監修:平野 哲也(株式会社オンリーストーリー 代表取締役)
取引先へご挨拶に伺いたいと伝えるとき、売り込みに見えない書き方が分からず手が止まることはないでしょうか。
この記事では、件名の付け方から場面別の例文、上司が同行する場合や年始の挨拶、断られたときの返し方までを解説します。
ご挨拶に伺いたいと伝えるメールの役割
挨拶の訪問は、用件がはっきりしないぶん断られやすい連絡です。
何のために送るのかを整理しておきましょう。
挨拶という言葉だけでは用件が伝わらない
相手は、時間を使う価値があるかどうかで返信を決めます。
挨拶とだけ書かれた依頼は、後回しにされやすい連絡の代表です。
担当が替わった、近況を伺いたいなど、訪問の理由を具体化します。
理由を書けないときは、メールだけの挨拶にとどめる判断もあります。
相手が構えない書き方にする
挨拶と書きつつ提案を長く続けると、売り込みと受け取られます。
本文で商品の説明に入らず、会ってからにするほうが受け入れられます。
資料を添付する場合は、一枚ものにとどめます。
初回から値段や条件に触れるのは避けます。
所要時間を短く示す
挨拶の訪問は、相手にとって優先度の高い予定ではありません。
二十分から三十分と短く提示すると、空いた枠に入れてもらえます。
長めに取ると、まとまった時間が空くまで先送りされます。
実際に短く終える準備をしておくことが前提です。
メールと電話を使い分ける
長く付き合いのある相手なら、電話のほうが早く決まります。
初めての相手や役職者には、記録が残るメールを先に送るのが確実です。
電話で話したあとも、日時を書いたメールを必ず残しておきます。
相手が普段使っている手段に合わせるのが基本です。
件名と本文の組み立て方
受け取った相手が最初に見るのは件名です。
開かれる件名と、読まれる本文の順序を押さえましょう。
件名には用件と社名を並べる
ご挨拶の件だけでは、何の連絡か分かりません。
用件、自社名、氏名を並べた件名にすると、開く判断が早まります。
担当者が替わった場合は、その事実を件名に入れます。
返信の形で送るときは、元の件名を残したまま冒頭に用件を足します。
冒頭で名乗りと関係を示す
面識が薄い相手ほど、誰からの連絡かを先に書きます。
どこで接点があったか、誰の紹介かを一行で添えると警戒が解けます。
過去の取引がある場合は、その時期と内容に触れます。
社名が長い場合でも、初回は正式名称で書きます。
目的、所要時間、候補日の順に書く
本文の中ほどで、三つの情報をまとめて示します。
目的、所要時間、候補日の順に並べると、相手は上から読むだけで判断できます。
候補日は三つ前後を、曜日と時間帯を散らして出します。
合わない場合の連絡方法も、あわせて書いておきます。
結びで相手の負担を下げる
返信を強く求める表現は、挨拶の連絡には向きません。
ご都合が合わないようでしたら改めます、と逃げ道を用意すると返信しやすくなります。
期限を切る書き方は、売り込みの印象を強めます。
次の連絡をこちらから入れる前提で締めます。
場面別のご挨拶メール例文
関係の深さと訪問の理由で、書く内容が変わります。
よくある四つの場面を見ていきます。
担当者が替わったときの例文
後任として挨拶に行く場面は、最も自然に訪問できる機会です。
前任者の名前と引き継いだ時期を書くと、相手はすぐ状況を理解できます。
引き継ぎの内容に触れると、話が早く進みます。
前任者から一言添えてもらえると、さらに受け入れられやすくなります。
件名:担当者変更のご挨拶に伺いたく(〇〇株式会社・田中)
株式会社△△
佐藤様
いつもお世話になっております。
十月より貴社を担当させていただくことになりました、〇〇株式会社の田中と申します。
前任の鈴木より、納品後の運用についてご相談をいただいていると引き継いでおります。
改めてご挨拶を兼ねて、二十分ほどお時間を頂戴できませんでしょうか。
十月二十一日(火)午後、十月二十三日(木)午前であれば伺うことができます。
しばらく連絡が途絶えていた相手への例文
以前の取引が止まっている相手にも、挨拶の口実は作れます。
当時の取引内容に触れ、現在の状況を尋ねる形にすると不自然になりません。
間が空いたことを責める表現は入れません。
返信がなくても追わず、次の機会に回します。
件名:ご無沙汰しております(〇〇株式会社・田中よりご挨拶)
株式会社△△
佐藤様
ご無沙汰しております。
二年前に採用後の研修についてご相談をいただきました、〇〇株式会社の田中でございます。
その節は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。
その後の貴社のご状況を伺えればと存じますが、三十分ほど頂戴できませんでしょうか。
ご多忙でしたら、無理のない時期で結構でございます。
上司が同行するときの例文
役職者を連れて行く場合は、相手側の構えも変わります。
同行者の役職と氏名、同行する理由を本文に書くと相手が準備できます。
相手にも同格の方の同席を求めるときは、理由を添えます。
人数が増えるぶん、所要時間は長めに見積もります。
件名:弊社部長同行でのご挨拶のお願い
株式会社△△
佐藤様
いつもお引き立てをいただき、ありがとうございます。
このたび、弊社の営業部長である高橋が貴社へご挨拶に伺いたいと申しております。
日頃のお取引への御礼と、来期の体制についてお伝えできればと考えております。
二名で三十分ほど頂戴できればと存じますが、ご都合はいかがでしょうか。
十一月四日(火)、十一月六日(木)のいずれも午後が空いております。
年始や年末に挨拶へ行く例文
季節の挨拶は、相手も受け入れやすい訪問の理由です。
時期が集中するため、早めに連絡して枠を確保する必要があります。
手土産を持参する場合でも、本文には書きません。
相手の仕事始めや仕事納めの日程を確認してから候補を出します。
件名:年始のご挨拶に伺いたく(〇〇株式会社・田中)
株式会社△△
佐藤様
本年も大変お世話になり、ありがとうございました。
年始に改めてご挨拶へ伺いたく、ご連絡を差し上げました。
一月七日(水)から九日(金)のあいだで、十五分ほど頂戴できませんでしょうか。
ご多用の時期かと存じますので、短時間で失礼いたします。
来年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
相手の反応に応じた返し方
挨拶の依頼は、断られることも珍しくありません。
反応ごとの返し方を用意しておきましょう。
承諾をもらったときの例文
日程が決まったら、確定の連絡を短く返します。
日時と人数、所要時間を復唱して締めると、当日の行き違いを防げます。
訪問先の住所や受付の方法を、この段階で確認します。
長い礼の文章を重ねる必要はありません。
件名:Re: ご挨拶に伺いたく(日程のご確認)
株式会社△△
佐藤様
ご快諾をいただき、ありがとうございます。
十月二十三日(木)十四時に、二名で伺います。
所要は三十分を予定しておりますので、よろしくお願いいたします。
受付でのお呼び出しに必要な部署名をお教えいただけますでしょうか。
当日お目にかかれることを楽しみにしております。
オンラインを提案されたときの例文
訪問ではなく画面越しでと返されることもあります。
提案を素直に受け入れ、準備する内容を伝えると好印象が残ります。
訪問にこだわる理由がある場合でも、一度は相手の形に合わせます。
次の機会に直接伺いたい旨を、結びで短く添えます。
件名:Re: ご挨拶の件(オンラインにて承知いたしました)
株式会社△△
佐藤様
ご連絡をありがとうございます。
オンラインでとのこと、承知いたしました。
当日は弊社の体制と、担当を引き継いだ経緯を簡潔にご説明いたします。
接続のご案内は、前日までに別途お送りいたします。
次の機会には、ぜひ直接お伺いできればと存じます。
断られたときの例文
今は不要と返されたら、追わずに引きます。
時期を変えて連絡してよいかだけを尋ねると、次の接点が残ります。
理由を尋ねるのは、挨拶の依頼では避けます。
返信をもらえたこと自体への礼を書いて締めます。
件名:Re: ご挨拶の件につきまして
株式会社△△
佐藤様
ご多忙のところ、ご返信をいただきありがとうございました。
ご事情は承知いたしました。
落ち着かれた頃に、改めてご連絡を差し上げてもよろしいでしょうか。
その際はまたご検討いただけますと幸いでございます。
引き続きよろしくお願い申し上げます。
返信がないときの例文
挨拶の依頼は、優先度の低さから放置されやすい連絡です。
一度だけ再送し、それ以上は追わないのが関係を保つ分かれ目です。
再送では、候補日を新しいものに差し替えます。
返信がないまま終わっても、次の機会に改めて連絡できます。
件名:Re: ご挨拶に伺いたく(候補日を改めました)
株式会社△△
佐藤様
先日のご連絡が行き違いになっていましたら失礼いたします。
候補日が過ぎてしまいましたので、改めてお送りいたします。
十一月十一日(火)午後、十一月十三日(木)午前はいかがでしょうか。
ご都合が合わないようでしたら、無理のない時期で結構でございます。
よろしくお願いいたします。
手土産を持っていくかの判断
挨拶の訪問で手土産が必要かどうかは、相手の会社の規定によります。
受け取れない規定を持つ会社もあるため、高価なものは避けるのが無難です。
年始や年末の挨拶であれば、部署で分けられる菓子折りが扱いやすい形です。
持参する場合でも、依頼のメールには書かず当日に渡します。
訪問後のお礼を当日中に送る
挨拶の訪問こそ、当日中のお礼で印象が決まります。
話に出た内容を一つ引用し、次に送るものと期日を書くと、関係が続きます。
形式だけの礼状では、せっかくの訪問が記憶に残りません。
同席者がいた場合は、その方の宛名も忘れずに入れます。
挨拶の訪問を成果につなげるために
挨拶で終わらせず、次の一歩を作る視点を持ちましょう。
三つの観点で考えます。
訪問の前に次の口実を決めておく
挨拶だけで帰ると、次の連絡の理由がなくなります。
当日中に何を送るかを決めてから訪問すると、翌日からやり取りが続きます。
資料でも事例でも、相手の話に関係するものを選びます。
その場で約束した期日は必ず守ります。
会う相手の立場を確かめる
挨拶の相手が、決める立場とは限りません。
誰が判断するのかを会話の中で確かめておくと、次の段取りが変わります。
担当者の上に決裁者がいるなら、紹介してもらう流れを作ります。
聞き方は、社内でどのように進むのかを尋ねる形が自然です。
決裁者と直接つながる場を併用する
挨拶の訪問を重ねても、決める人に届かないことがあります。
オンリーストーリーが運営する決裁者マッチングは、審査を通過した企業の決裁者同士が直接つながれる仕組みです。
最初から判断できる相手と会えるため、挨拶の段階を省けます。
一方で、商材の単価が低い場合や担当者レベルで決裁が完結する商材では、効果が出にくい傾向があります。
まとめ
ご挨拶に伺いたいというメールは、挨拶という言葉だけでは用件が伝わりません。
訪問の目的、所要時間、候補日の三つを本文に入れると、相手は予定に入れる判断ができます。
件名には用件と自社名を並べ、冒頭でどこで接点があったかを示してください。
担当者の交代、久しぶりの連絡、上司の同行、年始の挨拶では、それぞれ書き足す内容が変わります。
断られたときは理由を尋ねず、時期を変えて連絡してよいかだけを聞いておきましょう。
そのうえで、挨拶の訪問を重ねても決める人に会えないと感じるなら、接点の作り方に原因があります。
決裁者マッチングのように判断できる相手と直接会える場を併用し、自社の商材に合うか確かめてみてください。
よくある質問
Q. ご挨拶に伺いたいという件名で送ってよいですか
A. 用件と自社名を並べた件名にしてください。
ご挨拶の件だけでは何の連絡か分からず、後回しにされます。
担当者が替わった場合は、その事実を件名に入れると開かれやすくなります。
Q. 所要時間はどのくらいで伝えますか
A. 二十分から三十分と短く提示します。
一時間と書くと、それだけの空きが出るまで判断を保留されがちです。
実際に短く終える準備をしたうえで提示してください。
Q. 上司が同行する場合は何を書きますか
A. 同行者の役職と氏名、同行する理由を本文に書きます。
相手にも同格の方の同席を求めるときは、その理由を添えてください。
二名で伺う旨を明記しておくと、相手は席と資料を用意できます。
Q. 挨拶の依頼を断られたらどうしますか
A. 追わずに引き、時期を変えて連絡してよいかだけを尋ねます。
理由を尋ねるのは、挨拶の依頼では避けてください。
返信をもらえたこと自体への礼を書いて締めると、次の接点が残ります。
挨拶の訪問が決まったら、日程の確定と当日のお礼まで流れがつながります。
この記事の監修者

平野 哲也(ひらの てつや)
株式会社オンリーストーリー 代表取締役
BtoB営業と決裁者マッチングの領域に12年間携わり、決裁者同士をつなぐマッチングサービスを運営。
累計26億円の資金調達を実施し、「ベストベンチャー100」にも選出されている。
「つよいい会社をつくる」を掲げ、経営の中でのしくじりや営業の現場で得た知見を発信中。



