GSアライアンス株式会社
森良平
POSTED | 2020.04.24 Fri |
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TAGS | 従業員数:5人以下 業種:IT・情報通信業 創立:11〜14年 決裁者の年齢:その他 商材:BtoB |
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100%天然素材で作る生分解性樹脂とセルロースナノファイバー
石油系材料を使用しないバイオマス系材料、廃木材などのバイオマス系廃棄物、非可食バイオマスから作る樹脂素材Topics
今回は、環境に優しい、エコフレンドリーなプラスチックの開発・製造を行っているGSアライアンス株式会社の森氏にお話を伺いました。始めは親会社のもと立ち上げた新規事業に反発が大きかったという森氏。事業立ち上げの際の苦労や製品開発への意気込みを語っていただきます。
GSアライアンス株式会社 社長 森 良平氏のONLYSTORY
【経歴】
1973年、兵庫県川西市出身。高校時代に米国オレゴン州に留学した後、京都工芸繊維大学に入学。大学院修士課程から京都大学に入学した後、2003年、京都大学大学院卒業 博士(工学)取得。日系メーカー企業の欧州駐在員として勤務した後、祖父の創業した冨士色素株式会社に入社。種々の色材製品の新規事業立ち上げ、海外営業などを手掛け、2010年に主に環境、エネルギー分野向けの最先端材料の研究開発、製造販売を行うGSアライアンス株式会社を社内ベンチャーの形で起業した。
GSアライアンスの主な事業として、石油系材料を使用しない各種の100%天然バイオマス系材料から構成される生分解性樹脂、セルロースナノファイバー関連材料、最先端の二次電池、燃料電池、太陽電池の研究開発、廃棄物からのバイオ燃料、量子ドットや金属有機構造体などの先端ナノテクノロジー材料などがある。
100%天然のバイオマスプラスチック
–GSアライアンス株式会社の事業内容を教えてください。
森氏:弊社はエネルギー分野向けの最先端材料の研究・開発・製造・販売を行う化学会社で、事業は大きく4つあります。
1つ目は石油系材料を使用しない生分解性プラスチック素材の製造です。100%天然のバイオマス系材料から構成されており、分解しやすく、ごみになりにくいプラスチックになります。クライアントの要望に合わせて、樹脂、プラスチック素材自体やお皿、コップ、ペットボトル、フィルムなどの成型品にして提供しています。
2つ目が電気自動車やスマートグリッドなどに活用できる蓄電池や太陽電池、燃料電池などの電池材料の研究・開発。3つ目が非可食性バイオマス系廃棄物から生成するバイオエタノールなどのバイオ燃料の研究。4つ目がさまざまなナノテクノロジー材料の開発です。
これらの事業を通して、環境問題の解決に取り組んでいます。
–ありがとうございます。石油を使用しない100%天然のプラスチックは初めて聞きました。この事業について詳細を伺えますか。
森氏:はい。この事業は、環境問題の中でも近年特に深刻化しているプラスチック汚染、海洋のマイクロプラスチック問題などの対策の1つとして行っています。
一般的に使用されている分解されにくいプラスチックごみとして海に流れることで、例えば海洋生物が死んでしまったり、プラスチックを口にした魚を人が食べることで人体にプラスチックが蓄積されるなどの問題が起きています。
このような問題の解決に役立つこの天然プラスチックの製造技術は、国際連合の専門機関である国際連合工業開発機構にも登録されており、特に成形品は『Nano Sakura』という登録商標で世界に展開しつつあります。
–それはすごいですね。どのような点が評価されて、登録に至ったのでしょうか。
森氏:天然プラスチックならびに『Nano Sakura』の特徴は2つあります。
1つ目はやはり100%天然の材料で作られていることです。生分解性樹脂自体はこれまでもあったのですが、原料に石油が使用されているものがほとんどなんですね。その中で原料も天然にしたものを作った点が評価されています。
2つ目は木を原料にした非可食性バイオマスで製造していることです。これまでもイモやトウモロコシなどを使用した可食性バイオマスは製造されていましたが、人口が増加する中、食べ物をプラスチックにしてしまうと食糧問題という別の問題を引き起こす可能性もあります。その点、廃木材や竹を使用していることを評価していただきました。
自ら手を動かし、実際にものを作って説得
–起業の際に大変だったことはありますか。
森氏:弊社は冨士色素株式会社の社内ベンチャーを事業化し、起業してできた会社なんです。ただ業界としても新しいことで社員の理解を得ることが難しく、実際に抗議の声や反対意見も多く、特に創業当初は大変でしたね。
と言うのも、薬品や化学素材の開発は時間とお金がかかり、商品化して軌道に乗るまでに40年くらいかかることもあるんです。そのあたりの理解を得られるまで時間がかかりました。
–どのようなことをして乗り越えられたのでしょうか。
森氏:社員は親会社である富士色素株式会社から異動してきているので、「色材の中にも環境にいいものがあるんだ」というように、彼らの専門領域から事業の説明をしていくことで、理解をしてもらえるケースが増えたと感じています。
加えて、社長である私が自ら新しいことにチャレンジし、実際に製品として作り、目の前で説明していく。根気強く「これは世の中に求められているものだ」と伝えていくことで、少しずつ社員の賛同を得ていきました。ただ、まだ社員全員の十分な理解を得られたとは思っていないので、努力は続けていきたいと思いますね。
環境問題に最先端技術で立ち向かう
–今後の短期的・長期的な事業展開の目標を教えてください。
森氏:短期的には、バイオマスプラスチック事業を軌道にのせていきたいですね。GSアライアンスの事業はどれも今の社会情勢に合っていて、作っているものは社会に必要な製品だと思うので、事業をどんどん大きくしていきたいと思います。
また既存事業だけでなく、今後はコロナの影響でニーズが高まることが予想される消毒用バイオエタノールや抗菌剤、抗菌プラスチック、抗菌色材の開発にも力を入れていきたいです。私たちの作っているものが地球のダメージ軽減に少しでも繋がればと思っています。
長期的には、国内だけでなく、インドや東南アジア、中東などの成長国や欧米を中心に国外へも進出していき、ゆくゆくは上場したいと考えています。そのためにも、目の前の課題からコツコツ取り組んでいきたいと思います。
–ありがとうございます。最後に、読者の方へメッセージをお願いします。
森氏:弊社は、現在強く問題視されている地球温暖化を含めた環境、エネルギー分野に特化した最先端材料を開発しており、その技術は国内外の大手化学企業にも引けを取らないものだと自負しています。
しかしながら知名度が低いので、国内外の宣伝に注力し、知名度を上げていきたいと考えています。協力していただける経営者の方はぜひご連絡ください。
執筆=スケルトンワークス
校正=笠原