最終更新日: 2025.10.03

「売上のほとんどを、一人のトップセールスに依存している。彼が辞めてしまったら、うちの会社はどうなるのだろうか…」

「新人営業がなかなか育たず、成果が安定しない。教育体制が機能していないのかもしれない…」

「営業活動が各担当者の頭の中にしかなく、ブラックボックス化している。組織としてどこに課題があるのか全く分からない…」

このような、営業組織に関する悩みは、多くの経営者や営業マネージャーにとって、極めて深刻な経営課題です。

この記事では、これまで数多くの企業の営業改革を支援してきたコンサルタントが、再現性の高い「強い営業組織の作り方」を、誰でも実践できるよう体系立てて解説します。

この記事を最後まで読めば、あなたの会社の営業組織が抱える課題を正確に診断し、戦略、仕組み、人材育成といった多角的な視点から具体的な強化策を実行するための、明確なロードマップが描けるようになるはずです。

Table of Contents

あなたの組織は大丈夫?成果が出ない営業組織に共通する5つの「病」

具体的な強化策に入る前に、まずはあなたの営業組織がどのような健康状態にあるのかを診断してみましょう。

実は、成果が出ずに伸び悩んでいる営業組織には、いくつかの共通した「病」が存在します。

もし一つでも当てはまるものがあれば、それは組織からの危険信号かもしれません。

病①:戦略なき「気合と根性」依存症

「とにかくお客様のところに足繁く通え!」「今月も目標達成まで気合で乗り切れ!」

このような言葉が飛び交う営業会議は、危険な兆候です。

市場や顧客の分析に基づいた明確な営業戦略がなく、個々の営業担当者の頑張りや精神論だけに依存している状態です。

この状態では、成果は安定せず、メンバーは疲弊し、市場の変化に対応することもできません。

短期的な成果は出たとしても、持続的な成長は決して望めない、最も根深い病の一つです。

病②:トップセールス頼みの「属人化」症候群

チームの中に、一人だけ突出した成果を上げるエース社員、いわゆる「トップセールス」が存在し、売上の大部分を彼に依存している状態です。

一見すると問題ないように見えますが、これは組織にとって非常に脆い状態です。

彼の持つ優れた営業ノウハウや顧客との関係性は、全く組織に共有されず、個人の資産のままになっています。

もし彼が退職してしまえば、売上と共に全てのノウハウが失われ、組織は一気に崩壊の危機に瀕します。

これが、多くの企業を蝕む「属人化」という病です。

病③:活動内容が見えない「ブラックボックス」病

「Aさんは今、どの顧客に、どのような提案をしているのだろうか?」

「先月失注した大型案件は、一体なぜダメだったのだろうか?」

マネージャーがこのような質問に即答できない場合、あなたの組織は「ブラックボックス」病に罹患しています。

SFA/CRMのような営業支援ツールが導入されていない、あるいはされていても正しく活用されておらず、各担当者の営業活動が全く可視化されていない状態です。

これでは、問題がどこにあるのか特定できず、データに基づいた的確な改善策を打つことは不可能です。

病④:教育体制なき「OJT丸投げ」体質

新人営業担当者が入社しても、体系的な研修プログラムはなく、「とりあえず先輩に同行して、見て学べ」というOJT(On-the-Job Training)に丸投げしてしまっている状態です。

もちろんOJTは重要ですが、それだけでは教える先輩によって言うことがバラバラだったり、そもそも先輩自身が多忙で十分に時間を割けなかったりと、育成が機能しません。

結果として、新人はいつまでたっても自信を持って一人で営業できず、早期離職の原因にもなります。

これは、人を育て、組織の未来を作るという重要な責務を放棄していることに他なりません。

病⑤:部門間の壁による「サイロ化」シンドローム

マーケティング部門と営業部門が、お互いに協力せず、壁を作ってしまっている状態です。

マーケティング部門は「せっかく質の高いリードを渡したのに、営業が全くフォローしてくれない」と不満を言い、営業部門は「マーケティングが送ってくるリードは、確度が低くて使い物にならない」と文句を言う。

このように、顧客獲得という共通のゴールを目指すべき両部門が連携せず、それぞれが部分最適に陥ってしまっている状態を「サイロ化」と呼びます。

この状態では、多くのビジネスチャンスが部門間の溝に落ちていってしまいます。

強い営業組織を構成する「5つの柱」

では、これらの「病」を克服し、持続的に成果を出し続ける「強い営業組織」を作るためには、何が必要なのでしょうか。

私たちは、強い営業組織は5つの重要な柱によって支えられていると考えています。

これらの柱をバランス良く強化していくことが、組織変革の鍵となります。

① 戦略:どこで、誰に、何を、どう売るか

強い営業組織は、必ず明確な「戦略」を持っています。

自社の強みは何か、どの市場(どこで)の、どのような顧客(誰に)をターゲットとし、どのような価値(何を)を、どのようなプロセス(どう売るか)で提供するのか。

この戦いの設計図が、全ての活動の土台となります。

この戦略が組織全体で共有されていることで、メンバーは日々の活動に迷いがなくなり、一貫性のある力強い営業活動を展開できるようになります。

② 仕組み(オペレーション):科学的に成果を出すための武器

強い営業組織は、個人の能力だけに依存しません。

SFA/CRMのようなツールを活用して営業活動を可視化し、データに基づいて意思決定を行います。

また、商談の進め方や提案書のフォーマットなど、成果を出すためのプロセスが「標準化」されており、誰がやっても一定の質を担保できる「仕組み」を持っています。

この仕組みがあるからこそ、成果に再現性が生まれ、組織として安定した成長が可能になるのです。

③ 人材(育成・採用):最強の戦闘員を育てる

戦略や仕組みがどれだけ優れていても、それを実行するのは「人」です。

強い営業組織は、自社の戦略を実行するために必要なスキルやマインドセットを持った人材を、計画的に「採用」し、「育成」するための体系的なプログラムを持っています。

新人が早期に戦力化できるオンボーディングプログラムや、メンバーのスキルを継続的に向上させるための研修制度が整備されています。

「人」こそが、組織の最も重要な資産であることを理解しているのです。

④ マネジメント:チームの力を最大化する

個々の優秀な営業担当者を集めただけでは、強い「組織」にはなりません。

それぞれのメンバーの力を結集し、1+1を3にも5にもする役割を担うのが「マネジメント」です。

強い営業組織のマネージャーは、単なる進捗管理者ではありません。

データに基づいて的確なフィードバックを行い、メンバーのモチベーションを高め、チーム内に心理的安全性のある環境を作り出すことで、個々のメンバーの能力を最大限に引き出し、チームとしての成果を最大化します。

⑤ 文化:自律的に成長し続ける土壌

戦略、仕組み、人材、マネジメント。

これらの4つの柱を支える最も重要な土台となるのが、組織の「文化」です。

強い営業組織には、失敗を恐れずに挑戦することを奨励し、成功事例だけでなく失敗からも学ぶことを尊ぶ文化があります。

また、チームの目標達成のために、メンバー同士が自然と助け合い、ノウハウを共有し合う文化が根付いています。

このような自律的に成長し続ける土壌があるからこそ、組織は市場の変化に柔軟に対応し、持続的に進化していくことができるのです。

【実践編】5つの柱に基づいた、営業組織を強化する具体的メソッド

5つの柱の重要性をご理解いただけたところで、いよいよそれらを強化するための具体的な方法論に入ります。

ここでは、明日からあなたの組織で実践できる、具体的なアクションプランを各柱に沿って解説します。

[戦略] の強化策:勝つための「戦い方」を決める

戦略なき組織に勝利はありません。

まずは、自社の戦い方を定義することから始めましょう。

その第一歩は、「誰にリソースを集中させるか」を明確にすることです。

自社にとって最も価値の高い理想の顧客像(ICP:Ideal Customer Profile)を、業種や企業規模、課題といった観点から徹底的に議論し、言語化します。

次に、その戦略が正しく実行されているかを測るための「KGI/KPI」を再設計します。

単に「売上目標」や「訪問件数」といった結果・活動量だけでなく、「商談化率」や「受注率」といった、営業活動の「質」を測る指標を設定することが、組織を正しい方向へ導く上で極めて重要です。

[仕組み] の強化策:属人性を排除し、再現性を高める

個人の才能に頼る営業から、組織力で勝つ営業へと転換するためには、「仕組み」の力が不可欠です。

その中核となるのが、SFA/CRMの導入と定着化です。

全ての営業活動をデータとして可視化することで、初めて科学的な組織改善のスタートラインに立つことができます。

次に、商談の各段階(フェーズ)を定義し、各フェーズでやるべきことを標準化する「営業プロセスの標準化」を進めます。

さらに、SFA/CRMに蓄積されたトップセールスの成功事例や優れた提案資料を、誰もがアクセスできる「ナレッジ」として共有する仕組みを構築することで、エースのノウハウは組織全体の資産へと昇華します。

[人材] の強化策:個の力を組織の力に変える

強い営業組織は、人材を「育てる」仕組みを持っています。

まずは、新人営業担当者が入社後3ヶ月で独り立ちできるような、体系的な「オンボーディングプログラム」を構築しましょう。

会社の理念から製品知識、営業プロセス、SFAの使い方まで、学ぶべきことを明確にカリキュラム化します。

次に、既存メンバーのスキルを可視化するための「スキルマップ」を作成し、個々の強みや弱みに合わせた計画的な育成を行います。

ヒアリング力やプレゼンテーション力といった各スキル項目について、定期的な研修やロールプレイングを実施することで、組織全体のスキルレベルを継続的に引き上げていくことができます。

[マネジメント] の強化策:リーダーが組織を動かす

マネージャーの役割は、メンバーを管理することではなく、彼らの成功を支援することです。

そのために、まずはSFA/CRMに蓄積された客観的なデータに基づいた、的確なフィードバックを行うスキルを身につけましょう。

「最近どうだ?」といった感覚的な問いかけではなく、「君は初回訪問から提案への移行率が低い傾向にあるから、ヒアリングのやり方を一緒に見直そう」といった、具体的な指導が可能になります。

また、メンバーが安心して失敗し、挑戦できる「心理的安全性」の高いチーム環境を作ることも、マネージャーの重要な責務です。

個々のメンバーのモチベーションの源泉を理解し、適切な目標設定と称賛を通じて、チームのエネルギーを最大化します。

[文化] の強化策:自走する組織を作る

良い文化は、優れた戦略や仕組み以上に、組織を強くします。

まずは、組織の目的を「売ること」から「顧客を成功させること」へと転換する、「顧客志向」の価値観を徹底的に浸透させましょう。

全ての意思決定の基準が「それは顧客のためになるか?」になることで、組織の行動は自然と正しい方向に向かいます。

また、成果を出した個人だけでなく、良いプロセスを実践したメンバーや、チームの他のメンバーを助けた貢献などを積極的に称賛する「称賛の文化」を醸成することも重要です。

このような文化が根付くことで、メンバーは指示を待つのではなく、自律的に考え、行動し、互いに高め合う「自走する組織」へと進化していきます。

営業組織の強化に成功した企業の事例紹介

理論だけでなく、実際の成功事例を知ることで、自社での取り組みがよりイメージしやすくなるでしょう。

ここでは、営業組織の強化に成功し、大きな成果を上げた2社の事例を簡潔にご紹介します。

事例①:SaaS企業A社「SFA導入とプロセス標準化で、新人営業の立ち上がり期間を半分に短縮」

ある急成長中のSaaS企業は、人員拡大に伴い、新人営業の育成が追いつかないという課題を抱えていました。

そこで、SFAを導入してトップセールスの活動を可視化し、その勝ちパターンを基に商談プロセスを標準化。

ヒアリングシートや提案書のテンプレートを整備し、新人向けのオンボーディングプログラムを刷新しました。

その結果、新人が独り立ちするまでの平均期間が6ヶ月から3ヶ月へと半分に短縮され、組織全体の売上目標を安定的に達成できる体制が整いました。

事例②:製造業B社「マーケティング部との連携強化で、商談化リード数が3倍に増加」

ある製造業の企業では、マーケティング部門と営業部門が「サイロ化」し、連携が全く取れていませんでした。

そこで、両部門のKPIを「売上貢献」という共通の目標に再設定。

SFAとMA(マーケティングオートメーション)を連携させ、リードの情報をスムーズに共有する仕組みを構築しました。

また、週に一度の合同ミーティングを設け、リードの質についてフィードバックし合う場を作りました。

その結果、マーケティング部門はより質の高いリードを営業に供給できるようになり、商談化するリードの数は導入前の3倍に増加しました。

まとめ:強い営業組織とは、継続的に「変化」し続ける組織である

本記事では、強い営業組織を構築するための5つの柱、「戦略」「仕組み」「人材」「マネジメント」「文化」と、それらを強化するための具体的な方法論を体系的に解説してきました。

強い営業組織とは、決して完成された静的なものではありません。

それは、カリスマ的な一個人に依存するのではなく、5つの柱が互いに連携し、バランス良く機能することで成り立っています。

そして、最も重要なことは、営業組織の強化は一度行えば終わりという一過性のプロジェクトではないということです。

市場や顧客の変化に常にアンテナを張り、データに基づいて自らのあり方を問い直し、改善を続ける「学習する組織」こそが、これからの時代を勝ち抜き、持続的に成長できる真に強い営業組織なのです。

まずはこの記事で紹介した「5つの病」の診断リストを使い、自社の営業組織が今どこに課題を抱えているのかを、あなたのチームで議論することから始めてみてください。

課題に対する共通認識を持つこと。

それが、組織変革という偉大な旅の、最も重要で確実な第一歩です。

ENICXO
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