー100」にも選出されている。
「つよいい会社をつくる」を掲げ、経営の中でのしくじりや営業の現場で得た知見を発信中。

