株式会社三城ホールディングス
澤田 将広
POSTED | 2019.04.18 Thu |
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TAGS | 従業員数:31〜50人 業種:その他 創立:15年以上 決裁者の年齢:その他 商材:その他 |
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創業88年「パリミキ」が変革を賭ける異業種コラボ
私たちが提供しているのは、メガネだけではない。Topics
渋谷のスクランブル交差点を抜け、井の頭通りを進んでいくと、赤を基調としたポップな外観が印象的なお店が目に入る。アパレルかと思わせるこのお店は、実は眼鏡店。「メガネのパリミキ」はこの渋谷店のように、従来のメガネ店のイメージを覆す個性的な業態の店を打ち出し、積極的に他業種とのコラボを進めているという。
なぜパリミキは、コラボ企画を打ち始めるようになったのでしょうか。その先に、何を見据えているのでしょう。株式会社三城ホールディングス 代表取締役社長の澤田将広氏に話を伺いました。
多様なコラボ企画の数々に、ぜひご注目ください。
今回ご紹介するコラボ事例はこちら
「エスモード」
パリミキ×モード系専門学校
「アトラクションズ」
パリミキ×バイクウェアのブランド
「FESN laboratory」
パリミキ×スケートボードショップ
「DIESEL」
パリミキ×イタリアのファッションブランド
「OrCam My Eye2」
パリミキ×世界30カ国の視覚障がい者が愛用する AI 小型カメラ
「大土井裕二様」
パリミキ×元チェッカーズのベーシスト
「WHILL ModelC」
パリミキ×次世代型電動車椅子 パーソナルモビリティ
問うべきものは、ジャンルではなく“こだわり”
–これまで数多くの企業と積極的にコラボしていらっしゃいますが、コラボ企画の始まりはどのようなものだったのでしょうか?
澤田氏:この渋谷店で一番最初のコラボ企画は、エスモードというモード系の専門学校とのファッションショーです。渋谷店の店内にランウェイを作り、そこで学生さん達の卒業制作の発表を行いました。
–店内にランウェイを作るとは、斬新な発想ですね。
澤田氏:もともと渋谷店は長くお付き合いいただいているお客様が多い一般的なメガネ屋でしたが、渋谷という場所柄、お店の前を通りかかる方は20代~30代の若い方が多くなってきたんですよ。そんな街のお客様の層に合ったイベントをしたいという発想で企画しました。
–そのような顧客に合わせて、他にも様々な取り組みを行ってこられたと伺いました。
澤田氏:例えばアトラクションズというバイクウェアのブランドとコラボして、バイクファッションをショーウィンドウに飾っていたこともありました。
一見すると、バイクとメガネは何ら親和性がないように思えますが、実はそんなこともなく。「バイクに乗るときのサングラスが欲しいと思っていたけど、買うキッカケがなかった」という方に、パリミキでサングラスを手に取っていただく機会につながっているんです。
–異色に見えるものを掛け合わせているのですね。とはいえ、コラボ先を決める時の判断軸というものがあると思うのですが、どのような点を見ていらっしゃるのですか?
澤田氏:例えば過去にスケートボードのショップとコラボしたこともあるのですが、その時決め手となったのはショップ経営者の森田さんの“こだわり”。
彼は、身長、体重や、一人ひとりのライディングスタイルに合わせたカスタム商品を手がけていました。それが、パリミキが 88 年間徹底してきた「お客様お一人おひとりにお合わせする」という考えととても親和性が高いと感じ、コラボすることを決めました。
–大事なのは、「商品のジャンル」ではなく、「商品に対する考え」なのですね。
澤田氏:最近では、サイズ、鼻パッド、カラーリングのすべてにおいて、日本のユーザーが使いやすいように設計された「DIESEL」 の日本企画モデルが、当社で世界先行発売となりました。
それだけでなく、30ヶ国の視覚障がい者が愛用する AI 小型カメラ「日本語版 OrCam My Eye2(オーカムマイアイツー)」の販売も始まっています。こちらはメガネフレームへ簡単に装着でき、ネットや雑誌などに書かれている文字を指でなぞれば、カメラが解析しテキスト情報を音声で知らせてくれる優れものです。
どちらも万人に向けてつくられたものではなく、特定の誰かのお悩みを解決するためにこだわり抜いて作られたもの。そんな商品の販売やその商品とのコラボ企画を続けていくことで、すべてのお客様を笑顔にすることを実現していきたいと思っています。
多様な発想の源泉は、本場のエンターテインメント体験
–コラボ企画をはじめたきっかけを教えてください。
澤田氏:実店舗のあり方を進化させたい。そう考えたことがきっかけでした。
というのも、当社に限らず、アパレルなど小売業はどこも苦労していると聞きます。Eコマースやネットビジネスが非常に伸びている時代ですから、ただそこに商品が置いてあるだけのお店ではお客さんには満足していただけません。
そんな状況を打開したいと思い、取り組み始めたのがコラボ企画でした。
–冒頭でいくつかコラボ事例を伺いましたが、こだわりの詰まったアウトプットの形が印象的でした。何か発想を得ている体験はあるのですか?
澤田氏:私がオーストラリア法人の社長を務めていたときに、メルボルンに住んでいた影響が大きいと思います。
メルボルンの住んでいた場所の近くにホットドッグやハンバーガー、クリームソーダを売っているアメリカンダイナーのようなレストランがありました。気になってお店に入るといきなり音楽がかかり、今までコーヒーを運んでいたウェイターのお兄さんとお姉さんがミュージカルを始めたんですよ。
–予想外の展開。それは衝撃を受けますね。
澤田氏:しかもそのクオリティがものすごく高い。これこそが、お客様を喜ばせるエンターテインメントだと思いました。
日本でも飲食店は小売よりも新しいことを取り入れるのが早いと思います。以前ピザ屋に行ったら、急に照明が暗転、スポットがつくと同時にピザを運んでいた男性がカンツォーネを歌い出したことがありました。歌が終わった後、お客さんはみんなスタンディングオベーションです。
–どちらも、従来の「飲食店」という枠組みにとらわれないお店のあり方ですね。
澤田氏:店舗はただそこにあればよいのではない。来た人を楽しませ、また来たいと思っていただくことが大切です。メルボルンで体感したようなエンターテインメントの場を我々も提供していきたいと考えています。
メガネに関心がなかった人までも巻き込まれる店舗作り
–改めて、そのメルボルンでの強烈な体験をもとにした企画や戦略はどのようなものがありますか?
澤田氏:ここ渋谷店は、「50年代のアメリカングラフィティ」をコンセプトに設計しています。打って変わって、木造のログハウス風で天井が高い『ロッジ』という業態の郊外店舗もあります。こちらは広い駐車場スペースを活かしてフードワゴンを呼んで楽しめますし、カフェを併設しているので店内でコーヒーも楽しめます。
–店舗によって、コンセプトも特徴も全く違うのですね。
澤田氏:大阪のアメリカ村店や広島本通店などは、2階がライブハウスになっています。週末になると10組くらいのバンドがブッキングされていて、3か月先まで出演バンドが決まっているほど人気です。
「50‘s のアメリカンダイナー x 50’s/60’s のロックンロール」がコンセプトのアメリカ村店では、元チェッカーズのベーシスト・大土井裕二さんのデビュー35 周年メモリアルライヴも当店で実施したんですよ。その様子をYouTubeで生配信したところ、店舗はもちろん、ネット上でもすごい盛り上がりでしたね。
【生配信】大土井でショー!in 大阪アメリカ村店
–メガネ店であることを忘れてしまうほどの盛り上がりですね。
澤田氏:こうしたコラボ企画を進める中で、普段店舗にご来店いただいてないお客様にご来店いただける価値を感じています。
コラボ企画以外にも渋谷店では月に2回ほどDJイベントを開催しているのですが「有名なDJを一目みたい」と当店にはじめてご来店される方もいます。こうしたイベントがキッカケとなり、それまでメガネに関心のなかった方が店舗に来られ、パリミキに興味をもっていただくという流れは実に面白いですね。
–このコラボ企画が新たなお客様との出会いの場になっている、と。
澤田氏:そうです。そしてそれは我々だけでなく、コラボ先にも起こっていることです。
先ほどお話したバイクウェアのアトラクションズさんの場合、商品のパンフレットがパリミキの渋谷店に置いてあります。そのため、パリミキの渋谷店でアトラクションズを知ったお客さんが原宿にあるアトラクションズのお店に行くという導線もうまれました。
渋谷などの人通りが多い店舗で宣伝でき、新しいお客さんとの出会いにつながること。それがコラボする企業にとってもプラスになると思っています。
リアクションが予想できないほど“意外なコラボ”を
–最後に、今後も多様に展開されていくコラボ事業に込めた想いと今後の展望についてお伺いします。
澤田氏:まず、「メガネ」そのものについてお話してもいいですか?私はファッションアイテムとしてのメガネをもっと定着させていきたいです。
メガネは顔の一番目立つ部分にあるので、実は洋服を変える以上に印象を左右するアイテム。材質や形の違うメガネをかけると印象がかなり変わるので、イメージチェンジしたいときにとても効果的です。こうしたメガネの魅力をコラボ企画を通して多くの方に知っていただきたいのです。
–そのメガネへの想いとこだわりの強さが、多様なコラボ企画と挑戦する姿勢の源だったのですね。今後どのようなコラボを企画していかれるのかすごく楽しみですが、具体的にはどのような企画を打ち出していこうとお考えなのでしょうか。
澤田氏:「パリミキのお店に行くと、いつも面白くて新しいことをやっている」。お客さんにそう思っていただけるような企画を打ち出していきたいです。
そのためにはあえて制約を設けず、どんな企画にしていくかはコラボ先にお任せするスタンスでいたいと思っています。これまでもディスプレイのデザインなどについて「これでいいですか?」と確認されることはあっても、修正をお願いすることはほとんどありませんでした。とにかく突き抜けて個性を出していただいた方がいいと思っているからです。
「お客さんはどんな反応をするだろう?」と思うような意外性のあるコラボだからこそ、面白い化学反応が起きると思っています。「パリミキとならこんな企画ができる」そう考え抜かれたものを、どんどん実行していきたいと思います。
–見る人のリアクションが予想ができないほどの意外性を心から求め、楽しんでいらっしゃるご様子ですね。最後に、今後の意気込みを教えてください。
澤田氏:日本は高度成長が終わって停滞期に入っているので、これから生き残っていく企業はイノベーティブである必要があります。つまり、レッドオーシャンでしのぎを削るのではなく、新たなマーケットを作っていくことが重要です。
同じ成功パターンを繰り返すだけでは停滞してしまう。そう思って、これまでも新しい業態の店舗開発やコラボ事業を積極的に行ってきました。今後も、多様な業界の企業とコラボしていくことで、常に進化し続ける企業でありたいと考えています。
ジャンルは問いません、大事なのはこだわりです。新たなお店の在り方を、一緒に追求していくことができる方との出会いを楽しみにしています。
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コラボ企画に関するお問い合わせ先はこちら
編集後記
取材前、「メガネのパリミキ」という聞きなれたフレーズから連想していたのは、高級感漂う老舗眼鏡店。今回、コラボ企画の内容やその裏側を知ることで、見事にそのイメージが打ち砕かれる取材となりました。
斬新な店舗や、素敵な企画がありすぎて、残念ながら記事の中ですべてをご紹介することができなかったのですが、最後に一つだけ、特に私が感銘を受けた取り組みをご紹介させていただきます。
それは、「次世代型電動車椅子・パーソナルモビリティ WHILL ModelC」です。そのデザイン性と走行性能の高さから、グッドデザイン賞など国内外の主要なデザイン賞を多く受賞している電動車椅子。これをパリミキの店舗で試乗でき、1か月間レンタルしてじっくり試すことも可能です。
なぜ眼鏡店が、車椅子を貸し出すのか。それは、このWHILLをただの”車椅子”として捉えていないから。眼鏡を掛けることで、そこから見える景色を楽しめるように、WHILL に乗ることで新しい景色を見ることができ、もっとその方らしく社会に参加できるようなお手伝いをしたい。そんな想いが、この取り組みの原点となっています。
数々のコラボ企画について知る中で、パリミキ様は、目の前のお客様一人ひとりを幸せにするために何ができるかを、本気で考え抜いているのだと実感しました。
そんな想いに共感される方は、ぜひコラボ企画のご相談を!きっと大きな懐と豊かなご経験で、多様なご提案を受け止めてくださるはずです。
取材・執筆=池野
編集=高越
企画・校正=山崎