アイディア・パーク
北村由佳
POSTED | 2017.04.05 Wed |
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TAGS | 従業員数:5人以下 業種:製造業 創立:9〜10年 決裁者の年齢:50代 商材:その他 |
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アイディアで、小さな成功体験に力を貸したい
母の想いを詰め込んだアイディア商品が急成長の源にTopics
アイディア・パーク 社長 北村 由佳氏のONLY STORY
出発点は息子への想いから
アイディア・パークでは、ソプラノリコーダー用 演奏補助シール「ふえピタ」を製造・販売しています。
開発のきっかけになったのは、当時小学3年生だった息子が、『リコーダーのテストが嫌だから学校に行きたくない』と言い出したことでした。
息子はあまり手が大きくなく、握力も強くありませんでしたから、みんなの前でうまく演奏できないことが恥ずかしかったようでした。
実は私自身も手が小さく、子どもの頃はリコーダーが苦手でしたので、息子の気持ちはとても良く理解できました。
リコーダーは本人の指でしっかりと穴を塞がなければ良い音を出せません。
でも本人がどれだけ穴を塞ごうと頑張っても、指が届かなければどうしようもないんです。
そこでうまく穴を塞ぐための補助ができるものはないかと考え、最初は足のうおの目に貼る市販のパットを貼り付けてみました。
ところがそれでは薬指と小指部分の二つ穴を塞ぐことができません。
次に木工用ボンドを穴の周りに盛って乾かしてみたところ、良い滑り止めになりしばらくは効果がありました。
でも、これも一度剥がれると2度は付かなくなってしまう。
だったらシールで作ってしまった方が良いかしら。
最初はそんな小さなアイディアだったんです。
製品化するまでにはそれから紆余曲折ありましたが、子どもたちに演奏をもっと楽しんでもらいたいという思いは変わりませんでした。
“自分にもできる!”という自信を取り戻して無限の可能性を発揮して欲しい。
その一助にアイディア・パークがなれたらと思っています。
みんなの心を一つにつないだ「ふえピタ」
ふえピタは、穴の開いた横長い楕円形のシールを、ソプラノリコーダーの笛穴一つ一つに合わせて貼り付けて使います。
シリコン素材で、弾力性と吸着性を持たせていますので指が滑りにくく、薬指や小指でも穴の位置を素早く感じ取って、それほど力を入れなくてもしっかりと穴を塞ぐことができます。
特に一番低音の「ド」の音は、全ての穴を確実に塞がなければならず大変なのですが、音漏れも防げるため簡単に音を出すことができるのです。
初めてメディアに取り上げていただいたのが、テレビ東京の「ワールドビジネスサテライトの」の「トレンドたまご」でした。
取り上げていただけたことも嬉しかったのですが、それ以上にご覧になったお母様たちからの反響は本当に凄かったですね。
どの方もお子さんに演奏を楽しんで欲しくて自分なりに試行錯誤された経験をお持ちで、同じように悩まれている方がこんなにいたんだ!と驚きました。
温かな反響をたくさんいただいた中で、特に印象に残っているのが、発達障害のお子さんをお持ちのお母様からの声です。
お子様はリコーダーの穴をうまく塞ぐことができなかったため、授業中ずっと一つの音しか吹かせてもらえず、リコーダーが大嫌いだったそうなんです。
でも今はすべての音が上手に出せるようになり、みんなと一緒に演奏を楽しめるようになったと喜ばれていました。
『こういう商品を本当に探していました!』とお母様から涙ながらに言って頂いた時は、私も涙が出そうな思いでしたね。
また、全国の学校の先生方からも『クラスみんなで良い曲が吹けるようになりました』と言うような言葉をいただくことも多く、製造して良かったなと心から思います。
元々は主婦の小さなアイディアで、事業化してからもなかなか営業まで手が回らない中、ここまで反響をいただけるようになったのは、実際に使ってくださったお母様たちや、学校の先生方の口コミのおかげです。
私の方が、みなさんにありがとうとお伝えしたいですね。
子どもたちの自信を育むきっかけであり続けたい
私が常に思っているのは、全国の子どもたちにもっと自信を持って欲しいということです。
私たちの時代は、電話をかけるにしても扉を開けるにしても、ボタンを押したりレバーを引いたりという力を入れる動作が当たり前でした。
でも現代の子どもたちは指先一つで何でも簡単に動かすことできてしまいます。
それだけに、できないことをすぐ諦めてしまうメンタルの弱さがあるように感じます。
ふえピタだって、たかだか1枚のシールですが、それを貼ることでできなかったことができるようになるんです。
子どもに一番自信を持たせられるのは、子ども自身が実際に体験することですから、こうした小さな成功体験を積み重ねていくきっかけであり続けられたいですね。
親としての目線を大切にしたアイディア商品を開発し続けて、子どもたちが将来大きな困難にぶつかった時、『あの時だってできたんだから』と思い出してもらえたら嬉しいですね。