監修:平野 哲也(株式会社オンリーストーリー 代表取締役)
年末の挨拶回りをどの時期に、どこまでの相手に行けばよいのか、毎年迷っていないでしょうか。
この記事では、回る時期の決め方、アポを取るか取らないかの線引き、手土産の目安、当日に話す内容と話さない内容までを解説します。
年末の挨拶回りに行く意味
形式だけの訪問だと感じている人も少なくありません。
それでも回る価値がどこにあるのかを整理します。
一年で唯一、用件なしで会える機会
通常の訪問は、提案や打ち合わせという用件が要ります。
年末だけは、挨拶という理由だけで時間をもらえます。
用件がないぶん、相手も身構えずに話してくれます。
雑談の中から次の案件が出てくるのは、この種の訪問です。
担当者以外と顔を合わせられる
受付や他部署の人と会えるのも、訪問ならではです。
決裁に関わる人が通りかかって挨拶できることがあります。
普段メールでしかやり取りしない相手の顔を覚えてもらえます。
社内での自社の扱いも、空気で分かります。
来期の話が自然に出る
年末は、相手も翌年の計画を考えている時期です。
来年どうされますかと一言聞くだけで、予算や体制の話が出ることがあります。
提案のつもりがなくても、情報は入ってきます。
聞いた内容は、その日のうちに記録します。
回る時期の決め方
早すぎても遅すぎても、相手の負担になります。
三つの基準で決めます。
十二月の第二週から第三週に入れる
月初は相手も月次の処理で手が離せません。
第二週から第三週が、最も落ち着いて会える時期です。
最終週は片付けと納会で、訪問を受ける余裕がなくなります。
逆算すると、連絡は十一月下旬から始めます。
相手の繁忙期を外す
業界によって、年末の忙しさはまったく違います。
小売や物流は十二月が最も忙しく、訪問は迷惑になります。
その場合は、年明けの挨拶に振り替える判断もあります。
相手の商売の山がいつかを、先に確認します。
一日の訪問数を欲張らない
移動を詰めすぎると、どの訪問も浅くなります。
一日四件までに抑えると、話を聞く余裕が残ります。
エリアでまとめて組むと、移動の無駄が減ります。
滞在は十五分を目安にします。
アポを取るか、取らないか
ここを間違えると、挨拶が迷惑になります。
線引きをはっきりさせます。
担当者に会いたいなら必ず連絡する
在席しているとは限りませんし、在席していても手は空いていません。
会って話したい相手には、一週間前までに連絡を入れます。
短時間で済むことを明記すると、受けてもらいやすくなります。
日時は相手に選んでもらう形にします。
アポなしで回ってよい場合
受付で粗品を渡して帰る前提なら、連絡は不要です。
担当者を呼び出さないと決めて訪問するなら、相手の負担になりません。
名刺に一言添えて預けておくと、あとで伝わります。
呼び出してもらおうとした時点で、アポなし訪問は迷惑になります。
名刺に一言を書いて預ける
不在だったときに、何も残さず帰ると訪問した意味がありません。
名刺の裏に一行だけ書いて受付に預けると、後から伝わります。
日付と、年内の礼を短く書きます。
長い文章は読まれないので、二行までにします。
連絡して断られたとき
時期が合わないと断られることもあります。
無理に食い下がらず、年明けの訪問を打診します。
断られたこと自体を気にする必要はありません。
代わりにメールで挨拶を送り、接点だけ残します。
訪問のお願いをするときの例文
用件と所要時間を先に書きます。
十五分で終わることを数字で示すと、返事が早くなります。
手土産を持参する旨は書きません。
候補日は三つ出します。
件名:年末のご挨拶に伺いたく(株式会社△△ 佐藤)
〇〇株式会社
田中様
いつもお世話になっております。
株式会社△△の佐藤でございます。
本年も大変お世話になりましたので、年内に一度ご挨拶に伺えればと存じます。
十五分ほどで失礼いたしますので、お手すきの時間を頂戴できますと幸いです。
十二月九日(水)午後
十二月十一日(金)午前
十二月十五日(火)終日
ご都合が合わないようでしたら、年明けにあらためてご連絡いたします。
手土産をどうするか
持っていくかどうかで悩む時間が、毎年発生します。
判断の基準を決めておきます。
金額の目安は三千円前後
高価なものは、相手の社内規程に触れることがあります。
三千円前後に抑えると、受け取る側も気を使いません。
取引額の大小で変える必要はありません。
社名入りの粗品であれば、千円程度でも失礼になりません。
部署で分けられるものを選ぶ
担当者個人ではなく、部署へ渡す形が基本です。
個包装で人数分に分けられる菓子が最も扱いやすくなります。
日持ちのしないものは、年末年始をまたぐため避けます。
冷蔵が必要なものも選びません。
受け取れない相手を把握しておく
金融機関や官公庁など、受領を禁じている相手もあります。
事前に受け取れるかを確認すると、その場で気まずくなりません。
断られた場合は、持ち帰って構いません。
無理に置いてくると、相手が処理に困ります。
訪問の前に用意しておくもの
当日の中身は、準備でほぼ決まります。
三つだけそろえておきます。
今年の取引を一枚にまとめる
記憶だけで訪問すると、話が一般論になります。
今年の納品内容と金額、動いた案件を一枚に書き出して持ちます。
相手が覚えていない取引を、こちらが覚えていると印象が変わります。
数字は見ずに言えるところまで頭に入れておきます。
相手の社内の動きを調べておく
一年のあいだに、組織や人が変わっていることがあります。
相手のサイトと公開情報で、体制の変更を確認しておきます。
役職が変わっていれば、名刺と呼び方を直します。
決算月を把握しておくと、来期の話に入りやすくなります。
渡すものを前日までにそろえる
当日に用意すると、必ず何かが抜けます。
手土産、名刺、今年の一枚、翌年のカレンダーを前日に机に並べます。
名刺は切らしやすいので、枚数を数えておきます。
訪問先ごとに袋を分けておくと、車中で迷いません。
移動の順番を地図で確認する
時間どおりに着くことが、最低限の礼儀になります。
訪問先を地図に並べ、移動時間に十五分の余裕を足します。
雨や渋滞を見込んでおくと、焦らずに済みます。
一件遅れると、その日の残りがすべて崩れます。
当日に話すことと話さないこと
十五分で何を話すかを決めておきます。
三つに絞ります。
今年の礼を具体的に伝える
一年ありがとうございましたでは、誰に言っても同じです。
今年あった案件を一つ挙げて礼を言うと、相手の記憶に残ります。
相手が社内調整で動いてくれた場面を覚えておきます。
感謝は最初の一分で済ませます。
来年の予定を一つだけ聞く
聞きすぎると商談になってしまいます。
来年の体制や計画について一つだけ尋ねる形にとどめます。
答えが返ってこなければ、それ以上は踏み込みません。
聞いた内容はメモを取らず、帰ってから書きます。
売り込みはしない
提案を持ち込むと、挨拶という名目が崩れます。
資料を出さないと決めて訪問するほうが、翌年の相談につながります。
相手から聞かれた場合だけ、簡単に答えます。
詳しい話は、年明けの機会を提案します。
長居をしない
十五分と伝えたなら、十五分で立ちます。
時計を見る前に自分から切り上げると、印象が良くなります。
話が盛り上がっても、相手の予定が詰まっています。
次につながる訪問は、短いほうです。
挨拶回りをやめてよい相手
全部に行こうとすると、どこも中途半端になります。
外す基準を決めておきます。
担当者がこちらを覚えていない相手
一年を通して接点がなかった相手に訪問しても、話が続きません。
今年一度も会話がなかった相手は、メールに切り替えます。
訪問は、関係を温め直す手段としては重すぎます。
再開したいなら、年明けに用件を作って連絡します。
訪問を歓迎していない相手
前回の訪問で、明らかに時間を気にされた相手もいます。
断られた記録が残っている相手は、翌年も外します。
相手の方針として来訪を受けない会社もあります。
その場合は、メールでの接点を丁寧にします。
自社の優先度が低い相手
限られた日数で回る以上、順番はつきます。
来期に取引が増える見込みのある相手から埋めます。
金額の大きさだけで決めると、伸びる相手を落とします。
判断に迷ったら、今年相談を受けた回数で並べます。
遠方で日帰りが難しい相手
往復に半日かかる相手を一件入れると、その日は一件で終わります。
移動に片道二時間を超える相手は、手紙かオンラインに切り替えます。
オンラインの年末挨拶も、相手によっては歓迎されます。
翌年の出張に合わせて訪問する手もあります。
訪問できない相手への対応
全社を回ることはできません。
回らない相手の扱いを決めておきます。
メールで挨拶を送る
訪問しない相手にも、年末の連絡は入れます。
訪問できない相手にはメールで済ませると決めておくと、優先順位がぶれません。
文面は短くし、休業期間を添えます。
返信を求めない旨を書き添えます。
遠方の相手には手紙を使う
メールよりも手紙のほうが残ります。
年に一度だけ手紙を送る相手を決めておくと、負担が偏りません。
手書きの一行を添えると、印象が変わります。
投函は十二月二十日ごろまでに済ませます。
今年動きがなかった相手こそ連絡する
取引が止まっている相手ほど、連絡が途絶えがちです。
動きがなかった相手にこそ、年末の一報を入れます。
用件がないこの時期だからこそ、連絡しやすくなります。
再開のきっかけは、この一通から生まれます。
挨拶回りを翌年の商談につなげる
回っただけで終わらせないための整理です。
三つの観点で見直します。
聞いた話をその日のうちに残す
記憶は翌日には半分消えます。
訪問した日のうちに、聞いた内容を三行だけ書く運用にします。
来期の予算、体制の変更、困っていることの三点に絞ります。
書く項目を決めておくと、現場でも続きます。
年明けの連絡日を決めてから帰る
次の接点を決めずに帰ると、三月まで連絡しません。
年明けの何週目に連絡するかを、その場で決めます。
相手に伝えておけば、約束として残ります。
カレンダーに入れてから次の訪問へ移ります。
決裁者と直接つながる場を併用する
挨拶回りで会えるのは、ほとんどが担当者です。
オンリーストーリーが運営する決裁者マッチングは、審査を通過した企業の決裁者同士が直接つながれる仕組みです。
年始の面談を、担当者を介さずに設定できます。
一方で、単価の低い商材や、担当者の判断で完結する商材では効果が出にくい傾向があります。
まとめ
年末の訪問は、十二月の中ごろに回ると相手の予定が詰まっておらず、腰を据えて話せます。
連絡は十一月下旬から始め、一日四件までに抑えると一件ごとの中身が薄くなりません。
担当者に会いたいなら必ず事前に連絡し、アポなしは受付で渡して帰る前提のときだけにします。
手土産は三千円前後で、部署で分けられる日持ちのするものを選んでください。
当日は今年あった案件を一つ挙げて礼を言い、来年の予定を一つだけ聞いて切り上げます。
訪問しない相手にはメール、遠方の相手には手紙と決めておくと、優先順位がぶれません。
そのうえで会えるのが担当者ばかりなら、年明けに誰と話すかを見直してみてください。
よくある質問
Q. 年末の挨拶回りはいつ行くのがよいですか
A. 十二月の第二週から第三週が目安です。
最終週は相手も片付けに入るため、訪問を受ける余裕がなくなります。
相手が小売や物流であれば十二月が繁忙期にあたるので、年明けに振り替えてください。
Q. アポなしで訪問してもよいですか
A. 受付で粗品を渡して帰る前提であれば問題ありません。
担当者を呼び出してもらうつもりなら、一週間前までに連絡を入れます。
その場で呼び出しを頼むと、相手の予定を崩すことになります。
Q. 手土産はいくらくらいが適切ですか
A. 三千円前後が目安です。
取引額の大小で変える必要はなく、社名入りの粗品なら千円程度でも失礼になりません。
金融機関や官公庁など受領を禁じている相手もあるため、事前に確認してください。
Q. 訪問のときに提案をしてもよいですか
A. 挨拶という名目が崩れるため、持ち込まないほうが結果的に有利です。
相手から聞かれたときだけ簡単に答え、詳しい話は年明けの機会を提案します。
資料を持っていかないと決めておくと、こちらも話しすぎません。
この記事の監修者

平野 哲也(ひらの てつや)
株式会社オンリーストーリー 代表取締役
BtoB営業と決裁者マッチングの領域に12年間携わり、決裁者同士をつなぐマッチングサービスを運営。
累計26億円の資金調達を実施し、「ベストベンチャー100」にも選出されている。
「つよいい会社をつくる」を掲げ、経営の中でのしくじりや営業の現場で得た知見を発信中。

